22話 ねこふんじゃった・4ターンめ

【どんどんいくにゃ~! 4ターンめ、スタートにゃ!】


 ミケのアナウンス。

 例のごとく、Aチームからのスタートだ。


 ユウスケは、新たに参戦した2人――チヒロとソウタを一瞥すると、前に5歩進んだ。

 猫の声は鳴らない。


 次、Bチーム。

 桑原は左へ3マス進み、前へ2マス進む。

 猫の声が2回鳴る。


「逃がさないわよ」

「だから、逃げないって。ところで、見てみなよ」


 高橋はスッ、と右方向を指差した。

 桑原は示された方向を振り返ったが、その表情を怒りに染めた。


「あんのガキッ! 私たちの道を塞ぎやがったな!!」


 ユウスケの進んだ道は、左辺へ固まった桑原と高橋の進行方向を遮断していた。

 ユウスケの位置より右へは行けず、桑原が一直線に進んだ影響で、手前から6マスめより奥へは進めない。

 つまり、ステージ前方でしか肉球を集められなくなってしまったのだ。

 まだ踏めるマスは残されてはいるが、A、D、Eチームに比べると著しく少ない。


「彼がどこまで考えてたか知らないけど、やられたね。おれもきみに夢中になりすぎて、うっかりしていたよ」


 そう言うと、高橋は前へ1マス進み、右へ4マス進んだ。

 猫の声が、1回鳴った。

 彼の進行方向を見た桑原はほくそ笑んだ。


(次のターンで、こいつと勝負ができる――!)


 指を噛んで、疼く身体を必死で抑えた。


 続いて、Dチーム。

 チヒロは一瞬だけ左を見るとすぐに、右へ5マス進む。

 猫の鳴き声が2回鳴った。


 最後にEチーム。

 ソウタは顎に手を当てて、悩んでいた。


「右に5マス進んで!!」


 カヅキが大声で言った。


「そうしたら、キミがいちばん多くのマスを踏むことができる! 私たちが、1位だよ!」


 声を張り上げて、叫んだ。


「いけーっ!ソウタ!」

「がんばれーっ! オマエがナンバー1だ!」


 他のチームメンバーからも、激励の声があがる。ソウタは誇らしげに胸を張ると、堂々と右へ進んでいった。

 猫の声が、1回鳴る。


「おい! あれ反則だろ!」


 桑原が鬼の形相で言った。


「ゲーム外からの助言! あれはいいのかよ!?」


【別にいいにゃ。チームであることを活用してるんだにゃ。何が悪いんだにゃ?】


「卑怯だろ!」


【卑怯なんかじゃないにゃ。あの子が、全力で応援されるほどのニンゲンってだけだにゃ。キミは絶対にゃいだろうけどにゃ!】


 ミケの言うとおり、Bチームの児童たちは、恐ろしいものを見るかのように桑原を眺めていた。

 しかし、彼女は心底どうでも良さそうに、目を細めた。


「だから何? 私は今、高橋君にしか興味はない。くだらない話してる暇あったら、さっさとゲームを進めたらどう?」


【にゃっ!? にゃにおぅ~~っ!】


 4ターンめ、終了。


あつめたにくきゅう

 Aチーム……3コ

 Bチーム……3コ

 Cチーム……5コ

 Dチーム……4コ

 Eチーム……2コ


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