52話 拷問ゲーム④

 A そうだんしましょ

 B そうしましょ


 勝利したAチームから歌が始まり、相談の時間がやってきた。



 話し合い・Bチーム


「さっきも言ったけど、6番の子は爪を剥がされた痛みでまともに勝負ができない。連続で6番を選ぼう」


 サトリが言う。

 誰もはっきりと肯定したくはなかったが、反対する者はいなかった。


「なぁ、1ついいか?」


 シュウヘイが口を開いた。


「アンタ、人の心が読めるのか?」


 チームの誰もが疑問に思っていたことだった。

 皆が神妙な面持ちでサトリの答えを待っていると、彼女は不敵に笑った。


「まさか。そんなオバケみたいなことできるわけないよ」


 ――かと思えば、おかしそうに笑いながらそう言った。


「仕草や表情から、この人は今こんなことを思ってるのかな、っていうのを察するのが得意なだけだよ。それに、調子が悪いときはぜんぜん分かんないし」


 サトリは肩をすくめるが、すぐに姿勢を正した。


「でも、心情そんなのが分かっても、何も意味がないことが分かった。高橋先生を、どうにかしないことには。でも――」


 それ以上、サトリは何も言わなかった。

 言葉を付け足す者もなかった。


 たかだか小学生の自分たちに、あの大人バケモノを倒せるとは思えないのだ――。



 話し合い・Aチーム


「次に指名する子も、もう決まってるんだ」


 ニコニコとしながら、高橋は言う。

 次に選ぶ者を告げると、高橋はアカネに目を向けた。


「大丈夫? アカネちゃん」

「ふ……っ、ひぐっ、ふぅううっ……」


 激痛のあまり、アカネはずっと泣き続けていた。

 大声を出したら、きっとてるてる坊主に殺される。

 だからアカネは、声を必死に押し殺した。

「花いちもんめ」を歌っている時も、彼女の嗚咽や苦悶の声が入り混じり、プレイヤーたちは皆心を痛めていた。


「よしよし、よく頑張ったね」


 とびきりに優しい笑顔で、高橋はアカネの頭を撫でた。

 普通であれば微笑ましいはずのそれは、もはや恐怖でしかなかった。


「あとは先生が守るからね……」



 A 1番がほしい

 B ろ――


 6番がほしい、と言おうとして、Bチームは沈黙した。

 怯え、震え、下を向く子どもたち。

 前を見れなかった。


 原因は――高橋だ。

 口元は、にんまりと笑っていた。だが、その目は底知れぬ狂気を孕んでいた。

 高橋の目が、言っていた。「6番と言ったら全員殺す」と。


【あれ? どうしたの、Bチームのみんな。番号を言わないと――】


「……っさ、3番がほしい!!」


 とっさに、アオイが適当な番号を叫んだ。


「……アオイちゃん?」


 アオイは、とてつもない後悔に襲われた。

 彼女が叫んだ番号を持つ者は――つい先ほど友情を誓い合った、日高美南だった。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る