第6話 冷蔵庫②

 基盤の交換は順調に終わらせることができた。コンセントを差し込んで、電源スイッチをONに入れると、冷蔵庫の照明が灯り、庫内が明るく照らされた。冷気の吹き出し口からも冷たい風を感じることができた。昴は修理完了の報告を伝えるためにバインダーを持って、キッチンから事務所へ向かった。ノックをしようとしたところ、女性の話し声が聞こえる。どうやら誰かと電話中のようだった。彼女の電話を遮るのも失礼だと昴は思い、電話が終わってから入室しようと、事務所の手前で待つことにした。

「ねぇねぇともちゃん、あの冷蔵庫直りそうなんだって!超嬉しいでしょ〜!え、私だけ?そんな寂しいこと言わないで〜」

どうやら女性は誰かと冷蔵庫の件を話している。

「それで、このあとお昼過ぎぐらいからお店やろうと思うんだけど、ともちゃん来れそう?……え?確定申告?うん、今頑張ってる!とっても頑張ってるけど……やっぱり今日中に終わらせないと駄目?そうよねぇ…」

昴は耳に入ってくる会話の内容から、ともちゃんというのはこの店の従業員らしいことがわかった。

「あ、そういえばいつ頃修理終わる聞いてなかった。ちょっと待っててね」

(こっちに来る!)昴は慌てた。事務所の側で立っていたら話を盗み聞きをしていると誤解されてしまう。なるべく足音を立てないように冷蔵庫の前まで戻り、しゃがんで修理をしている体を取った。コードレスの子機を持っているのであろうか、メロディと共に足音が近づき、背後から声が聞こえた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る