23話 ねこふんじゃった・5ターンめ

 5ターンめが始まった。


「そんじゃ、俺はしばらく地味に行くか」


 ユウスケは前ターンから折り返すように、今度は手前へ5マス。

 猫の声は鳴らなかった。


 続いて、Bチーム。

 桑原がニタリと笑って、猪突の如く右へ3マス進むと、急激に方向を変え高橋を振り向いた。


「待て」


 パンプスが前のマスを踏むより先に、高橋が静止をかけた。


「ここでの勝負に意味はない」


 そう告げると、桑原の肩を引き寄せ、耳元で囁く。


「どうせなら、逃げ場がなくなってからのほうがイイだろう?」


 じゅん、と桑原の身体に興奮が走る。


「ええ、そうね! それがいいわ!」


 恍惚としてそう言うと、桑原はくるりと回り、そのまま右へ行った。

 猫の声が、1回鳴った。


 Cチーム。

 高橋は桑原と並走するように、右へ5マス進んだ。

 猫の声が、1回鳴った。


 Dチーム。

 チヒロも右へ5マス進む。

 猫の声が、2回鳴った。


 Eチーム。


「ソウター! そのまま右端まで突っ走れ!」


 男子が叫ぶ。


「おっけー!」


 ソウタはとてとてと右端まで進んだ。


「よし、そしたら奥に行って!」


 カヅキが言う。

 指示どおり、ソウタは奥へ2歩進む。

 猫の鳴き声が、1回鳴った。


「っまずい……!」


 ショウタが言った。


「どうしたの?」


 ミナミが聞き返す。


「今のターンで、体育館の後ろほぼ全部、Eチームが独占した! これで、Eチームの生存は決まったようなもんだよ!」


 そう言うと、ミナミの両肩を掴んだ。


「安全さと残りのマス考えれば、Eチーム>A、Dチーム>B、Cチームの順で有利!ぼくたちのチーム、ビリ争いになっちゃったんだよ!」

「そん、な……!」


 ミナミの顔が青ざめる。


「うえええええええええええん!!」


「負ける」というワードに反応したのだろう。

 ユウが泣き出した。


「ごっ、ごめんねユウくん! 泣かないで……いい子いい子」


 ミナミがユウの頭を撫で、必死に慰める。

 その横で、ショウタは深刻な表情でゲーム場を見た。


(圧倒的に移動数が少ないかつ、ライバルがいるエリアで、残りの3枠に食い込まなきゃいけなくなった……。しかも、相手は肉球をいっぱい持ってる!)


 ショウタは、目をぎゅっと瞑って祈った。


(神様……っ。お願いします。ぼくたちをお助けください――――っ)


 5ターンめ、終了。



あつめたにくきゅう

 Aチーム……3コ

 Bチーム……4コ

 Cチーム……6コ

 Dチーム……6コ

 Eチーム……3コ



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