26話 ねこふんじゃった・7ターンめ後編

「よし、道を開けてもらったことだし」


 先ほどとは打って変わり、清々しい顔でそう言うと、高橋は左へ1マス進んだ。

 猫の鳴き声が鳴った。


「けっこう鳴いたね。最下位は免れそうかな?」


 クラスの児童に笑顔を向けると、「わあああああ!」と歓声が鳴った。


(なんなの……、あの男、なんなのよ!?)


 悔しげな顔で、桑原は親指を噛む。


(大抵の男は、簡単にねじ伏せて思うがままにできる。あんなに簡単に躱されたのは、初めてだわ)


 ふらり。

 おぼつかない動作で、桑原は立ち上がった。


(待っていなさい。いつか絶対に――)


 ニタリ。

 赤い唇が、弧を描いた。


 Dチーム。

 チヒロはユウスケを一瞥すると、前へ5マス進んだ。

 ネコの鳴き声が、1回鳴る。


(あいつ、俺を閉じ込める気か……?)


 そう思考して、さーっと顔を青ざめさせる。


(まずい、間に合わない……。次、アイツが奥に2マス進んだら、移動を制限されちまう……)


 ギリリと歯を軋ませ、ユウスケはチヒロを睨みつける。

 その表情は、いつもの人当たりの良さからはかけ離れていた。


「くっそぉ……、あのアマァ……」


 罵倒はチヒロにも聞こえていた。

 しかし、彼女は振り向きもせず、言葉も発しなかった。


 Eチーム。


「ソウタ~、戻ったら次の列前な~!」

「は~い!」


 猫の鳴き声が1回鳴る。

 Eチームは、平和を独占していた。



あつめたにくきゅう

 Aチーム……4コ

 Bチーム……5コ

 Cチーム……8コ

 Dチーム……9コ

 Eチーム……5コ



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