第11話 歌詞当てゲーム!
さっちゃんの号令を合図に、音楽が流れ出す。
前奏もそこそこに、歌が始まった。
サッちゃんはね
サチコって いうんだほんとはね
だけど ちっちゃいから じぶんのこと
「……」ってよぶんだよ
音楽が止まる。
【はい、たかはし先生! 空白の歌詞をうたってね♪】
「えぇ~。簡単すぎるな、どうしよう。あの子に答えさせてあげたかったなぁ……」
高橋は1年生の申し訳なさそうに呟くと、1年生のユウに目を向ける。
【10、9、8、7……】
「う~ん、ごめんよ。答えは"さっちゃん"だね」
すぐにカウントダウンが始まり、高橋はやむなく答えを口にした。
ピンポーン! と正解音が鳴る。
【せいかーい! それじゃ、つづきを流すね!】
……♪おかしいな サッちゃん
「やった。このまま最後まで行くといいね」
「そうなれば、いいね……」
ユウナに話しかけられ、カナは青い顔で答えた。
彼女たちは、かごめかごめでカイトと同じグループだったクラスメイトだ。
サッちゃんはね
バナナがだいすき ほんとだよ
2番が始まった。
だけどちっちゃいから バナナを
「……」たべられないの
再び音楽が止められた。
【さあ問題です! みつきちゃん、空白の歌詞を答えてね!】
「えぇ~。わかんなぁい。う~ん、う~ん……」
【10、9、8、7……】
あざとい仕草で悩むミツキ。
カウントダウンは、容赦なく進んでいく。
【6、5、4、3、2、1――】
「あ、そうだ! "はんぶんしか"だ! 思い出した~!」
【せいか~い! さあ、あと1人だよ~!】
ピンポンピンポーン!
正解の音と、あと1人という言葉に、体育館を包む空気が和らぐ。
「うっし、いったな! ツヨシ!」
「おう。でも、最後がなぁ……」
悪ガキたちが、微妙な眼差しで向かって右の人物を見る。
最後の回答者、ユウは依然として、ひっくひっくと泣いていた。
【それじゃ、ラストいくよ~!】
……♪かわいそうね サッちゃん
音楽が再開する。
あと1人。
体育館の者たちは、期待と懇願の眼差しで、ユウを凝視した。
サッちゃんがね
とおくへいっちゃうって ほんとかな
だけど ちっちゃいから ぼくのこと
「…………」
さびしいな サッちゃん
【さぁ、曲はおわりました! 最終問題だよ、ユウ君! 空白の歌詞を答えてね】
……ドクン、ドクン。
緊張が走る。
ある者は両手に拳を作り激励し、ある者は目を瞑って祈った。
【10、9、8、7……】
「ひっく……っ、……ふぇええええん、うええええええええん……」
始められたカウントダウン。
ユウは泣いたまま、答えを口にしようともしない。
「おい、頑張れって!」
「諦めんなよ! なんか言ってみ、な?」
焦り始めた観衆が、激励の言葉を送る。
「うわあああああああん! あああああああん!!」
ところが、ユウはより一層激しく泣きわめいてしまう。これでは答えるどころではない。
【6、5、4、3……】
「おい、早く答えろ!」
「アンタのせいでみんな死ぬのよ! 答えて! 早く!」
「泣くなや! クソチビ!!」
響き渡る泣き声。
減り行くカウントダウン。
焦り始める観衆。
【2、1……】
(ああ……もう…………)
カイトは死を悟り、目を瞑った。
たった10秒。
瞬く間に過ぎ去っていくだけの秒数。
――そのはずなのに、ひどく長く感じられた。
――――0。
ブーーーーッ。
失敗音が、体育館に鳴り響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます