砂丘のネモフィラ 🌼
上月くるを
砂丘のネモフィラ 🌼
ふだん散らばっているように見える星は、じつは色ごとに王国をつくっています。
赤い星王国、白い星王国、黄色い星王国、青い星王国、それぞれ王さまがいます。
そして、王国には王子さまもいて、地上の花たちとひそかな愛を交わしています。
赤い星王子は赤い薔薇、白い星王子はハンカチの木の花、黄色い星王子は金木犀。
いずれも高い場所に咲く花ですが、青い星王子は丈の低いネモフィラの花が好き。
毎晩、赤、白、黄色の王子は恋人と話していますが、青い星王子だけは悲しそう。
季節のめぐりからいっても、ネモフィラは春一番に咲くはずですが……いないの。
というのも、もともと丈が低くて見つけにくいうえに、場所が砂漠だったからで。
🌌
自分と同じ色の可憐な花と出会った王子の胸は、どんなにか高鳴ったでしょう。
お互いに見つけたのが明け方近くだったので、王子と花は今夜を約束しました。
ドキドキして夕方を待ち、宵の明星の合図で夜空にデビューした青い星の王子。
ですが……あの可愛らしい青い花、ネモフィラはすがたもかたちもありません。
高い砂丘のいただきに咲いていたはずなのに、ねえ、きみ、どこへ行ったの?
青い星の王子は真っ青になって探しましたが、肝心の砂丘自体が見当たりません。
砂の山はさらさらくずれやすく、ちょっとした風に山容を変えてしまうのです。
そのことを知らなかった王子は、それからずっと愛しい花を探しているのです。
👑👑👑👑
すみません、ちっともハッピーエンドではありませんが、そのうちきっと……。
それに、恋って遠まわりのほうが、より魅力的で、長持ちすると思いませんか?
ちなみに、ネモフィラは北アメリカ原産の一年草で和名を
花ことばは「可憐」「すがすがしい心」「どこでも成功」「あなたを許す」など。
悲恋の女性を憐れんだ神が一輪の青い花に変えたというギリシャ神話もあります。
砂丘のネモフィラ 🌼 上月くるを @kurutan
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