二曲目 さっちゃん

第9話 小休憩

 つかの間の休息。

 各々が親友を探しに駆け回っては、生存を喜んだり、死亡を悲しんだりしていた。

 ――その大半は、死んでしまったわけだが。


「カイトッ!」


 ミナミは真っ先に、幼馴染みのもとへ駆け寄る。


「ミナミさん。無事で何よりです」

「そっちこそ。良かった……!」


 数十分ぶりのはずなのに、久しく会っていないように感じられた。


「それにしても、不思議な空間でした。真っ黒なのに、クラスの人がはっきりと目視できました。一体、どういう原理なのでしょう」


 あまりに呑気な発言。

 ミナミは軽蔑の視線を向けたが、すぐに止めた。

 この空間で、まともに「死」に向き合うのは、心が耐えきれそうになかったからだ。


「……知らないわよ。でも、アンタもそうだったのね」


「死」から目を背け、カイトの話に応じた。


「ミナミさんも同じですか?」

「うん。突然景色が黒くなったかと思えば、急に人が10人くらいに減って、かごめかごめをやらされたの。アンタも?」

「ええ。おそらく、多くグループ分けされていたんでしょうね。ミナミさんのグループは全員無事ですか?」

「無事に決まってるわよ! 1人でも殺しちゃったら……、私だったら耐えられない」

「それはそうですね」


 帳が上がった後、一斉に現れた狂人たち。

 犠牲者が出ようが、オニが罪悪感に潰れようが、プレイヤーが恐怖に怯えようが、強制的にゲームが続行されたのだろう。

 そうして、みんな壊れて、死んでいった。


「次のゲームは、"さっちゃん"と言ってましたか。またけっこう骨になるのでしょうか」

「それ、どっちの意味? ふざけてんの?」


 ミナミが顔を顰めて言った。


「心外ですね。ふざけてなんかいません」

「はぁ……。あの3つの台を見るに、また代表者に重大な責任がいくタイプなんじゃないの? クイズに答えられなきゃ、その場の全員死にますよ~、とか。あいつならやりかねないわ」

「ですが、それでは童謡"さっちゃん"との関連性が見えてきません。一体どうなることやら……」


【はいは~い! みんな、休憩はとれたかな?】


 てるてる坊主のアナウンスが鳴る。

 生存者たちは、皆一斉にステージの方を向いた。


【この10分間、友だちが死んだことを悲しんだり、生きていたことを喜び合ったりしていたと思います。その思い出を胸に、次のゲームも頑張って生き抜いてね♪】


「ふざけんな!」

「よくもそんなことを!!」


 当然、生存者から怒りの声が鳴る。


「本当にふざけてる……。1回ぶん殴ってやりたいわ」


 ミナミが顔を怒りに染めながら、歯を軋ませた。

 震える肩を、カイトがぽんと叩く。


「落ち着きましょう、ミナミさん。アレに反抗するのは賢くありません。どこかのクラスの2の舞になる可能性があります」

「っ…………」


 最初に怒りの声をあげた、屈強な男性教師。

 そのクラスの子どもたちが、全員殺された時の光景を思い返し、ミナミは歯を食いしばって俯いた。


【もう~。てる君はすぐよけいなこと言う! だから、おこられるんだよ!】


 どこからか、幼い女の子の声が鳴った。

 突如鳴った声に、生存者たちはざわめいた。


【てへへ。怒られちった。それじゃ、バトンタッチだね、さっちゃん。準備はいい?】


【おっけ~! いつでもいいよ♪ せーのっ】


【【2曲目、「さっちゃん」。はっじまっるよ~!!】】


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