第25話 これは…ヤレるパターンなのか…?

 中村優斗なかむら/ゆうとは今、彼女の家に来ている。


「優斗は、部屋に入っていてもいいからね」

「わかった」


 優斗は、結城芽瑠ゆうき/めると共に部屋の前で向き合うように佇んでいた。


 久しぶりの彼女の家。


 気分が高ぶってくる。


 やはり、嬉しい。

 こうして芽瑠と一緒の時間を過ごせるのは。


「そうだ、お菓子とかあるけど、何かがいいかな?」

「なんでもいいよ」

「だったら、昨日お母さんが買ってきたモノを持ってくるね。後、飲み物はどうする?」

「お茶でいいかな」

「本当に? 遠慮しなくてもいいからね」

「でも、お茶でいいよ」

「じゃあ、それにするね」


 やり取りが終わると、芽瑠は階段を下がっていく。


 優斗は二階廊下で一人になった。


 視界の前には、彼女の部屋の扉。


 一先ず入っておこうと思い、同い年の彼女の部屋へと入ろうとする。


 この前同様に、彼女の室内は綺麗なままを維持していた。


 それに部屋の空気も心地よい。

 心が清らかになるようだ。


 今日は家で一緒に何をしようか……。


 最初の思いつくのは、アレしかなかった。


 でも、それには早いというか。

 まだ、そんな空気感でもない。

 今のところは、冷静になるところから始めた方がいいだろう。


 優斗は混みあがってくる思いを宥めるように、一旦深呼吸をする。


 というか、買ってきたお菓子って、どんなモノなのだろうか?

 スーパーとかで購入したモノかな?


 でも、芽瑠の話し方的に、高級感あふれるお菓子のような気がした。


 芽瑠は、普段からどんなお菓子を好んで食べているのだろうか?


 気になるところだ。


 そうこう脳内で思考していると、意外にも早くに足音が聞こえてくる。


 彼女がお菓子と飲み物を持って戻ってきたのだろう。


 優斗は部屋から顔を出す。




「お待たせ」


 そこには彼女の姿があったのだ。


 優斗は扉を開け、彼女を室内に通すのだった。




「こういうお菓子なんだけど。口にあいそうかな?」


 芽瑠が持ってきたのは、黒っぽいものだ。

 焦げたとか、そういうものではない。

 見た感じ堅そうなお菓子に思える。


 黒色から連想できるものとして、羊羹とか、チョコとか。

 他にも探れば、多々あるだろう。


「これは海外のお菓子で、チョコっぽい味がするんだけどね」

「じゃあ、チョコってこと?」

「でも、少し違うみたい」


 え、どういうこと?


 優斗は首を傾げる。


「でも、普通に美味しいと思うから。優斗の口に合えばいいけど」

「芽瑠は食べたことがあるの?」

「私はないよ。今が初めて」

「そうなの? なんか、海外のお菓子って、高級そうだけど、俺が食べてもいい奴なのか?」

「うん。お母さんが一人で食べてって。でも、私一人で食べるのもよくないかなって思って、だから、一緒に食べよ」


 芽瑠は近くのテーブルにお菓子類が載せられたトレーを置いていた。

 その後、テーブルにコップを置き、彼女はその場に座る。


 優斗も彼女の隣に座った。


 それにしても芽瑠の隣にいると、彼女のおっぱいの凄さを直に感じる。


「どうしたの?」

「いや、なんでもないよ……」


 優斗は視線を不自然にも背ける。

 芽瑠に抱いていた、感情が爆発寸前だった。




「あとね、これお茶だから」


 芽瑠は大きなペットボトルのまま持ってきていた。


「お茶は結構余ってるの。お茶が好きなら、たくさん飲んでもいいからね」

「ありがと」


 そこまでサービスしなくてもいいのにと思う。


「私が接いであげるね」


 優斗が手にしたコップに、直接お茶を入れてくれる。

 最後に、彼女も自身のコップに注いでいた。


 ようやくお菓子を食べる準備が整った。


「私が食べさせてあげる? その方がいいよね?」


 芽瑠は距離感を詰めてくると、上目遣いでかつ、可愛らしく首を傾げてきた。


「いや、いいよ。自分で食べられるし……」


 やはり、爆乳が近くにあると、その存在感に圧倒され、緊張が加速しているのだろう。


 基本的に毎日学校で出会っているはずなのに、心臓の高ぶりが収まることはなかった。


「どうしたの?」

「なんでもないから、本当に」


 ひたすら芽瑠のおっぱい右腕に感じていた。


「食べさせてあげたいんだけど。この頃恋人らしいこともしていないし、やった方がいいかなって」


 ドキッとした。

 些細な仕草だけでも、優斗の緊張感が高まってくる。


「だから、恋人らしく私が食べさせたいなって」

「いいの?」

「いいって。私がさっきからそう言ってるのに……」


 芽瑠は頬を紅潮させ、恥じらいを持って耳元で囁いできた。


 じゃあ、ここはお言葉に甘えて。

 そう思い、優斗は承諾する。


「じゃあ、あーんして」


 芽瑠はフォークでチョコを刺し、優斗の口へと運んでくる。


 優斗は流されるままに、それを口にすることになった。


 普通に美味しい。


 でも、口内で少し濃い味が付きまとうようだ。


 これは一体なんだろうか?


 もしやという思いが、脳裏をよぎる。


 これは……お酒入りのチョコなのではと思う。


 優斗はそこまでお酒の味を知らない。

 でも、何となく、そんな気がした。


「ねえ、美味しい?」


 優斗は頷いた。

 そして、彼女の顔を見る。


 その時、気づいたことがあった。

 それは、芽瑠の頬が先ほどよりも赤くなっていることに。


 その頬の赤身は、恥ずかしがっているとか、そういう感じではない。


「私も食べよっかな」


 芽瑠は迷うことなく、優斗が口をつけたフォークでチョコを突き刺す。


 優斗が指摘する前に、彼女はそれを自身の口へ運んでいた。

 そして、咀嚼する。


「これ、美味しいね♡」


 優斗はなんて返答すればいいのかわからず、口ごもる。


 そういう顔を見せられると逆に気まずいんだけど……。




「それ、大丈夫だった?」

「普通だよ?」

「そうか。だったらいいけど。けどさ、普通のチョコと少し違うくなかった?」

「何が?」


 芽瑠は疑問形で首を傾げていた。


 どうしたのと言わんばかりの、とぼけた感じの反応。


 それにしても、彼女の体が熱くなっているような気がする。


「なんでもないなら問題ないんだけどさ」

「でも、なんか、少し暑くなったかな?」

「え? どこが?」

「なんか、少し暑いっていうか。優斗は暑くない?」

「今日はそこまでじゃないような気がするけど」


 優斗は彼女の様子を伺う。

 でも、色々と遅かったのだ。

 彼女はいきなり制服を脱ぎ始めた。


 芽瑠の下着が丸見えだ。

 その上、かなりでかい。

 爆乳だとは思っていたのだが、やはり、その大きさは目では測りきれないものだった。


 どれくらいの大きさがあるんだ?


「どうしたの? 暑くないの? 暑いなら窓でも開ける?」

「俺は大丈夫だから……でも、そういうのは俺がいないところでさ」


 芽瑠は一体、どうしちゃったんだ?


 もしや、やはり、あのチョコはお酒入りなのではと思う。


 それが原因で、変な言動に至っているのかもしれない。


 優斗は咄嗟に、チョコが入っていた箱を確認する。


 やっぱりだ。


 箱を確認して判明したのだが、やはり、このチョコはお酒入りだった。


 だから、彼女はエロい恰好をし始めたのだと納得がいったのだ。


「あれ? これって、何?」


 優斗が気づいた頃には彼女の姿はなく、別の場所へと移動していたのだ。


芽瑠はアレを手にしていた。


 以前、優斗が購入した大きなブラジャーである。


 彼女は寄った勢いで、タンスから、それを取り出したらしい。


 なんて、運が悪いなんだ。


 優斗は頭を抱えてしまう。


「ねえ、これって、私のじゃないんだけど」


 大きなブラジャーを手にしている彼女の疑いの眼差しは、優斗へと向けられている。


「なにか、知ってるんじゃないの?」


 芽瑠は下着姿のまま、優斗の元へと近づいてきた。

 彼女は誘惑するかのように、谷間が見えるほどの下着姿のまま、その豊満な胸を、優斗の体に押し付けてきたのだ。


「もしかして、こういう事をしたかったの?」


 これは……いつもの彼女じゃない。


 でも、不思議と嫌な気分にはならなかった。


 もしや、この流れではあれば、できるんじゃないかと。優斗の中で、悪い感情が爆発し始めるのだった。

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