第40話 春の名残り2
でもね、毎日毎日球拾いやキャッチボール、バットの素振りなんかしているうちに、段々野球が面白くなってきてね。
小学4年生の夏ごろには、なんとレギュラーになれたんだよ。嬉しかったな。
毎日毎日、かかさずに練習はしたんだ。自分には才能なんかなかったからね。それに努力することはそんなに嫌いじゃなかった。
朝は早く起きてランニングをして、その後は近くの公園のコンクリートの壁を相手に投げる取るの練習。
学校から帰ると、野球クラブで毎日泥どらけ。夕方に家に帰ってから、お風呂に入って夜のご飯を食べたら、夜もまた素振りの練習をしたんだ。
1日何時間、野球の練習したかな。でもね、そのお陰で野球の方は、目に見えて上手くなっていった。
小学5年生になった頃には、なんとエースで4番、しかもキャプテンまでやっていたよ。もちろん上級生はいたのにね。
身体も小学5年生の夏くらいから、身長がどんどん伸び出して、中学校に入る頃にはもう一番後ろの方だった。
お勉強の方は中学1年位までは、まったくのおバカ学生だったな。相変わらず毎日、ただひたすら野球をしてたからね。
中学2年生のときに学校で3者面談があって、その夜、久しぶりに親父に叱られたよ。
親父は、普段はあまり怒ったり叱ったりしない人だった。頭は良いし、性格も良い。仕事でも優秀だったらしい。俺とは違ってね。
とにかく俺は、親父は尊敬していたよ。とても家族想いだったし、優しかった。
「蒼介、お前は勉強は嫌いかい?」
「別に嫌いな訳じゃないけど・・・・・」
「そうか、じゃあどうだろう。野球でがんばったみたいに勉強も、少しがんばってみないか。もともとお前は頭も良いんだ。勉強すれば必ず結果は出てくるよ」
尊敬してる親父にそう言われると、俺もなんか少しやる気が出てきたんだ。野球の方は、もうそんなに練習しなくてもイケるレベルだったからね。
1ヶ月、2ヶ月となんとかがんばって勉強してみると、こっちの方も何となく楽しくなってきちゃったんだ。
テストの成績も今まではせいぜい50点どまりだったものが、70点、80点と少しずつ着実に上がり始め、そのうち100点をとることができたんだよ。
今思うと笑っちゃうけど、初めて100点とったのは数学だったけど、家に帰ってから恥ずかしくて母さんに言えなくて・・・・・
結局、翌日の夜ご飯のときに話したんだ。
「母さん、あのさ、テストで100点取るとスゴいことなのかな?」
口の中いっぱいに、大好物の唐揚げをほうばりながらさりげなく母さんに聞いた。
満開の桜の木の下で 希藤俊 @kitoh910
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