21話 代表決め、再び

【DチームとEチームは、代わりの人を選んでくれにゃん】


 しぃん……。

 誰も答える者はいない。

 あれだけ代表の死に様を見せつけられれば、当然のことだった。


【いないのかにゃ? にゃら……】


 ミケの目が金色に光る。


【DチームとEチーム、両方脱落だにゃ。自動的にA、B、Cチームの勝ちになるけど、いいんだにゃ?】


 チームメンバーの顔が青ざめる。


「おい、どうすんだよ。オマエが行けよ」

「はぁ? っざけんな、オマエが行け」


 ひそひそ、ひそひそ。

 DとE、両チームでそれぞれ、代表の押しつけ合いが始まってしまった。



 繰り広げられる醜い争いの中で、1人の少年がプルプルと震えている。

 名前は星川草太ほしかわそうた。1年生の数少ない生き残りの1人だ。

 彼はぎゅっとズボンを握りしめ、心を奮い立たせると、勢いよく上を向いた。

 そして、震える手で挙手をする。


「おれが……やりますっ!」


【はにゃっ!?】


 1年生の立候補は、さすがのミケも想定外だったようだ。


「ちょっと!」


 前髪なしのロングヘアの女子――村田華月むらたかづきが、慌てて咎めた。


「何考えてるの! 1年生でしょ!? そんな役、任せられないって!」


 心配しての言葉だったが、1年生に対してはかなり刺のある言い方になってしまう。

 案の定、ソウタはぐしゅっと顔を歪めた。


「う"っ……、だって……、だっでぇ……」

「おいおい~言い過ぎだぞ」


 短髪の男子が、ソウタの肩を叩きながら言った。

 カヅキは、申し訳なさそうに下を向いた。


「だっで……っ、たかはし先生、わるい子きらいだもん。おれいい子だから、あの人に襲われないもん!!」


 体育館中に響き渡る大声で、ソウタは泣き叫んだ。

 当然、本人にも丸聞こえで、高橋は苦笑いを浮かべながら頬を掻いた。


【わかった! キミの勇気を称えよう! Eチームの代表は、星川草太君に決定にゃ!】


「ねぇ、ちょっと! この子にやらせるくらいなら、私が――」


【なら、最初から立候補すればよかったんだにゃ。今さら出てくるんじゃないにゃ、弱虫】


「……っ」


 悔しそうに、カヅキは唇を噛んだ。


「だいじょぶ! このゲーム、にくきゅうをあつめればいいんでしょ? 敵チームからは逃げまくるから、しんぱいしないで」


 ソウタはそう言って、颯爽と指定のマスへ走って行った。


「――――」


 目に眼帯をつけた少女――木戸千尋は、そのやり取りをじっと見ていた。

 ソウタの後ろ姿を見届けると、ぐっと覚悟を決めた。


 すっ……。

 言葉はないが、強い眼差しでミケを見つめながら、手をあげた。


【Dチームの代表も、決まったようだにゃ! チヒロにゃん、よろしくにゃ~!】


 1ターン前、カナが最後に踏んだタイルが光り、Dの文字が浮き出る。

 チヒロは凛とした足取りで、Dのマスを踏む。


【両チームとも、無事に代表が決まって良かったにゃん! では、ゲームを再開するにゃん!】


 ミケが再開の言葉をアナウンスする。


【脱落したDチームから、移動を始めるにゃん。チヒロにゃん、好きな方向に5マスまで進むにゃ!】


 チヒロは5マス前進した。

 鳴き声は鳴らない。


【次はEチーム! すすんでくれにゃん】


「よーし……」


 ソウタはぎゅっと拳を握ると、右へ5マス一直線に進んだ。


「にゃお~ん」


 猫の声が1回鳴る。


【おめでとうだにゃ! Eチーム、肉球1コゲットだにゃん!】


「やったあぁあ!」


 ソウタが飛び跳ねて喜ぶ。


「すげーぞソウタ!」

「がんばれーー!」


 Eチームのメンバーも、小さな代表者に激励の言葉を送った。


【Eチームはお初の肉球ゲットだにゃ! この調子でがんばるにゃん!】


「うん! おれ、がんばる!」


 ステージに向かって、ソウタは叫んだ。



 あつめたにくきゅう

 Aチーム……3コ

 Bチーム……1コ

 Cチーム……4コ

 Dチーム……3コ→2コ

 Eチーム……0コ→1コ






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