おまけ パーシル (終)
依頼の報告を終えたパーシルは、少し遅くなったこともあり、火の車亭でヴェインと食事を取ることにした。
今日の夕食はジャガイモのポタージュにベーコンを添えたものと、軟らかいパンだ。
パーシルはスープンを使い、スープをすすった。
ヴェインも同様にスプーンでスープをすくい、なぜか音をたてないようにスープを飲んでいた。
ずいぶん飲みずらそうなやり方だとパーシルは思ったが、別に悪いことをしているわけでもないので指摘するわけでもなく、どちらかというと気になっていたジュピテルとのやり取りを聞いてみることにした。
「そう言えば、今朝ジュピテルがきていたけど、何を話したんだ?」
「ムーンレイルで仕事をしないかって、あとカッシェルさんがらみの近況とかいろいろ」
「そうか。……行くのか?」
「まさか、あそこはまだアイフィリア教団が結構うろうろしているらしいし、さすがにない」
カラカラと笑うヴェインにパーシルは少しほっとした。
お互いに今日やったことを話し、食事もほぼ食べ終わったので、二人は家に帰ることにした。
店を出る途中、パーシルは床に落ちた小さな紫色の花を見つけた。
小さな花が幾重にも咲くそれはパーシルの苦い記憶を呼び起こした。
『結婚しよう』
『決闘ではなくて?』
妻のマリーシャにプロポーズした時の記憶だ。
その時パーシルはこの花を選び、マリーシャに笑われたのだ。
「この花は……ハナダイコンか?」
「知っているの?」
「ああ、確か意味があって、競争とか対決とかそういう時に送る花だ」
「師匠……あんたって人は……」
「どうりでクリスがシアに蹴り飛ばされてたわけか」
パーシルはヴェインと二人で、クリスの幸せを願った。
パーシルもまた、彼がシアを好きだと知っている人の一人だった。
――そういえば花瓶があったけか。
その花をパーシルは拾い上げ、うちに飾ることにした。
もしかすると俺の息子は異世界転生者なのかもしれない 鏡読み @kagamiyomi
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