第7話 落とし物

「月浜さーん、修理どのくらいかかりそう?」

昴は女性の方に顔を向けて、半身の姿勢で状況を伝える。

「あ、はい、部品の交換は済んでおり、今動作チェック中なので、もう間もなくで終わります」

状況を伝えたはずなのに、女性はなおも昴に近づいてくる。状況が飲み込めず、昴が少し混乱していると、女性は昴の前で立ち止まり、右手に持っていた何かを彼の顔前に差し出した。

「はい、落とし物」

昴はそれを見た瞬間、背筋が凍りついた。彼がバインダーに挟んでおいたはずのボールペンだ。もう彼にとってそれはボールペンではなく、突きつけられた銃口のようにさえ感じられた。

「あ、ありがとうございます」

努めて冷静を装いながら、昴は両手でボールペンを受け取る。そして恐る恐る女性を見上げると、ボールペンが落ちていた経緯を知ってか知らずか、彼女は悪戯っぽい笑みを浮かべているように見えた。そして何も言わずに事務所に戻りながら、左手に持っていた子機で、通話を再開した。

「ともちゃんお待たせ〜、修理もうすぐ終わるみたい」

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木漏れ日の下で 聖丘謡夢(ひじりおか・ようむ) @Youmu-Hijirioka

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