66話 てるてる坊主・ルール説明

【みなさんにしてもらうのは、てるてる坊主の正体を当てるゲームです。いわば、人狼ゲームのようなものですね】


「は……? なにそれ、性格悪っ」


 発表された内容に、カヅキは小声で呟いた。


 人狼ゲーム。村人たちの中に紛れ込んだ人狼を殺すまで続く、あまりに有名なデスゲーム。村人は、正体の分からぬ人狼を必死に推理し、人狼は必死に正体を隠し通す――まさに、疑心暗鬼のゲームだ。


「同感だね」


 すす、とサトリが近づき、同調を示した。


「ワタシたちのこと、オモチャとしか思ってないんだろうね。このゲームのチョイス」


 1~3は、代表という名の生贄に全責任を負わせるゲーム。

 そのくせ4~5は、プレイヤー同士の協力を必要とする場面を要した。

 かと思えば、6で壮絶な拷問を味わわされ絶望のどん底に叩き落される。

 少年たちの活躍で黒幕を倒しても、まだ終わらない。恐怖の7が始まった。

 7をクリアしたかと思えば、たった8人でいがみ合えとGMはのたまう――これを性悪と言わず、何と言うべきだろうか。


【ま、人狼ゲームとは言いましたが、全部が同じではありません。最後まで聞いていただければと思います】


 プレイヤーの不満を悟ったのか、てるてる坊主はすぐに補足した。


【まず、このゲームにおいての"人狼"は"てるてる坊主"にあたります。基本的な流れは「人狼ゲーム」と変わりません。皆さんで議論し、"てるてる坊主"の正体を暴いて頂きます。投票時間が来ましたら、全員が必ず"この中の誰か1人"を指さし、その人の名前を言いましょう。最も票を獲得した者は、処刑されます。これの繰り返しです。てるてる坊主を処刑した時点で、ゲーム終了。てるてる坊主は、自分以外の全員が死亡したらゲームクリアとなります】


 スクリーンに映された図解とともに、説明がなされる。

 ここまでは、人狼ゲームと全く同じルールだ。


【このゲームには、「天気」というシステムが存在します。「晴れ」「くもり」「雨」のいずれかの天候が、1dayごとにランダムに変動します。「晴れ」の場合は、処刑が執行されません。「くもり」の場合は通常どおりの処刑。「雨」の日の場合は、処刑の人数が1人から2人に増え、てるてる坊主を除いた誰か1人がランダムで選ばれ、道連れを受けます。その日がどの天気なのかは、こちらから開示することはありません】


【なお、1人につき3回まで、「投票しない」という選択肢を取ることも可能です。全員が投票しない日が、3回まであっても良いということですね。「雨」だと分かった場合、無投票をオススメします】


「なぁ。開示しねーのに、どうやって雨とか晴れとかって分かるんだ?」


 シュウヘイが問う。


【……。シュウヘイ君、人狼ゲームとは無縁そうですしね】


「は?」


【大丈夫です、説明しますよ】


 パッと画面が切り替わり、4つにコマ分けされた画像が表示される。


【このゲームには「役職」というものが存在します。まずは、「村人」。何の能力も持たない一般人です。続いて、「てるてる坊主」。処刑された場合、ゲームは終了します。そして、「気象予報士」。50%の確率で、その日の天気を知ることができます。最後に、「心眼」。1日に1つ、"てるてる坊主"に関する情報を知ることができます。配分は以下の通りです】


 村人……5名

 てるてる坊主……1名

 気象予報士……1名

 心眼……1名


「なるほど。気象予報士が、確率でその日の天気を当ててくれるってわけか」


 シュウヘイが呟く。


「そうだな。それを参考にして、投票するかしないか判断するって感じだろ」


 呟きに、ソラが答える。


「でも、無投票は3回までのうえに、天気が分かるのは2分の1。早急にてるてる坊主を見つけなきゃだね」


 サトリが付け加える。


「けど、誰かが死ななきゃ、じょーほーが入ってこないんだろ?」


 アカネが投げやりに言う。


「だから、"心眼"がいるんでしょ。そういう言い方、良くないよ」


 カヅキが諫めた。


「とにかく、てるてる坊主にだけはなりたくないな」


 癖っ毛の男子児童――朽木伸が呟く。


「……」


 ホノカは、無言のままガタガタと怯えた。


【ゲーム開始前に、皆さんそれぞれの元へ4つの中のいずれかのカードが配られます。それが、皆さんの役職です。説明は以上です。何か質問はありますか?】


 てるてる坊主が問いかける。

 無言のまま、ミナミは1歩前に出ると、ステージを指さした。


「アンタなんかに、絶対負けないから」


 強い眼差しで、宣言する。


【――――ふ】


 てるてる坊主が、吐息で笑う。


【せいぜい足掻くことです】







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