51話 拷問ゲーム③

 A 5番がほしい

 B 6番がほしい


「アタシ……!?」

「お、おいら……?」


 Aチームの6番、須藤茜と、Bチームの5番、八木綴。

 選ばれた両者とも、絶望に打ちひしがれた。


「大丈夫だよ、6番ちゃん。えっと……、名前はなんていうの?」

「……す、須藤、茜」

「アカネちゃんか。かわいい名前だね」


 そう言うと、高橋はアカネの肩をぽんと叩いた。


「大丈夫。おれのいうとおりにすれば、死なないから」

「で、でも……っ」

「いってらっしゃい」


 出ようとしないアカネの背を、トン、と押す高橋。その力は優しかったが、有無を言わさぬ強制力があった。


 Aチームの児童は、何も言わない。

 高橋の恐怖政治に屈し、自分の番を待つばかりだった。


 ――各々のチームの列の前に立ち、向かい合う2人。交わす言葉は、ない。


 絶望に苛まれながらも、彼らは息を合わせると、カードを1枚取り出した。


「「はないちもんめ!」」


 アカネのカードを見て、ツヅルは表情を喜びに染めた。


「やったぁあ! おいらの勝ち!」


【いいや、キミの負けだよ、ツヅル君】


 てるてる坊主が無慈悲に告げた後、ツヅルの両足は切断された。


「え――」


 噴き出す鮮血。

 回る視界。

 一体何が起こった――ツヅルはきょとんとしていたが、やがて足がなくなっているのが目に映る。その瞬間、耐え難い激痛が彼を襲った。


「ぎゃああああああああああああ!!?」


 劈く悲鳴。

 上半身のみになってしまった体は、激しく床をのたうちまわった。

 噴き出す血が、アカネの足にかかった。


「ちゃんとルール聞いてた? ツヅル君。爪はいちばん弱いけど、足にだけは勝つんだよ」


 ――そう、アカネの出したカードは爪。

 ツヅルならば、何も考えずに強いカードを出してくるだろうという、高橋の作戦だった。


『八木綴。言葉を選ばずに言えば、あの子は単純。かなりのおバカだ』


 怯える子どもたちへ、高橋は説く。


『強気にいこう。大丈夫、おれの言うとおりにすれば、絶対に勝てる』


 高橋の言うとおりになったことに怯えながら、アカネはただ立ち尽くした。


【ツヅル君? ――もう、聞いてないか】


 ツヅルは白目を剥き、完全に動かなくなってしまっている。


【それじゃ、サクっと吊っちゃいますか】


 しゅるしゅると、ツヅルのもとへ布と縄が降ってくる。

 すると、ツヅルの体はひとりでに吊り上げられやすい姿勢で浮き上がった。

 そしてそのまま、彼は"てるてる坊主"になり、まっすぐ天井へ上がっていった。


【次は、アカネちゃんの爪をもらいまーす】


 処刑の後は、精算の時間。

 猫又たちは、アカネの爪を力いっぱい後ろへ引っ張った。


「ぎゃああああああ!! いだい、いだいいだいいだいいいいいいい!!」


 いちばん軽症だからとて、決して甘いものではなかった。

 全ていっぺんにやればいいものを、猫又たちは左右それぞれ1枚、1枚と丁寧に剥がしていく。

 神経の通った箇所を無理やり引き剥がされる痛みに、絶叫するアカネ。

 小学生には、あまりに壮絶な拷問だった。


「……次は、絶対勝てる」


 強い罪悪感を抱きながらも、心を鬼にしてサトリは言った。


「何で分かるんだ……?」


 シュウヘイが聞き返す。


「ルールでは、何回指名してもいいことになってる。あの子は2回も勝負に耐えられない。ここは――」


 ――6番を連続で指名しよう。


 犠牲者……児童1名。

 残り、34名……。




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