68話 報復

【村田華月さんは、てるてる坊主ではありませんでした。話し合いを続行してください。それでは、2日めのスタートです】


 ボーン……。

 話し合い開始の合図が鳴った。


「マジで!? アイツてるてる坊主じゃないワケ!? さいっっあく」


 アカネが悪態をつく。


「本当に心眼だったなら、仕切ろうとするなよ……」


 シンがぼやいた。


(……いや、役職を持った人が仕切るのが一番いいんだよ。だって、その方が選択肢が狭まるもん。こいつら、バカなのか……?)


 心中で、サトリは独り言ちる。


(それに、村田華月が偽物だったとしたら、本物が名乗り出るはず。それがなかった時点で本物のはずなのに……っクソ、この空気じゃ主張もできないし、そもそも手遅れだ……)


 悔しげに、ぎゅっと目を瞑る。


(てるてる坊主は、あらかた予想がついてる。場を掌握しきってるから、みんな気づいていないだろうけど……間違いなく、鬼灯空だ。でも、彼の怪しさを主張するには――)


 サトリはプレイヤーたちの顔を見渡す。


(取り巻きをどうにかするか、怯えてしまったプレイヤーたちを味方につけるかだ。一体どうすれば……)


「――ねぇ」


 すっとミナミが手をあげて、発言した。


「気象予報士の人、名乗り出てくれる? まだ、絶対にいるはずよね?」

「それに何の意味が?」


 シンが嘲笑うように問う。

 ミナミはあきれ果て、乾いた笑い声をあげた。


「だって、そうしたほうが選択肢が狭まるもの。それに、信用できる人が1人いるのといないのとじゃ、メンタルが違うわ」

「でも、出てきたからって、そいつが本物か限らないじゃん」

「はぁ……。呆れたわ。もう何も言わないわよ」

「な――っ」

「はーい! わたし、気象予報士です!」


 ミナミとシンの口論が始まろうとした時、ホノカが元気よく手をあげた。

 全員の注目が、幼い彼女に集まる。


「おい、お前ら。これが偽物だと思うか?」


 シュウヘイが問う。これにはソラも苦笑いを浮かべた。


「これは信じざるを得ないなぁ。こんな子が、元気よくウソをつくとは思えねーし」

「そう、だな……」


 ソラの言葉に、アカネもシンもしぶしぶ同調を示した。


(す、すごい……)


 サトリは感心してミナミを見つめた。


(場を完全に支配するグループを恐れずに、堂々と発言するなんて。……よし。ワタシも負けてられないな)


 両頬をバシっと叩くと、強い意思を持ってプレイヤーたちに向き合った。


「ちなみに、ホノカちゃん。今日の天気は何かな?」


 そう問いかけるサトリ。

 その横で、ミナミは何やらステージを見つめている。


「きょうは雨だった。だから、とーひょーはやめたほうがいいと思う」

「ありがとう」


 サトリは礼を言うと、プレイヤーたちに視線を送った。


「みんな、今日は無投票でいい? 道連れがランダムな以上、雨って分かってて投票するのは、良くないと思う」


 不満そうにする者はいない。

 サトリはステージ上のてるてる坊主に視線を向けた。


「今日の投票決まったから、もう話し合い終わっていい?」


 ゲームとしては、終わらせないほうが良い。

 しかし、長引かせれば、またソラたちの独壇場が始まるかもしれない。それを危惧したサトリは、ソラ達以外の者の意見が通ったタイミングで、話し合いを終わらせようとした。


【いいですよ。では、投票に移ります。プレイヤーの皆さんは、10秒以内にてるてる坊主だと思う人物を指さし、その人の名前を言ってください。10、9、8、7……】


 カウントダウンが始まる。話し合いの通り、指を指す者は誰もいない。やはり、巻き添えの恐怖には勝てなかったのだろう。


【3、2、1……】


 0が数えられようとした、その瞬間。


「鬼灯空!!」


 ミナミがソラを指さし、その名を呼んだ。







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