八曲目 てるてる坊主

65話 最終ゲーム・開幕

 轟く雷鳴、豪雨の音。


 真っ白な視界。


 絶え間ない浮遊感。


 首への負荷。


「お天気様! どうかこの雷雨をお鎮めくだされ!」


「お天気様! どうか我らに、太陽の恵みを!」


「お天気様! お天気様……!」


 村人たちの声。

 狂ったように、お天気様、お天気様と叫んでいる。うっすらと、天を仰いではひれ伏してを繰り返しているのが見えた。


(ぼくはいま、どうなって……)


 暗転する。


 今際の際、少年は知った。


 命を捧げ、祈り奉れば、願いは叶うものなのだ、と――――。



「ミナミッッ!」


 カヅキの大声で、ミナミは目を覚ます。

 体を起こすと、そこは元いた体育館だった。


(今のは一体……?)


 夢か幻覚か。もはや、それすらも区別がつかない……というより、どちらでも良い。

 常に死と隣り合わせの異常な空間。

 毎日顔を合わせていた人たちが、当たり前のように死んでいった。

 そんな状況下で、奇妙な夢を見たところで、どうということはなかった。


【みなさん、お目覚めのようですね】


 ふわり。

 一文字幕から、新生てるてる坊主が悠然と姿を現す。

 怨敵の再来に、数少ない生存者たちは、一斉に負の感情を胸に身構えた。


【生存者は、たったの8名ですか。随分と減りましたね。


 2年4組の天神穂乃果さん。

 3年1組の須藤茜さん。

 4年2組の朽木伸くちきしんさん。

 5年3組の木谷周平さん。

 同じく5年3組の日高美南さん。

 6年1組の鬼灯空さん。

 6年3組の村田華月さん。

 6年4組の新条里璃さん。


 ようこそ、最後のゲームへ。歓迎しますよ】


 てるてる坊主は、うやうやしく頭を下げた。幼さと無邪気さが全面に出ていた七枝夕とは違い、今のてるてる坊主はGM然とした振る舞いだった。


【はじめまして。僕は新しいてるてる坊主です。短い付き合いになるとは思いますが、よろしくお願いします】


 てるてる坊主は、礼儀正しく挨拶をした。


【さっそくですが、ゲームの説明に移ります】


(どんなのが来る……?)


(運ゲーか? 協力系か? それとも代表押し付け制か……?)


(何が来ても、生き残ってやる……!)


 それぞれの思いを胸に、プレイヤーたちはGMの説明を待つ。


 そうして、スクリーンは光り出した。


【8曲め、てるてる坊主。骨の髄までお楽しみください】















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