ミモザの花

鳴深弁

貴方を密かに想い続ける



貴方の優しい手を覚えている。


気遣うように、


愛おしむように、


励ますように、


心地よい手で撫でてくれた。



温かくて、泣きたくなる程に優しいその手に撫でられると、愛しい気持ちが溢れて笑った。


とても幸せな時間だった。


笑い合えた日は、あっという間に時間が過ぎるけど、

また会える日を焦がれて、会えない日々も頑張ろうと思えた。


私に触れる手は、言葉よりも多く想いを込めてくれた気がする。

ひとつ、ひとつを確かめるように、大切なものに触れるかのような手を想い出す。


その手を包めば、嬉しそうに笑う彼がいて、

労わるように凝りを揉めば、弛んだ貴方の顔が愛おしい。


「貴方の安らぎになれていますか?」


私の唯一彼に返せる術だから、確認するように一つ一つを解していく。

気持ち良さそうな貴方の笑顔が私の生きる励みでした。


欲しい言葉や想いを返してくれる愛しい人


辛い中やり遂げる強さと直向きに頑張る人


心から尊敬して、貴方をひと時でも癒したいと心酔した私


生きる希望で、強さを与えてくれて、私の明日を生きる為の糧でした。


本当にかっこいいです。自慢の彼氏だったんですよ。


思い出しても、かっこいい彼と気を許した時の可愛さが胸を締め付ける。


貴方から私への贈り物、ミモザのネックレスは誇らしげに輝いていました。

舞台やここぞという勇気が欲しい時、そばにいてくれる気がして身につけていました。

気付いてくれていたかな。


私がデートしてみたい。と言った場所で観覧車乗ったよね。

未だに覚えています。付き合って半年くらいだったかな。高所恐怖症の私は隣に座りたい。と怯えながらいて、笑ってくれた笑顔を。

気を紛らわせようとしてくれた貴方は、観覧車からみえた場所を説明してくれたね。


本当はもっと色んな所、行きたかったな。徐々に身体を壊していった私や貴方じゃ、会える半日でデートはキツかったから、私は確かめるように貴方と触れ合う方を選びましたけどね。

良いのかな。と思っていた貴方の想いには目を瞑って、知らんふりしてたんです。

月に一度しか会えないから、触れて確かめたいし、癒したかったから。


観覧車の帰りの電車で、プレゼントしてくれたミモザのネックレス。最初は上手く着けられなくて、優しい手でやってもらったね。今は独りでもできるんだよ。


首元のミモザがとても綺麗に輝くから、

花言葉ってなんだろうね?って聞いたら。

物知りな貴方でも分からなかったね。

京都の職人がね、と誇らしそうに言うから私も嬉しくなって笑い合った。

ねえ、大好きだよ。貴方の悩んだ顔も嬉しそうな笑顔も全部。


考えても出てこなかったから、スマホで調べて微笑んだ。


ミモザはね。花の色にもよって、意味が異なるけど、

「感謝」

「友情」

「密かな愛」

「エレガンス」

「Secret Love(秘密の恋)」

「Sensitivity(感受性、または思いやり)」

沢山あるけど、ゴールドにダイヤだから全部かなって笑ってしまった。


恋人や愛しい人にあげる花なんだって。そういうと、少し照れたようにカッコよく笑ってたね。

ほら想い出すだけで、胸が甘く切なく締め付けられた。


好きだよ


抱き付けば、抱き締め返してくれる温もりが泣きそうなくらい愛しかった。


温かな手を、私は自分で放してしまった。


貴方への気持ちが消えたわけじゃない


ただ身体が更に悪くなった私が恋人として、求めるものが貴方への負担だと思ってしまったから。


優しい貴方は無理をしていたから、時間を作ってくれていた優しい努力を軽視したわけじゃない。


温かな手を包める私の身体ではなくなったの。

身体がね、痺れて上手く力が入らない。

貴方を癒す事が私の喜びだったのに、貴方はそんな事って言うかも知れないけど。私はそんな事もできなくなった自分が赦せなくなったんだ。


痺れるから上手く力が入らなくてね、貴方が可愛いといってくれた私は、日に日に自己嫌悪で心も体も歪んでいった。


人を妬んでも仕方ない。


いつかこの温もりは、貴方自身の病いに貴方を支える事ができて愛してくれる人に奪われるかもしれない。


そう思ったら、心が諦めてしまった。



貴方の一度別れを切り出したら、戻れない。


分かっていたのに、引き留めてくれない現実に打ちのめされた。

そうだよね。貴方は沢山傷付いてきたんだもの、分かってはいたけど口論すら出来なかった。


言ったら終わる。


分かっていたのに、止められなかった。


書き連ねている今も、貴方の温もりと笑顔が浮かんで渇いた心に雨が降る。


今はね、貴方の写真もミモザのネックレスも見るのは辛いんだ。

傷つけて、別れを告げた奴が言うなって思うよね。

貴方の目には触れないように書き連ねるよ。


「感謝」私を選んでくれて、ありがとう


「友情」私を肯定してくれた人だったね


「密かな愛」これからは密かに想います


「エレガンス」話に富んで気品ある楽しい人


「Secret Love(秘密の恋)」今迄の私達


「Sensitivity(感受性、または思いやり)」培ってきた関係と時間


貴方が撫でてくれた頬が、大粒の涙でとけそうだよ。

ミモザの花に誓います。貴方の幸せをずっと願って、私の花弁が少しでも貴方の胸に残りますように。


貴方を想って、

想ってくれたから、

愛し合えたから此れまで生きて来れました。


だから最後は馬鹿な奴と撫でてくれませんか?

私の最期のお願いです。



ミモザの花は私の首元で輝き続けるから。

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ミモザの花 鳴深弁 @kaidanrenb0ben

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