夢のような平和な時は露と消えた。
村を家族を仲間を、全て失った少年は憤怒の炎に身を焦がし、満身創痍で復讐に挑む。
旅の先々でいろいろな業や想いと出会い、また別れ過ぎ去っていく。
ここは悪人も良き者も関係なく淘汰され、ただ狡猾な者だけが生き残れる、無慈悲でシビアな世界。
そんな彼を支えるのは、生き残った健気な少女と、クセのある気のおけない旅の道連れたち。
本来なら悲愴感に押し流されそうな世界観も、どこか乾いた作風が、不思議とネガティブな感をいだかせない。
また名著『世界の魔獣』からの興味をそそられる魔獣紹介や、随所に挿入されるシニカルな展開に思わずニヤリとさせられる。
一生出遭いたくないような魔獣でさえ、つい一度は見ておきたいと思わせてくれる、そんな魔力ある作品です。