第91話 それは恋ではなくて、もっと現実的な理由だったようですね(笑


 ビュンッ。


 ソーラさんの放った矢がGBゲルダムバーストレプリカの胸部に当たる。

 でも装甲が強固なのか、矢はいとも簡単に弾かれた。


「更なる付与を授からん――ファイアスネークッ」


 間髪入れずに今度はルカさんの魔法。

 燃え盛るヘビのような炎がGBレプリカの右腕を燃やし尽くす。

 ――はずだったのだけど、右腕は平然とそこに存在したままだった。


「くそ……っ。こうなってくると、俺の剣も普通に攻撃したんじゃ効かねぇか。――んっ? やっべぇ、また撃つ気かよっ!? 1話に1発だろ、それはよぉっ!!」


 GBレプリカが、二度目のメガ・レーザーキヤノン砲の構え。

 その攻撃の矛先が、私やナユタ王女、そしてソーラさんのいるほうへ向けられた。

 

 でもそれは一瞬で、砲撃の向きはカイさん達のいるほうへと変わる。


 なんでだろう??という疑問はすぐに、助かったという安堵へ。

 でもそのせいでカイさんとルカさんがピンポイントで狙われたわけで、素直に喜べるはずもない。


 顔面蒼白になっている2人の銀潜章。


「に、ににににに、逃げろっ、ルカッ!! ……ってあれ? あ、おいっ、待ってくれぇっ!」


 言われる前に逃げ出していたルカさんを追いかけるカイさん。

  

 次の瞬間、キュイィィィィン――。


 GBレプリカの肩のメガ・レーザーキヤノンが咆哮を上げた。

 

 凄まじい指向性エネルギーの放出。

 カイさんとルカさんが隠れていた岩が、瞬く間に消失。

 同時に、かき乱された大気が突風を巻き起こした。


 やばい、飛んでいっちゃう――ッ


 私はありったけの力で、GBレプリカ左腕の指にしがみつく。

 両足が浮いてあわやというところだったけど、なんとか耐えた私。


「のわあああああああぁぁああぁぁっ!!?」


 目の前で後方にスッとんでいくナユタ王女。


 あっ!


 差し出したくても空いている手がない。

 すると、


「王女様ッ!!」


 私と同じように指にしがみついていたソーラさんが、その手を離した。

 ナユタ王女のあとにつくように飛んでいくソーラさん。

 彼女は途中でナユタ王女を抱きしめると、自らをクッションにするようにして地面を転がった。


 その近くではカイさんとルカさんも地面に横たわっている。

 立ち上がろうと身じろぎをしている2人。

 

 良かった。無事のようだ。

 ナユタ王女もソーラさんも大丈夫そう。

 私も当然、五体満足だ。


 ところでこの状況って、とってもまずい気がする。


 GBレプリカにとって一番近い場所にいる獲物。

 それが私なのだから。


 刹那、周囲が暗くなる。

 これは、影だ。

 はっとして頭上に目を向けると、巨大人型兵器が私を見下ろしていた。


「っ!?」


 ロボットだけに感情の一切が分からない。

 それが逆に恐ろしい。

 

 でも恐怖に飲まれて立ち竦むだけの私じゃない。


 完全じゃないけど、今の私はさっきまでの自分とは――……。


 GBレプリカが手を振り上げる。

 それはまるで殴りかかるかのように。

 でも途中でモーションを解くと、4人のほうへ移動していった。


 どういうこと?

 さっきもこっちに攻撃するのをためらったけど……。



【コメント】

 ・何もしなかったな。どういうこと??

 ・よっちゃんのこと好きなんか・・・?

 ・見下ろしの威圧感たるや

 ・死なない宣言さっそく破棄かと思ったわ

 ・ロボットが人間に恋をするとか今はいらん設定w

 ・マジな話、よっちゃん傷つけたくないからでは??



 私を傷つけたくない。

 恋とかは置いといて、実は私も一瞬、そうなのかもと思いましたっ。


 でもそうじゃないです。

 GBレプリカの目線は、私というより左腕に向いていたんです。

 つまり、なんだと思います。


 いくらもげていて使いようがないといっても、自分の腕。

 イミテーションソウルによって偽りの魂を与えられたゆえの行動なのだろう。

 元々操作されるロボットがモンスターになって自我を得るとは、なんともおかしな話だと思った。

 

 私は引き続き、指にしがみついたままでいることにする。


 もう少し、もう少し――っ。


「ナユタ王女とソーラさんは線路の向こうへ逃げてくださいっ。こいつは、ゲルダムバーストは俺とルカでなんとかしますんでっ」


「えっ!? なんとかできるの、これ?? 勝てる気しないんだけど。え? 死ぬ? 私、ここで死ぬ? うそでしょぉぉぉ」


 及び腰のカイさんと、それに輪を掛けたようなルカさん。

 それでも退避しないのは、やっぱりそれが2人の使命だから。

 

 でもナユタ王女の護衛は彼らだけの仕事じゃなくて――、


「私めも戦います。王女様には奥で隠れてもらっております」


 きりっとした佇まいのソーラさんがライトニングボウを構える。


「そ、そうか。ぶっちゃけ助かるぜ。おい、湊本っ。お前はそこにいるんだぞっ。お、俺達の雄姿をばっちし撮影してくれよぉ」


 サムズアップしてくるカイさん。

 その顔は無残なほどに引き攣っていた。



【コメント】

 ・カイさんの顔が痛々しい

 ・ああ、ルカさん、頼む死なないでくれ!

 ・ワイのソーラたんがなんとかしてくれる筈っ 

 ・最後の雄姿とか止めてくれよ

 ・なんとかなるのか、これ??

 ・グロ映像にならなければいいが・・・

 


 グロ映像っ。

 それは撮りたくないです、絶対。

 

 私にとってソーラさん、カイさん、ルカさんは、もう他人じゃない。

 とっても大切な人達なんですから。

 だからカイさん達にはなんとか耐えてほしいですっ。


 眼前では、GBレプリカが背中のビームブレードに手を伸ばしている。

 

 グリーンに発光するビームブレード。

 本来なら敵性ロボットに向けられる正義の武器。

 でも今はモンスターが人間に向けている邪悪な兵器だ。


 手にしたビームブレードを振り回すGBレプリカ。

 一振り一振りが、重く、荒々しい。


 3人は避けるのが精いっぱいで攻撃どころではないようだ。

 それでも、なんとか攻撃の糸口を見つけようとしているようで、何もできない自分がもどかしかった。


 あ、そうだっ。


 星波ちゃんに聞いてみようっ。

 星波ちゃんなら何かアドバイスできるかもしれない。

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