第79話 星波ちゃんとお話っ♪ そして意外な事実がっ!


 一番合戦さんとの通話を終えると、私は星波ちゃんに電話を掛ける。

 星波ちゃんはすぐに出てくれた。


「あ、よっつ。やっと話すことができる」


 星波ちゃんの声。

 なんかすごい久しぶりに聞いたような気がした。


「星波ちゃん! いまさっき一番合戦さんに電話したんぇすけど、星波ちゃんにかけてあげてって言われて」


「うん。よっつ、体は大丈夫?」


「は、はい、キュアを使ったので大丈夫です。ただ気力のほうがきつぃかもです」


「だろうね。ももちんと一緒にいるときもけっこう魔法使ったみたいだし」


 ももちんさんのライブ配信を見ていたのか、あるいは直接本人から聞いたのだろう。


「はい。なのでエナジルの実、どこかに落ちてなぃかなぁって本気で思ってます」


「そればかりは運だからね。だからエナジルの実は手に入れられないと思っていたほうがいいと思う」


「そ、そうぇすか。分かりました」


 確かに変に期待してしまうと、慎重さを欠く行動に出てしまう恐れもある。

 使うにしても、キュアの魔法もあと1回にしたほうがいい。

 当たり前だけど、〝期待=どこかで手に入る〟ではないのだ。


「それで今後のことだけど、ライブ配信は続けて」


「ライブ配信を、ぇすか? そのつもりでしたけど、それってナユタ王女が無事であることを配信し続けるため、って意味でいいんぇすかね」


「そういった意味合いもあるけど、私が求めているのはそれじゃない。よっつに何か伝えたいとき、さっきのようにコメント欄使ったほうが早いから」


 さっきのようにコメント欄のほうが早い。

 え……それって――っ。


「も、もしかしてぇすけど、、ですか……?」


「うん、そう。通話できないからコメント使ったんだけど、こっちのほうが迅速に伝えられていいかなって」


 まさかの事実が明らかにっ!


「そ、そうだったんぇすかっ、ポン吉さんが星波ちゃんだったんぇすね! そ、その、なんと言ぃますか……カーネラおじさんとかマネキンとか、色々とありがとうござぃましたっ」


 特にカーネラおじさんのほうは感謝してもしきれない。

 あの赤スぺコメントがなかったら、私は生きていなかったかもしれないのだから。


「うん。だからライブ配信は続けて。また伝えたいことがあったら赤スぺ使うから。それと念のため視聴者のみんなには、スペチャしないように言ってもらえる? 私のコメントだけを目立たせたいから」


「はい、分かりましたっ。そういぅことでしたら誰も反対しないと思ぃます。……あ、あのもうそろそろ……みなさん、待たせていますので」


「うん。そうだね」


「はい、では――」


「よっつ」


「はい?」


「また一緒にクレープ食べようね。――外で待ってるから」


「は、はいっ。外で待ってぃてくださいっ。必ず全員で脱出しますから」


 私は星波ちゃんとの通話を終える。

 

「おう、湊本。話は終わりか?」


 と、カイさん。


「はい。もう大丈夫です。長々とすいませんぇした」


「いいってことよ。そりゃ親御さんだって心配しているだろうしな。帰ったら思いっきり親孝行してやるんだぞ」


「へ?」


 いや、親じゃないんですけど。


 その親には、趣味でダンチューバーやってるとサラっと伝えたことがあるだけだ。

 なのでこの状況を電話しようものなら、色々と面倒くさいことになる。


 とはいえ、エンドラさん動画がバズってから私を取り巻く状況も一変したので、一回、膝を付き合わせるべきなのかなとも思っていた。


「よし、バスから出るぞ。隊列はここに来るまでと同じ。俺が先頭でルカがしんがり。その間にナユタ王女とソーラさん、あー、あと湊本もな。遅れるなよ」


「は、はいっ。遅れないよぅにがんばります」


 そう。

 がんばらないと遅れてしまうかもしれない。


「おっと、貴重な霊光石も忘れずにね」


 ルカさんがバスの座席に置いてあった霊光石を手に取る。そして、


「湊もっちゃんも持ってるんでしょ? ずっとバッグ光ってるし」


 湊もっちゃんっ!


 湊本、湊本様ときて、まさかそうくるとは思いませんでした。

 私の呼び方がどんどん増えて嬉しいですねっ。


「はい。これがなぃと暗くて進めませんから。バッグから出したほうがいいぇすかね?」


「ううん。一個外に出てればいいんじゃない。充分明るいしね」


 ナユタ王女がルカさんから霊光石を受け取る。

 どうやら彼女は霊光石担当のようだ。


 バスから降りる、カイさんとナユタ王女にソーラさん。

 それに続いて降りる私だけど、うまく段差を下がれなくて前に倒れた。


「きゃっ」


 でも倒れはしなかった。


「大丈夫ですか? 気を付けてください」


 ソーラさんがとっさに抱きかかえてくれたのだ。

 

 今のも間違いなく気力の減少からくる、足の踏み外し。

 体にまとわりつく倦怠感はそれほどまでに、私の運動能力を奪っていた。


「あ、ありがとうございます。なんかすぃません」


「持ち物が多いですね。その弓と矢は私めが持ちましょう」


 言うが否や、ライトニングボウと矢一式を私から取って自分の肩にかけるソーラさん。

 正直なところ、邪魔に感じていたので助かった。


「重ね重ね、ありがとぅございます」


 相変わらず無表情だけど、さっそくソーラさんの優しさに触れることができて嬉しい私だった。


「四葉よ、どこか体調がすぐれないようじゃな。余でよければおんぶしてやろう。こう見えて、体力には自信があるからな」


 おんぶっ!

 ナユタ王女が私を!?


 嬉しい申し出ですけど、そこまでされたら単なるお荷物です。

 私は丁重に断った。


 どうやら外にマネキンはいないようだ。

 カイさんの言った隊列となった私達はバスの先へと進んでいく。


 私はカメラを周囲に向けてライブ配信を再開することにした。

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