三曲目 ねこふんじゃった

15話 ゲームは滞りなく

「ん……」


 目を覚ます。

 視界に、高い天井が映る。

 そこには、おびただしい数のてるてる坊主が吊り下げられていた。


 ――てるてる坊主?


「きゃあああああああああっ!?」


 一気に眠気が覚め、ミナミは飛び起きた。


「あ。おはようございます」


 隣に座るカイトが言った。

 つい先ほど、化け物を目の当りにしたというのに、やけに冷静だ。


「おはようじゃないわよ。今、何があったの?」

「……? さっちゃんとのデスゲームで生き残りました」

「それは知ってるわ! その後よ!!」


 相変わらずの話の通じなさに、思わず大声を出すミナミ。


「残念ですが、僕にも分かりかねます。てるてる坊主が「緊急事態」とアナウンスしていましたから、普通にゲームが終えられたわけではなさそうですが」


 顔色1つ変えずに、カイトは答えた。

 平然としている幼馴染に、ミナミは恐怖を覚えた。


(カイトまで、おかしくなっちゃったの……?)


 そう思いながら、ふと彼の足元に目を向けると、ものすごい勢いで震わせているのが分かった。


「……やっぱ怖かったのね」

「……? 当たり前です」


 幼馴染の平常運転ぶりに、ミナミはほっと胸を撫でおろした。


【はいは~い! プレイヤーのみんな、ちゅうも~く!】


 ウィーンと音が鳴り、ステージにてるてる坊主が現れた。


【さっきは不具合起こしちゃって、ごめんね~。でも、全員ちゃんとここに送れたみたい。よかったぁ~】


(よかったじゃねーよ……)

(謝るくらいなら、最初からこんなゲームやらないでよ……)


 もう、文句を口にする者はいなかった。

 またも激減した人数。

 さっきのゲームで、一体何人死んだのか。

 次は自分の番なのではないか。

 反骨する活力はもう、彼らに残されてはいない――否。

 怒りをぶつけるだけ無駄だということを、嫌というほど理解したのだった。


【さて、またさっきと同じように休憩を挟もうと思うけど――】


 プレイヤーたちの表情を見て、てるてる坊主は言葉を止めた。


【必要ないみたいだね。それじゃ、次もバトンタッチだね。ミケ君、準備はおっけー?】


【準備万端だにゃ!】


【よし! じゃ、いっくよ~! せーのっ】


【【三曲目、「ねこふんじゃった」。はっじまっるよ(にゃ)~!】】

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