第2話 はつげん

 俺はこの春から普通科の高校に通う。高校生にもなると第二次性徴により、約8割ほどの生徒が能力を持っているか否かがわかる。高校生になってから能力が発現することも珍しくはないが発現したとしても身体の成長とともに体に馴染ませることができないと、最大限の力を発揮することができず、宝の持ち腐れで終わってしまうことが多い。


 今この時代では、高校の進学先が一つの人生のターニングポイントになる。

 能力者は、『異能力試験』に合格することで能力科に進学することができる。能力を公で行使するには、能力科高校の卒業(能力課程の修了)が必須になる。そのため、このタイミングを逃すと、例え能力を有してたとしても、それを使うことが許されなくなってしまう。


 これを踏まえてもう一度言う。

 俺はこの春からの高校に通う。そう、としての人生を歩むことが本線となりそうなのである。まだ能力発現の可能性が尽きたわけではないが望み薄と見るのが妥当だ。


 が、俺は能力者としての道を決して諦めてはいない。なぜなら俺にはがあるからだ。


 一人で熱く考え込みながら、高校に向かって歩みを進めているその時だった。


「きゃあああ!」


 脳内に甲高い女性の叫び声が響く。咄嗟に振り向くと、同じ高校の女の子らしき子が、黒ずくめの何者かに襲われていた。黒ずくめの数は目視で確認できる限り2人。運悪く周りに他の人がいない。それなりに人影がありそうな路地なのに。助けを呼ぼうにも、今にも連れ去られそうになっている状況。


 俺がなんとかしないと。


「何してんすか! 彼女嫌がってますよ!」


 迂闊に近づくのも怖いので、まずは牽制した。


 少しの時間稼ぎになればという思いだった。自分の牽制の声に黒ずくめはかなりの反応を見せた。それは『誰もいないと思っていたのに』というニュアンスの驚きのものなのだとこの時の俺は思っていた。しかし、それは予想だにしないものだった。


「きさま、なぜ我々のことが認知できる。」

「まさか干渉できるとでもいうのか。」


 何を言ってるのかさっぱりわからない。服装といい、結構キテる人たちなのかこの人ら。


「かん、、しょう?? ちょっと何言ってるかわかんないすけど、その子嫌がってるんで放してあげてください。さすがにここまでするのはナンパだとしたらやりすぎっすよ。違う訂正、ナンパやりすぎっす。」


 語弊を生まぬよう訂正するくらいの余裕がまだ俺にはあるようだ。


「自覚症状なし。これは予期せぬイレギュラー。」

「例外因子は排除する。」


 黒ずくめの2人が俺を目掛けて飛んできた。手に持つ刃物らしきものが日の光の反射で不気味に存在感を出している。何のためらいも感じないほどの勢いで俺に迫ってくることでそれは確信に変わる。


「やばい、殺される。」


 思わず声に出てしまった、そのくらいの勢いと雰囲気だった。


 このまま死ぬくらいならせめて。


 俺は微かな可能性にかける。


 この体に眠る自分さえ知ることのなかった秘めたる力を引き出すイメージ。その力を右の握りこぶしに集中させる。


そして向かってくるに放つ、全火力。


「俺だって! やれば! できるんだあぁぁぁ! 」


 俺に能力が発現した瞬間だった。



















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