出逢い
リビングに辿り着いた私はゆっくりとリビングへのドアを開いた。
いつものようにリビングに入ったけど、お母さんは居ない。私は1つの異変に気づいた。リビングのテーブルに見知らぬ制服姿の子が座っていた。歳は同じくらいだけど、制服は男物で髪型はボブだし肌も綺麗だから男の子なのか女の子なのか分からない。ただ1つ言えるのは私よりもずっと可愛い。マイナー雑誌の表紙を飾っていそうなくらいに可愛いの。制服姿の子は私がずっと凝視してたからか困惑してる。首を傾げている姿はまさにはてなマークを体現してるみたい。もちろん、私から声を掛けられるはずもなく、数分間沈黙の時間が流れた。
気まずい空気の中、車のエンジン音が近づいてきた。多分お母さんのものだろう。お母さんのものであって欲しい。気まずい空間から早く逃げ出したい。願望通り車は、家の前でスピードを緩め駐車スペースへと入ってきた。お母さんが家に入って来る前に私は制服姿の子の事を聞きに行くために玄関へと走った。私が玄関に着く頃には、お母さんは靴を脱いでいた。
「ねえ、お母さん家の中に制服姿のすごく可愛い子居るけど、知り合い?」
私は制服姿の子に聞かれないようにお母さんの耳元ですごく小さい声で聞いた。
「氷雨ちゃん分からなかったの?ほらいつも課題届けてくれる姫原さんだよ。声で分かったでしょ?」
あの可愛い子が姫原さんなんだ。声で分かったか聞かれたけど、一言も喋ることが出来なかったなんて言えない...
「あーもしかして氷雨ちゃん喋れなかったでしょ。」
「ほら、目を逸らしたー。一緒に挨拶しに行こうか」
「うん・・・」
お母さんに図星を突かれて声にならない悲鳴が体の中で走った気がする。1人では挨拶出来なかったけど、きっとお母さんがついていれば挨拶できる筈。私はお母さんの背後に隠れるようにリビングへと向かった。
「姫原さん。今帰りました。」
「話の続きをしましょうか。」
お母さんはまるで私の存在を忘れたように話始めた。私の身長170あるんだけどね・・・・
「あのー氷雨さんのお母さん、氷雨さんが後ろで助けてって顔でこっちを凝視しているんですけど・・・」
「あら、そういえば氷雨ちゃん居たんだった。許してね」
姫原さん気づいてくれて本当にありがとう。
お母さん。そんな可愛い仕草してもカバーできないよ。これだから天然は・・・
「氷雨ちゃん挨拶するんでしょ。」
「え・・・いや、その・・」
お母さん急すぎだよ。少しは場の空気を整えてくれないと話せないよ。私の性格を知って嫌がらせでもしてるように感じるんだけど。絶対にないとは思うけど。お母さんは思いついた事をすぐ言ってしまうとこがあるから・・・
「あ・・あの姫原さん。いつも課題持ってきてくれて、そのありがとうございます。」
「うん。どういたしまして。」
久しぶりに家族以外と話すから心臓が張り裂けそうなくらい緊張したけど、ちゃんと話せてよかった。私の中では一歩前進できた気がする。これからは姫原さんともっと話せるようになったら良いな。
「今からご飯作るけど、姫原さん食べてく?」
「すみません。今日は用事があるのでお言葉だけ貰っておきますね。」
姫原さんはお母さんの悪い癖に戸惑いながらも丁寧に断った。
「じゃあ氷雨ちゃん。姫原さんのこと玄関まで送ってもらえる?」
「うん。任せて」
私はお母さんの言う通り姫原さんと玄関まで向かう。私は玄関までの間、少しでも話そうと考えていたけど緊張で言葉が出なかった。
「氷雨さん。また明日、課題持ってくるね。」
姫原さんは走りながら言葉をこぼして行った。私は感謝の気持ちを胸の中で叫んだ。今日は家族以外の人と少しだけど話せたからよかった。明日も話せたらいいな。
33個ある君の好きなとこ 斎藤 菊丸 @korou01
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