第93話 実は私、〇〇がマックスだったりしますっ。


 場所が悪かった。

 GBレプリカが立ち上がれると分かっていれば、皆はそこにいなかったはずだ。


 振り回す右手が、まずカイさんとルカさんを吹き飛ばす。

 防御の姿勢には入っていたけど、剣や杖で防げるものでもない。


「がはっ!」


「きゃぁぁっ」


 打撃を食らった2人が、宙を舞うように吹き飛んでいく。

 次にソーラさんが、左足の側面で押されるようにして壁に激突した。


「ぐぅっ」


「ソ、ソーラッ!?」


 吹き飛ばされたソーラさんに近づこうとするナユタ王女。

 その彼女も、GBレプリカのバーニアの熱風に煽られて、私のいるほうへ飛ばされてきた。


「うわぁぁぁっ!」


「ナユタ王女っ!?」


 熱波に晒されて黒焦げにならなかったのが幸いだけど、とてもすぐに動けるとは思えない。

 カイさんとルカさんも同様に、再起は困難に見えた。


 状況が一瞬で一変する。

 これは大変なことになった。



【コメント】

 ・え……

 ・やばくないか、これ

 ・マジかよ・・・

 ・生きてるよね??

 ・ど、どうすんの?

 ・置いて逃げるわけにもいかないしな



 はい、めちゃんこやばいです。

 これは想定外です、本当にっ。

 でも、当たり前ですけど、4人を置いて逃げるとかありえません。


 私は隠れていたGBレプリカの左手から離れ、ナユタ王女の元に走り寄る。

 黒焦げではないけれど、バーニアの熱にやられた肌が赤く痛々しい。


「う、うう、う……ソ、ソーラ……」


 自分のことよりソーラさんのことを気遣うナユタ王女。

 そのソーラさんを助ける前に、ナユタ王女だけでも先に回復させておかないといけない。


「更なる付与を授からん――キュアッ」


 私は急いでキュアの魔法を使う。

 慈愛の光がナユタ王女を包みこむ。

 彼女の体から痛々しい火傷や傷が消えていく。


 慌ててGBレプリカを見れば、近くで倒れているルカさんに追い打ちをかけるような仕草。


 そんなことはさせないっ!!


「わああああああああああっ!! わー、わー、わああああああっ」


 私は叫ぶ。

 叫んで叫んで、とにかく叫んだ。


 するとこちらを振り向く、モンスターと化した巨大人型兵器。


 『そうか。もう一人敵がいたか』


 そんな声が聞こえてくるかのように、GBレプリカが私をロックオンする。


 良かった。

 これで向こうの3人は、更なる攻撃を受けることはない。

 大ケガとかしているかもしれないけれど少しの間、待っていてくださいね。


「よ、四葉。そなたが回復してくれたのか?」


 むくりと上半身を上げるナユタ王女。

 自分の体のあちこちを見ては、その回復ぶりに驚いている。

 

「はい。キュアの魔法を使ぃました。もう大丈夫そうぇすね」


「ああ、そうじゃな。びっくりするくらい大丈夫じゃ。これで2度目か、助けてもらうのは。心より感謝するぞ、四葉。ところで、そなたは魔法が得意なのじゃな」


「はい。聖魔法が得意です。でも手形式してなぃので、適性があるかは分かりませんけど。――って今は話してぃる場合じゃありませんね。早くみなさんを助けなぃといけません」


「はっ、そ、そうじゃっ。ソーラは!? カイはっ? ルカ達は大丈夫なのかっ!?」


「大丈夫――とは言いきれなぃので、GBレプリカを倒して早く助けに行こぅと思います」


「た、倒す……?」


 ぽかんとするナユタ王女を横目にしながら、私はスマートフォンのカメラを自分に向けた。


「聞ぃていましたよね? 視聴者のみなさん。私、今からGBレプリカとバトりますっ」



【コメント】

 ・!?

 ・ふぁっ!?

 ・いや、ちょっと何言ってるかわからないです!

 ・確かに助けるなら戦うしかないが・・・

 ・あれ?魔力は? 勝算あるのか?? 

 ・魔力、今のキュアでギリじゃなくね?

 ・え、ちょっと待って。魔力ほとんどなくない!?


 

 予想通りの反応ですね。

 当然だと思います。

 だってみなさん、私の魔力がほとんどないと思ってますもんね。


 でも実は私、だったりしますっ。

 体感的に、ですけど。


 それを言ったら当然のように、視聴者のみなさんが〝なぜなんだ?〟と大合唱。


 ――なぜか。


 それは白銀の手袋エンシェントグローブの付帯能力のおかげだ。

 どうやらエンシェントグローブを付けた状態でモンスターに触れていると、らしい。


 きっかけは、GBレプリカの左手に触れたときだ。

 

 飛ばされまいと握りしめていたGBレプリカの指から、魔力が流れ込んでくるような感覚。


 これってもしかして……と触り続けていたらやっぱり魔力の回復を感じて、そこで私は確信したのだった。


 当たり前だけど、エンシェントグローブはエンシェントシリーズの1つである。

 だからエンシェントロッドやエンシェントブーツのように、バトルで役に立つ付帯能力が必ずあると確信していた。


 それが、まさかの魔力吸収だとは思っていなかったけど。

 嬉しすぎる付帯能力ですっ。


 視聴者さんへの説明は、今はそれどころではないのであとにすることにした。



【コメント】

 ・よっちゃんがそういうなら実際にマックスなんだろうね

 ・特級武具がいい仕事したってことか

 ・エナジルの実いらずとか、どんだけーっ

 ・それならいけるっ。か??

 ・¥10000《良かった。魔力マックスなら安心。ちなみにゲルダムバーストレプリカは隻眼のオゥガより強いというのが私の見解。おそらく十数体のイミテーションソウルが強大で強固な魂を与えている。

 それはそうとバーストバーニングとバーストシンフォニーという攻撃には気を付けて。資料によるとバーストバーニングはメガ・レーザーキャノンによる必殺攻撃で、バーストシンフォニーはビームブレードによる必殺攻撃みたい。どちらも体全体が赤く光るのが発動の合図》



 星波ちゃんからもコメント来ましたっ。

 長文の早打ち、ありがとうございます!


 隻眼のオゥガより上、ですか。

 左腕の肘から先と、右足の膝から先もないんですけどね。


 バーストバーニングとバーストシンフォニーという必殺攻撃。

 やっかいそうですけど、しっかり対処したいと思いますっ。


 GBレプリカが迫ってくる。


 よーしっ、やるぞっ。

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