第3章 氷漬けになったこの世界で

第1話 氷の卵から生まれた赤ちゃんだ

 寒い、寒い。

 冷たい、冷たい。


 俺は、今、氷の中にいる。

 どうして、この中にいるのかわからない。

 事の経緯を憶えていないから。


 動けないし、話すこともできない。

 俺は、自分が誰なのか知らない。


 目の前で空飛ぶリスが現れたかと思うと、氷がとけた。


「あれ?


君は、誰?」


「おいらは、スクイアットロ。


上司からの命令で、いやいや助けることになった」


「俺のこと、知ってるの?」


「ライハイツ。


それがお主の名前だ」


「俺は、そんな名前いや」


「英雄の名だ。


ありがたく思うんだな」


「それでも、いやなものはいや。


俺、この名前が嫌いだった気がするんだ。


よくわからないけど」


「ふうん。


感覚は残っておるのか。


たった今、氷の卵から生まれたばかりで」

 

「氷の卵?」


「そうだ。


お主は転生を果たし、氷の卵から生まれた赤ちゃんだ」


 俺は生まれてすぐに話せる、歩ける幼い赤ちゃんとして生まれた。

 年齢は0歳で、名前はまだない。


 髪の色は薄茶色だ。


 しばらくしてから、服を着た。

 水色と白のボーダーの服の上に、黄色のジャケット。

 ズボンもはいた。


「あのさ、俺は君と前に出会ったことある?」


 スクイアットロに問いかけた。


「そこまで、教えられん」


「どうして、俺には過去の記憶がないの?」


「パラレルループして、転生も果たしたからだろ?」


「パラレルループ?」


「何回も、同じ説明をさせるな。


自分で答えを導き出すことはしないのか?」


「そんなこと、俺はできない。


君の言う、俺ってなんなの?」


「さあな。


どうせ教えても、また忘れる」


「忘れるって、俺はそんなに忘れん坊?」


「そうゆうわけではないんだが、お主の魔力は計り知れない。


世界を、地球を、全平行世界を、氷にしてしまったからな」


 俺には、何のことだかさっぱりわからなかった。

 何の話をされているのだろうか?


 パラレルループだの、氷漬けになっている理由など、過去の記憶がない以上、何もわかりやしない。


「氷じゃない世界ってあるの?」


「異世界転移したり、宇宙に飛びだったりしない限りないな。


この地球そのものが氷の世界だからな。


まるで、雪男だ。


宇宙人も来て、驚いていたぞ」


「宇宙人なんて、いるの?」


「話せば質問ばかりだな。


とにかく、お主が要注意人物だということは、会議でも証明されておる。


これから、お主を牢にぶちこむ。


それなりの罰を受けてもらうぞ」


「罰なんて、俺、何のことだかわからないよ。


それに俺は過去の記憶がないのだから、自分が何の罪を犯したとかわかんないよ」

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いじめっ子が天罰を受けるこの世界で 野うさぎ @kadoyomihon

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