腐ってもゾンビ

うさだるま

心が腐る

1.

ある朝目覚めると、ゾンビになっていた。


俺は何も出来ない。努力は出来ないし、才能もない。性格もひねくれて最悪だ。大村 正義という仰々しい名前の癖して正義感なんてあったもんじゃない。名は体を表すなんて言うのは真っ赤な嘘だ。ありゃフリーメイソンもびっくりな都市伝説さ。ま、そんな事はどうでもいいんだが。なんて考えながら、タバコに火をつけて、スゥーパッと一服する。

まただ。また打ち切りだ。これで何本目だ?最近では編集さんに「先生、そろそろ諦めどきじゃ無いですか?」なんて言われる。うるせぇよ。勝手に俺を諦めるな。俺はまだ出来るんだ。出来るはずなんだ。

、、、いや、どうだろうな。ここずっと何を描いても面白くなく感じて、途中で考えるのを止めてしまう。若い頃は自分の作品に自信を持てた。胸を張って面白い作品です!と言うことができた。デビュー作のSF漫画『月のウラガワ』で連載が決まった時はそれは大喜びをしたさ。田舎から出て、東京でバンバンヒットを出して売れっ子漫画家になるんだって思ってたさ。

だけど今はどうだ?結局それ以来目立ったヒットも無し。『月のウラガワ』だって直ぐに連載は終了した。ただ才能の無い漫画家が東京に来て、ボロいアパートで今もせっせこせっせこつまらない漫画を描いている。そんな現実だ。

あーもうやめよかな。向いてなかったのかもしれない。中学の頃から頑張って来たけど、才能がないと分かって良かったじゃないか。漫画に取り憑かれて一生を無駄にする奴もいる。15年しか無駄にしなかったんだ。良いじゃないか。うん。良いじゃないか。

プルルルル、プルルルル。プルルルル、プルルルル。突然、携帯がなる。夜中なのに一体誰だろうか?電話番号も見たような見てないような正直覚えていない。とりあえずと電話にでる。


「もしもし」

「もしもし?正義かい?」

「母さん!?」


母さんだった。


「どうしたん急に?母さんが掛けてくるなんて久しぶりやね」

「元気にやっとるかなと思ってねぇ」

「いや、まあその元気でやってるよ」

「本当かい?」

「ああ、今、仕事の飲み会から抜け出して電話出てるんよ。楽しくやっとるよ」

「それならいいんだけど」


俺はとっさに嘘をついた。女手ひとつで育ててくれた母さんに心配はかけたくは無い。この電話中だけ俺はコアな人気があるファンの多い漫画家だ。テレビには出ないが、超絶人気のある漫画家だ。


「俺のことはいいからさ、母さんはどうなんよ?」

「私?私はまあそこそこ元気よ?膝も腰も痛いけど、もうすぐ定年だし頑張るしかないよね」

「ハハハ、そうだね。じゃあ母さん、切るわ。俺、飲み会戻らないといけないし」

「ああ、そうだったね。りょーかい、りょーかい。」

「うん、それじゃ」

「うん、無理しなくても、元気でやっとればそれでいいからね」

「、、、はーい、切るよー」


何処か母さんも息子が嘘をついている事に気づいているんだろう。ただ、言及はしてこない。その優しさが胸に刺さる。

俺はいったい何をしているんだろう。親に心配をかけて。なんの目的があってこんな事を?本当に自分がいやになる。あーあ、腐ってんな。マジで。

、、、寝るか。明日も予定はないけれど。起きててもやな事ばっかり浮かんでくる。じゃあ寝た方がマシだ。


「明日、目が覚めたら、世界が終わってないかな。」


ボソッとそんな願望を漏らした。


2.

「ゔぅぅ」


ああ、寝覚めが悪い。なんか声もガラガラだし、体もだるい。目を擦り、ゆっくり瞼を開けると何か緑色の物体が見える。

ん?なんだこれ?

、、、俺の右手だ。なんでこんな緑色なの?プールサイドの床暗い緑色だけど。え?病院行った方がいいよな?ここから一番近い病院どこだっけ?えっと、スマホスマホ、、、ああ、左側に置いてたんだった。よし、スマホ。

、、、え?左手も緑じゃね?ヤバいって、なんかの病気だって!よく分からんけど多分末期だって!末期の色してるもん!


「ゔぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!、、、ぁ゛?」


声も出ねぇ!喋ろうとしても唸り声しか出ねぇよ!なにこれ!鼻も効かねえ!臭いとか全然かんじねぇ!なんの病気?!まさか足も?

、、、緑ぃよぉ!!!なんで?鏡!鏡!

鏡を覗くとそこには全身が真緑のゾンビが立っていた。頬はこけ、歯茎が剥き出し。目は生気を感じない、あまりに不健康な俺の姿だった。

俺は目覚めると、ゾンビになっていたのだった。

え、なんで?ゾンビ?世界が終わってほしいとは言ったけどさ、そんなゾンビパンデミックを起こしたいわけじゃないですよ。

しかたねぇ、病院行く準備するか。

確かにちょっと腹減ってるな。そういえばリンゴ買ってたヤツあったな。それ食えばいいか。

俺は冷蔵庫の野菜室からゴソゴソとリンゴを取り出し、そのまま齧り付く。


「ゔぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛?!!ゔぁ?!」


齧り付いたリンゴはとても不味かった。とても食える味じゃない。例えるならば、歯医者の歯に塗られる薬品みたいな嫌な甘酸っぱさだ。食感も硬い。湿った木でも食っているのだろうか。

なんだこのリンゴ、腐ってんのか?

、、、いや腐ってんのは俺か。

ハハハ、笑えねぇ。

冗談じゃなくてゾンビになってしまったから、食の好みが変わったとかなのかもな。

だとしたら、なおさら早く治りたいものだ。

俺は出かける準備をしながらなんとなく、テレビをつける。普段から朝は面白味のないテレビニュースを見てから生活を始める。アナウンサーもタレントも揃いも揃って神妙な顔して、くだらない。

ただ、今日は違った。ニュースで騒がれていたのは、世界中でゾンビが発生したとのニュースだった。各地で低所得層の人間がゾンビに変わり人を襲い始め、次々にゾンビが増えていっているという。俺は驚いた。まさか自分以外にもゾンビになっている人がいるなんて。それも世界中に。ニュースは「現場の○○さーん」と言う知らない名前のリポーターを呼んで場面が変わる。

見覚えのある風景だ。薄汚れた遊具のない公園に、人通りが多い交差点。

そして、宝永社とデカデカとした看板がある大きなビルが立っている。

ここは、俺が漫画を出している出版社の前じゃないか!


「はい、現場の○○です。ちょっと街の皆様に聞いてみましょう。すみませーん」

「はい、なんでしょうか?」

「ジャパンテレビのものなんですけど、少しお話しよろしいですか?」

「あ、大丈夫ですよ」


リポーターが声をかけたのは、偶然にも俺に対して「諦めろ」と抜かした若い編集者だった。テレビに出れる事に調子に乗っているのかニヤニヤしているのが気持ち悪い。


「今日、ゾンビが大量発生したという話ですがどう思われますか?」

「、、、え?ゾンビですか?」

「はい。今ゾンビが沢山出てきているんですよ」

「はぁ、そうなんですか。まあゾンビと言っても元は人間でしょ?腐ってて足も遅そうだし、最悪襲われても勝てるんじゃないですか?」

「自信があるんですね」

「学生時代柔道やってましたからね。地区大会ベスト8の実力者ですよ」


そう編集者がいい終わるかどうかのタイミングで急に出てきたゾンビが後ろから編集者に齧り付いた。


「ゔぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」

「うわぁぁぁぁぁあ!!!!やめろ!噛むな!痛い痛い痛い痛い痛い!!!」


カメラの前で編集者は肩の肉を噛みちぎられ、骨がうっすら見えている。

編集者は助けをリポーターやカメラマンに求めるが、彼らは映像を撮ったり、自分の身を守るので必死なようだ。


「誰かぁぁあ!!!たすけてくれぇ!!!」


絞り出した編集者の叫びも誰にも届かない。

そのまま編集者はゾンビに頭を齧られ、パタッと静かになった。辺りにもう人はいない。ゾンビは力無く倒れている編集者の身体をクチャクチャと音をたてて食べている。

ニュースは直ぐに、〈しばらくお待ちください〉の文字と共に船が湖を渡る動画が流れた。

俺はその時、ようやく自分の口元がベタベタになっている事に気づいた。

口から涎が止まらないのだ。

もちろんショッキングな映像だったが、それよりも美味そうだとか嬉しいだとかの喜びの感情が湧き出てくる。不思議なのは、その事に俺はなんの悲しみも抱かない。むしろ嫌な編集者が死んでくれてラッキーとさえ思ってしまっているのだ。人間の法では裁けない存在に自分はなってしまったのだ。

もう、病院に行こうという考えは消えていた。

何をしようか、何をしたら楽しいか。

そんなことが頭をよぎる。

いっその事、すれ違った人間全員食い殺してやろうか。


ピンポーン


玄関のインターホンがなる。誰だろうか?


「大村さん!家賃払われてないですよ!一週間待ちましたよ!どういうことですか!大村さん!」


大家さんだ。アハハ。


「そんなんじゃ来月には、出て行って貰いますよ!早くお金払いなさい!もう待てませんよ!!」


ドンドンドンと戸を叩く音がする。

俺はギィィと音の鳴るドアを開けてニコッと笑って見せた。


「お金払いな!、、、ゾンビ?」

「ゔぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」


俺は頭から大家さんを齧った。血が溢れ出しジューシーで、食感も骨がポリポリと心地いい。脳髄も味が濃厚で食べ応えがある。

美味い。美味すぎる。今朝食べたリンゴとは比べものにならないし、初めて自分の稼いだ金でいった焼肉よりも美味いと感じる。


「お金、おか、おかかかか、イギッ、ぐ、ピャ」


大家さんは食べられながら何か意味不明な事を喋っていた。

俺の心はじわじわと満たされていく。怖い事など何もない。嫌なものも嫌な事も全部食べて仕舞えば良いのだ。アハ。アハハ。

俺は「人間じゃなくてよかった。生きていなくて良かった。」と本気でそう思った。


3.

俺はそれから、目についた人を食べていった。地域の説教してくるクソジジイも、俺を指差して笑うガキと近づいて行けませんという親も食ってやった。俺の前でイチャイチャしていたカップルは女の前で男を見せつけるように、ゆっくり食べて、その後に女の顔だけを食べた。

本当に最高な気分だ。人を食べれば食べるほど、全能感に襲われる。俺の少し食べ残した人間だった死体はゾンビになり、俺の傀儡になる。

程なくして、家の近くには人は居なくなり、荒れ果てたゴーストタウンになった。

町を征服したみたいで少し楽しかったけど、直ぐに危機に直面する。

食糧切れだ。

人間を食べないと腹が減って仕方がない。ただここら辺の人間は避難したり、食べてしまったりで居なくなってしまった。どうしたものか。

飢えはどんどん強くなってくる。

仕方ないので俺は、配下の食べ残しゾンビ達を計画的に食べることにした。

1日2人まで食べていいことにして、食い繋いだ。ゾンビ肉は人よりも味は落ちるが悪くない。人間がA5ランクの和牛だとすると、ゾンビはスーパーの半額肉くらいだ。肉を肉で例えるのもどうかと思うが、まあそこそこ美味いと言うことだ。

ゾンビを食べ始めてから一週間が経過した頃。身体に違和感が出始める。いや、違和感と言っても悪い感じじゃないんだ。むしろ力が湧き、世界が透き通って見える。明らかにゾンビになりたての時よりも力が増している。全身の腐食による痛みもあまり感じなくなってきた。ゾンビとして上位的存在になりつつあるのだろうか?


「ドウイウ事ダロウ。、、、エ?エ!?」


喋れる!喉の痛みが引いたとは思っていたが喋れる!喋れるぞ!本格的にゾンビの方が人間より優れてるじゃないか!すごい!すごいぞ!もっともっとゾンビを食べよう!これから見つけた人間は右半身だけを食べて残りはゾンビにしてから食べれば一石二鳥じゃないか?俺、めっちゃ天才かも!


プルルルル。プルルルル。


電話が掛かってきた。誰だろうか。まさか母さんか?俺は恐る恐る電話に出た。


「すみません。大村 正義さんで間違いないでしょうか?」


知らない男性の声だった。


「ハイ、ソウデスケド」

「私は市役所の高柳という者です。」

「高柳サンデスカ。市役所ノ方ガ一体ナンデショウカ?」

「あの、申し上げにくいのですが。大村 芳子さんが亡くなりました。」

「エ?!母サンガ?!ドウシテ!」

「ゾンビに襲われ、骨一つ無くなったそうです。」

「ソン、ナ、、、母サン」

「申し訳ありません」

「母サンヲ殺シタゾンビハマダ生キテイマスカ?」

「、、、はい。ですが命を捨てるような真似は止めてください。奴はこの地域を牛耳るゾンビなのです。人間1人にはどうにもできません!実際、山中廃工場に沢山の人が敵撃ちに行き、死にました!」

「ゴ忠告有難ウゴザイマス。廃工場デボスゾンビヲ倒セバ良インデスネ!」

「ちょっと!大村さん!?違っ」


俺はまだ喋っている市役所の人の話を無視して電話を切った。

母さんが殺されたなんて、、、

取り敢えず、故郷に向かおう。

幸い身体は心とは違い、羽のように軽い。

三日三晩走り続け、俺は数年ぶりに故郷に帰ってきた。上京する時に、売れるまで帰ってこないと誓ったのに売れないどころかバケモノになって帰ってきてしまうなんてな。

故郷は見知った穏やかな田園風景とは違い、人はおらず、あちこちから呻き声が聞こえるゾンビタウンになっていた。車が突っ込んでいるコンビニを右に曲がり、突き当たりに実家がある。

ドアは開いていた。

久しぶりの実家は落ち着く匂いがする。思わず「タダイマ!」と言ってしまったが当然、返事はない。実家の中はまるで泥棒に入られたかのように荒れていて、カーテンや昔ながらのストーブ、床に乾いた血がこびり付いている。ここで何があったのか嫌でも分からされる。テーブルの上には〈正義へ〉と書かれた手紙が置いてあった。母さんの字だ。


『正義へ

お母さんね。ゾンビに襲われて、家に逃げて来たんだけどね。もうドアも破られそうだから、最後にアンタに手紙を送ります。

お母さん、正直なことを言うと正義が仕事がうまくいってないこと知ってたんだ。それでも、私に嘘をついてまだ頑張りたいと息子が言うならとずっと応援をしてきたんだよ。辛い事も嫌な事も沢山あると思います。母さんだって、アンタが生まれて間もなくお父さんが事故で死んじゃってからは大変だったよ。なんで死んでしまったの?って泣いてたさ。それでも、アンタがいたから私はここまで頑張ってこれたのよ。

まだ、諦める時でもないさ。アンタの人生だ。自由に自分が信じたことをやればいいよ。お母さんは世界で一番、正義を応援しています。

p.s床下収納見てね

母より』


母の最後の言葉だった。

俺は、床下収納を開け、中を確認する事にした。

中には、今まで俺が書いて来た漫画が全て綺麗に保管されていた。

『月のウラガワ』も『因幡伝』もある。

俺の記事もラミネートしてある。少ししか書かれてないのにだ。

漫画達の上に白い紙が置いてある。

そこには「母が一番のファン!!」と大きく書いてあった。

涙が溢れた。腐った目から涙がとめどなく溢れ出した。母さん。優しく厳しかった、母さん。仕事で遅くなっても、いつも美味しいご飯を作ってくれた母さん。母さん母さん母さん。


「俺、間違ってたよ。」


その目は光を取り戻し、肌は暖かい肌色に戻り、健康的な人間に戻っていた。


4.

「ケジメをつけなければ」そう思った。

俺は沢山の人を食い殺し、沢山を悲しませた。それがどう言うことか、母を失ってようやく分かった。だから、もうやめますでは誰も納得はしないだろう。少なくとも母さんに顔向けできない。まあ俺は地獄行きだろうからそもそも顔向けできないだろうけど。

人間として、人として、罪を償わなければならない。その一環として、母の仇をうつ。俺は戦う準備をして廃工場へ向かった。気づけば外は雨が降っていた。


廃工場の中には、見るからにチンピラなゾンビが真ん中に偉そうに座っていた。周りには沢山のゾンビが呻きながら立っている。


「アア?誰ダ?オマエ?ビタビタジャネーカ。傘ハドウシタ?」

「、、、大村という者だ。母の仇を撃ちに来た。」

「オオ、ソウカソウカ。マタ馬鹿ナヤツガ来タッテワケダ」

「ああ、そうだ。」


人間を下に見ているのか態度が悪い。俺もあんな感じだったのだろうか。


「オイ、オマエラ。手ェ出スナヨ?オレノエモノダ」


周りのゾンビ達は黙ってこちらを見ている。


「ジャア、イタダキマースッ!!!!」


チンピラゾンビは物凄い勢いで俺の首筋に齧りついてきた。ベキベキベキッと骨が折れる音と共に脳を突くような激痛が走る。


「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いッ!」

「ウメェ、ウメェヨ!ウメェナァァア!!!」


ゾンビは噛む力を弱めず、ガブ、ガブと何度も食らいつく。その度に俺の肉や血が飛び散り、足元のコンクリートを汚す。だがこのゼロ距離。それが良かった。


「食らええええ!!!」


俺は隠し持っていた包丁をチンピラゾンビに突き立てる。何度も何度も突き立てる。


「どうだ!!」

「、、、ハ?舐メテルノカ?テメェ。コンナンデダメージ入ルワケネーダロウガヨ!」


ゾンビは更に噛む力を強め、右肩の殆どが食われてなくなってしまった。包丁もゾンビに突き立てたまま抜けなくなってしまった。


「コレデオシマイダ!!」


ゾンビは面倒くさくなったのか頭を噛みつこうと更に勢いを強める。


「なあ」

「ア?」

「最後に聞いてくれよ」

「ホウ、イイダロウ。冥土ノミアゲッテヤツダ」

「ありがとう。俺は最近までゾンビだったんだが、本当にどんな匂いかって分からないよな」

「ハ?ドウイウコトダヨ?」

「ああ、俺がびしょ濡れなのは雨のせいじゃないってコトだ。人間ならば直ぐに匂いで気付いたはずなのにな。灯油まみれでも味は変わんないのな」

「マサカ!」

「一緒に地獄まで行こうぜ。ゾンビ仲間だろ?」


左手でライターの火をつけると2人の身体は煌々と燃え始めた。ゾンビは逃げようとするが、足を絡め、包丁を握り、絶対に逃がさない。


「ウワァァァァァァ!!止メロ!火ハ!火ハ不味イ!!!」

「ああ、知ってる。」


瞬く間に火は工場を包み込み、工場内のゾンビにも火が引火し始める。

直ぐに工場内の全てのゾンビと大村は焼き焦げて、物言わぬ炭の塊になった。


死に際に大村は、母さんの事を考えていた。


「母さん。不出来な息子でごめんよ。仇は取ったよ、、、出来れば、もう一度会いたかったな、、、」


雨の音だけが強く鳴り響いていた。

                  (完)




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