第29話 おのおののとらえ方

 人それぞれ、物事のとらえ方、感じ方は全く同じではない。ある日夫が大きなクモを見たと興奮気味に話した。

「どんなに大きかった?」と聞くと「自分の手のひらサイズだった」「なるほど。足も含めての大きさね」「違う、違う!胴体だけでその大きさだった」「・・・・。」盛ってるやろ、思いっきり・・・。

  ハイキングのイベントで時々出会う方が、山でヒルに遭遇した時の事を話してくれた。歩行中に後ろを振りかえると、何匹もヒルが追いかけてきている。下山後車に乗る時もヒルがズボンをはっていて、慌ててドアを閉めたと。私は、襲いかかってくるヒルを想像し、震えた。

 以前読んだ本にも、ヒルは人間の体温を感知し、登山者が通ると木からボトボトッと何匹も降ってくる、というのを読んだことがありなんて恐ろしいんだろう、なるべくヒルの出る山は避けたいと思った。

 しかし来月登る山の注意書きに、ヒル対策要、と書かれており、山に詳しい方に会ったときに、ヒルが追いかけてきたという話を聞いたのだが、と話すと、「その人、からかったんじゃないですか」といわれる。「いやいや、物凄く真面目な方です」「ヒルって追いかけてこれる程、速くないです」 

 その方の言葉で、私も遅まきながら冷静に考えることができた。そうだよなーなんかヌメーッと這うのだから、人間の足に追いつけるわけない。きっとその方は、ヒルが怖くて、進む速さを数倍に感じたのだろう。

 この前の雨上がりに、まだ濡れているコンクリー呟きを、ヒルが這っていた。歩みは超遅くて、「そうだよなー」と呟き、自分までその方に感化されたのがおかしくて、くすりと笑った。

 

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エミリー昆虫記 @iwaitoshi

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