もう君を呼べない

上谷レイジ

本編

「なんてこった……」


 彼女からメールがあったので、開いてみた。

 URLの先に映っていたのは、親友と彼女からのビデオレターだった。

 どうやら場所はホテルらしく、二人はガウンを着ていた。

 致す直前で撮ったのだろう。


 俺はビデオを見るなり、ショックになった。


 ◇


 彼女とは大学に入って間もなく知り合った。

 彼女は髪が肩のあたりまで伸びていて、顔つきが有名な女性俳優に似ていた。

 まさしく俺の理想の女性だった。


 彼女は飲み会で泥酔するまで飲んでいて、もう動けなかった。

 彼女を介抱するために、住んでいるアパートがどこにあるか聞いた。


 俺のアパートと彼女のアパートが同じ方向だったので、一緒に帰った。

 意外にも、彼女のアパートは俺の住んでいるアパートの近くだった。


「今日はありがとう」


 そう言って、俺は彼女に口づけをした。

 これが人生初のキスだった。


 そのまま俺は彼女を部屋に連れ込み、体を重ねた。

 そこからは無我夢中だった。

 

 お互い果てた後に、俺は彼女に尋ねた。


「俺たち、付き合おうか」


 彼女は黙って頷いた。


 それから俺たちは付き合い始めた。

 色々な場所に遊びに行った。

 アルバイト先の給料が入るたびに、彼女とのデートが楽しみになった。


 しかし、そんな幸せな日々もあっという間に終わった。


 ◇


「ごめん、私……好きな人が出来たの。別れてくれる?」


 そこには俺の知っている彼女が居た。

 しかし彼女の傍らにいるのは……、俺の親友だった。


「ごめん、俺……〇〇のことが好きなんだ。親友のお前には辛いかもしれないが……」


 なんてことだ。

 あいつは俺を見ていなかったのか。


 俺はスマホで撮った彼女の思い出の写真を眺める。

 彼女と俺が笑っている写真ばかりがそこにはあった。


 アイツは良い奴だった。

 ずっと長く付き合っていた。

 だけど、そんな奴に盗られた。


 思い出は捨てきれない。

 あの楽しい日々を忘れることなんて、もう――。


 新しい恋を探そう。

 いつまでも立ち止まっていられない。

 だけど、あの二人は……。

――――――――――――

《あとがき》

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