第88話 魔力回復の謎が解けましたっ。フラグ回収です(笑
「余震、か……?」
大地が揺れ、頭上からパラパラと砂が降ってくる。
その砂がやけにキラキラと輝いていた。
次の瞬間、
ガシャアアアンッ。
窓が降ってきて地面で粉みじんになった。
とっさに上を見ると、ダンジョンの天井にビルが横になって埋まっていた。
「やっべぇっ。下手したらビルごと落ちてくるかもしれねえっ、移動するぞ!」
カイさんの号令で皆が一斉にその場を離れる。
だけど私は立てない。足が重くて力が入らなかった。
これは魔力の減少による
単純に疲労からくるものだ。
池で全力を出して泳いだから乳酸が溜まっているのだ。
立てさえすれば、超俊足でこの場を離れられるかもしれない。
でも立つこともできないんじゃ――、
「何をしておるっ? 四葉! 早く立って逃げんかっ!」
私のピンチに気づいたナユタ王女。
「あ、足が重くて立てなくて……っ」
「そ、そういうことは早く言わんかっ!」
ナユタ王女がダッシュで戻ってきて私をおんぶするや否や、その場から一目散で走り去る。
5秒後。
ドグワシャアアアアアアアアアンッ!!
カイさんの予言が当たり、ビルの一部が私達のいた場所に落ちてきた。
「うわぁぁ。あのままいたら死んでましたね」
「そのようじゃな。って、もっと驚かんか」
「あ、もう、降ろしてもらってもいいぇすよ」
「無理をするな。長い直線が続くし、しばらくはこうしておればいい。さっそくさきの恩返しじゃ。おっと、四葉のお願いはちゃんと聞くから安心せい。これは別枠じゃ」
実を言うと、その申し出はありがたかった。
前代未聞の疲労感で多分、まともに歩けそうもなかったから。
リカバルの魔法を使えばいいだけの話なのだけど、今の私は多分使えない。
謎の魔力回復があったものの、イノセントライトでその全てを使用したような感覚があるからだ。
感覚というあいまいなものに頼るには経験値が少ないけれど、今は信じたほうがいい気がした。
「す、すぃません。ではお言葉に甘ぇて」
「うむ。それでいい。余に遠慮などいらぬ。それに四葉は軽い。以前、ソーラをおぶったことがあるがそれに比べれば、四葉は綿のよう――」
「王女様」
ソーラさんが両眼を赤く光らせて、ナユタ王女を睨みつける。
ナユタ王女、失言ですよっ!
「と、ところで四葉よ。ライブ配信はしなくてよいのか? そなたのファンが待っているのではないか」
「え? ライブ配信はしたいぇすけど、こんな状態ですし……」
「気にせんでいい。あまり待たせても心配するじゃろう。四葉の無事な姿を早く見せてあげたほうがよい」
「そ、そういぅことでしたら、お言葉に甘えて……」
私はポーチからスマートフォンを取り出す。
自撮り棒を伸ばしてライブ配信再開。
「な、何度目かのおまたせしましたーっ。ライブ配信、再開となりますっ。みなさん、まだぃてくれて――ますね。良かったぁ。ちょっとお待たせしすぎちゃったので、誰もいなかったらどぅしようって心配してたんぇすけど良かったです」
【コメント】
・きたあああああああっ!!
・よっちゃんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
・やっとかよ!!
・よっちゃああああああああああん
・心配してたのはこっちだよ!!
・それもおまいう案件www
・配信中断からの再開のたびに寿命が2年縮んどるワイ
流れていく数多のコメント。
そのほとんどが私を心配していたというコメントだった。
途端に、これ以上ないほどに申し訳ない気持ちが溢れてくる。
「そぅですよね、私のせいで皆さんに多大なご心配をお掛けしてるんぇすよね。わ、私だって逆の立場だったら、そんなに心配かけなぃでくれーって言うと思ぃます。本当にすぃません。で、でもでも、また心配をお掛けすることがちょっと、たくさんあるかもぇすけど私、絶対死ななぃんでそこだけは信じてくださいっ」
さっき死にかけましたけどねっ。
【コメント】
・その自信はどこから!?
・確かに特級武具あればそうそう簡単に死ななそうだけど・・・
・ちょっと?たくさん?どっち!?
・言いきりましたね。はい言質取りました
・うん。死ななきゃいっぱい心配かけてもいい
・根拠は特級武具ってことでおk?
そうですね。
エンドラさんからいただいた特級武具は充分に根拠になると思います。
まだ明らかになっていない付与能力もあるかもなので、それらが分かればもっと強固になるかなぁって。
でも。
それ以上に――。
「こ、根拠ならあります。私はこのライブ配信を通じて、私の物語をみなさんに配信してぃます。だから私は死ななぃんです。だって物語の主人公って死ななぃじゃないぇすか。自分の力で道を切り開いたり、あるいは仲間の力で助けてもらったりして……。だから私は絶対に死にませんっ」
言いきった。
それは視聴者のみなさんに安心してもらうため。
私は一度だって星波ちゃんのライブ配信で彼女を心配したことはない。
なぜなら、彼女が死なないって分かっているから。
それだけ鳳条星波という人間は自信に満ちていた。
だからファンは、心の底から彼女のライブ配信を楽しめることができる。
私のファンにもそうであってほしい。
心配掛けるだけ掛けて、あの世に逝っちゃいましたなんて、絶対にあっちゃいけないんだ。
【コメント】
・確かにその理屈なら死なんわな
・妙に説得力あるから不思議だな
・私はよっちゃんを信じる
・確かに主人公は死なないもんね
・よっちゃんは不死身っていうことでファイナルアンサー
はい。私は死にません。
だから安心してライブ配信をお楽しみくださいっ。
【コメント】
・¥10000《その誓約、私は信じる。よっつの物語は始まったばかり。まだまだ続くし、私はその続きを最後のトゥルーエンディングまで見届けたい。ところで私の祈りは届いた?
星波ちゃんからもコメント来たっ。
って、ええっ? 謎の魔力回復ってそういうことだったんですねっ。
星波ちゃん、ありがとーっ!
トゥルーエンディング、ですか。
私自身それがどういったラストなのか分かってないですけど、必ず到達しますっ。
その前にまず渋谷Bを脱出して、クレープを一緒に食べないとですね。
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