第4話

毎日、飲んだくれた父親は母親を働かせては、その金で酒を買ってこいと、夜中でも酒がなくなれば、叫び殴った。

清子は二人の子供を連れてビニール袋を持ち、近くの自動販売機にビールを買いに行った。

小さい妹をおぶって、3歳の息子の手を引いて。

雪がチラチラ降ってきて、お月さまの光で雪と雪の影が綺麗だった。

「ちれーだね。」

まだ、赤ちゃん言葉の翔が上を見上げて言った。

「帽子かぶって来ればよかったね。」

綺麗な雪を見る余裕はない清子が、翔の頭の雪をはらって、また、手をつなぎ歩き出した。

田舎の道には、お店は少なく夜中はどこも早く閉まっている。

自動販売機まで、大人の足なら10分はかからないが、小さい子ども達を連れての、冬の夜道。

なけなしの、千円で500mlを2本買った。

取り出し口から、翔が一生懸命ビールを取り出してくれた。

「翔、ありがとう。さぁ帰るよ。」

「うん。」

足元に降ってくる雪を踏みながら、喜んでいる翔は妹に

「きかちゃん、帰るよー。」と声をかけた。

背中のきかは、バタバタと手足を動かして、翔の声を喜んでいた。

また、あの家に帰るのかと、清子はストーブで温かい部屋ではあるが、出口のない暗いトンネルに入って行く様な、嫌な気持ちだった。

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最終園 ハメリュ @megu4445

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