鯨と「キラー!!」 🐋

上月くるを

鯨と「キラー!!」 🐋





 ひととおりのカクヨム作業を終えると、テレビを観ながら筋トレ&ヨガを行う。

 その時間がちょうど朝ドラにかかるので、一石二鳥と言えなくないかも。(笑)


 病院の順番取りで冷えきった身体は、いまだにガチガチで、毎晩の眠りも浅い。

 目覚めるたびに肩や背中の痛みを覚え、考えても仕方のないことばかり考える。


 らちがあかないので、週末、無制限でダウンドッグのポーズを行うことにした。

 平日とちがい朝ドラがないので、いくらでもフロアを眺めていられそうだから。




       🐕




 太陽礼拝とならんでヨガの王道と呼ばれるダウンドッグのポーズは、文字どおり、お昼寝から覚めた犬が伸びをするときのように、思いきり、お腹を床に近づける。


 結果的に背中が伸び肩の凝りも解れ全身の血流がよくなるので冷え性に効果大で、ついでにインナーマッスルまできたえられ、それこそ一石何鳥ものスグレポーズだ。


 ただ、四つん這いになって四肢を伸ばしきるので、スタート時点は相当にきつい。なので、平日はジムで学んだパワーヨガの一環として取り入れるだけに留めている。


 今朝こそガチガチの身体を治すよと覚悟を決めて始めると、すぐに馴染んで来た。

 昔取った云々とやらで、心身がコツさえ思い出せば、何分でも継続していられる。


 実際、熟達のインストラクターは息もみださず、延々と寝覚めの犬になりきれる。

 しなやかな細マッチョ(いわれるところのヨガ体型)はこうして形成されるのだ。


 

 

      📺




 つらつら考えながら、少しずつ、だが確実にゆるゆる伸びてゆく背中の筋肉を心地よく意識していると、とつぜんテレビから「killer!!」鋭い女性の叱声がとんで来た。


 昼寝ざめ犬のポーズのまま顔だけあげて画面を観ると、外国人らしき太った女性に「殺人者!!」一本指を突きつけられた漁師さんが、強張った顔でかたまっている。💦


 古い伝統捕鯨の港町で、自然保護を叫ぶ日本内外の活動家が四六時中「生き物を海へ返せ」の幟を翻らせており、イルカショーの水族館も糾弾の例外ではないらしい。

 

 子どもたちが幼かったころ、夏空に高々とジャンプするイルカのパフォーマンスに拍手喝采を贈った情景を懐かしく思い出しながら、ふたたび昼寝ざめの犬に徹する。




      🐬




 だけど、なんだろう、このざわつく違和感、自分、大の動物好きなんだけど……。

 だって、言うてはなんやけど、正義を叫ぶみなさん、栄養たっぷり過ぎやしない?


 動物にせよ植物にせよ、だれかの命をいただかなければ一日も生きていかれない。

 宮沢賢治さんだって、そういうキラーのひとりである自身の矛盾に生涯苦悩した。


 なのに、海外の漂流船を助けた日本の半島の歴史も知らず(たぶんだけど(^^;)、ぬめぬめした脂が光る唇で「金をくれてやるから漁業をやめろ !! 」そりゃないよ。


 金子みすゞさんの『鯨法会』の、父母恋しと泣く子どもの鯨や、祭りの浜をよそに「海中では何万のいわしのとむらい」(『大漁』)は、たしかに堪らないけれど……。


 紀州の港町の住人だけに生きとし生けるものの苦悩を押しつけて、それでいいの?

 なにがほんとでなにがうそ(みすゞさん)なのか簡単に答えは見つからないよね。




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