観察者曰く



たぶん、ダメだと思うよ。

彼の脳は耐えられない気がする。

というか大抵の人には受け入れられない話でしょう。

なんで、って・・・やっぱりこんなゲームを考える人間の思考回路はよくわからないね。

いいかい、言ってしまえば記憶っていうのはその人の人生そのものだ。

今まで生きてきた知見の積み重ねが人格を織り成してその人たらしめる。

でも、それがある日突然奪われたらどうなる?

それはもうその人ではないだろう?

別の人間だ。

それに気付いたときの彼の気持ちを想像するだけでも末恐ろしいや。

幸いにも、すんでのところでそこまで辿り着かなかったみたいだけど。

それで?

あとどれくらい残ってるの?

・・・ふーん、まだ半分以上いるんだ。

まだろっこしいね、もっと一気に間引けないもんかな?

ん?ああ、わかってるよ。

こっちから仕掛けるのは最小限にしないとね。

あくまで参加型ゲームなんだから。

もう少し過激なプレーヤーが増えてくれたら助かるんだけど。

ただねえ、自滅する人も多いからねえ。

ほんと、敏感な人間って損だよね。

精神を蝕むだけで何もいいことないよ。

・・・あんまりそう睨まないでよ、一般論で言っただけさ。

いつもの清々しいほど笑顔らしい笑顔に戻ってくれ。

で、ぼくは変わらず観察してるだけでいいのかな?

構わないよ。

最初の頃と違って今はけっこう動きがあるしね。


・・・ああ、そうだね。

彼も思ったより楽観的なんだね。

なんだかこっちが心配になってしまうよ。


君が欲しいのは、まさにそんな人材なんだろうけどさ。



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