第68話 気力の減退がヤバいので魔法は控えめに。
「み、みなさん、こんにちは。ダンチューバー四葉でーす。うぇいうぇいっ。いやぁ、大変なことになっちゃぃました。何が大変かって言いますと、渋谷Bでももちんさんのライブ配信にコラボ出演していたんぇすけど、湘南新宿ラインに乗ってぃたら、急に地震が起きて、そのまま下に落ちちゃぃました」
【コメント】
・うぇいうぇいっライブ配信やってるうううううっ
・うぇいうぇい、ライブ配信やったーっ!!
・うぇいうぇい! 無事かよっちゃん!?
・うぇいうぇいっ。って下ってどこ!!?
・いきなりライブ配信かと思ったらマジかっ。
・湘南新宿ラインに乗ってた?? ダンジョンで??
・そこ未踏の領域なの??
えっ!? もう視聴者さん、見てるっ!!
めちゃんこ、嬉しーっ!
不安感が和らぐ私。
やっぱりダンジョン潜るなら視聴者の皆さんと一緒がいいですねっ。
「無事です無事ぇすっ。ただ、さっきまでももちんさんと一緒にイレギュラーモンスターと戦ってまして、そこで魔法もけっこう使っちゃぃまして、今けっこう体、だるぃ感じです。でもなんとか絶対、ダンジョンから脱出しますっ。だからどうか応援してくださいっ」
【コメント】
・あれ? スマホで配信?
・さらっとイレギュラーモンスター
・確かにちょっとだるそうな顔してる・・・?
・アシュラボゥイだよね? そっち観てたから
・一人で未踏領域とかめっちゃやばそう
・応援するよ!!
・よっしゃ! 声張り上げていくでっ!
この時点で同接がすでに200弱。
予告も一切なしで、こんなにも早く集まってくれたみなさんに本当に感謝。
漲ってくる元気。
なんとなく倦怠感の程度も和らいだような気がした。
だるそうな顔もあんまりよくないよね。
私が視聴者さんから元気を頂いているように、私のライブ配信で元気を充填している人だっているかもしれないんだから。
私は、電車にほかに誰かいないかを確認する。
というのも地震が起きる前、湘南新宿ラインには私とももちんさんのほかに4人のダンジョンシーカー?が乗っていたからだ。
間違いなく一緒に落ちていたはず。
だとすればまだ電車の中かもしれない。
私は4人が乗っていたと思われる車両を、恐る恐る見る。
恐る恐るだったのは、見るに堪えない状況だったらどうしようという恐怖からだったのだけど、そこには誰もいなかった。
念のために両隣の車両も確認したけれど、どちらも無人だった。
「あ、みなさん、すぃません。私が今何をしていたかといぃますと、人を探していたんぇすよ。一緒に乗っていたはずの4人のダンジョンシーカー?さんなんぇすけど、いませんでした。おかしぃですねぇ、確かに乗っていたんぇすよ」
【コメント】
・その4人は本当に乗っていたの?
・見間違いの可能性も微レ存、いや大
・見たのではなくて視たのでは??
・幽霊だったんちゃうんか
・わっ、今のってっ!?
・でたあああああああああああ
・よっちゃん、うしろうしろっ!!
・あれはやべえって
えっ!? 何っ? 後ろに何かいるのっ?
幽霊? 幽霊なのっ!?
怖くて振り向けないんだけど!!
私は超俊足で逃げてから後ろを振り向く。
そこには誰もいなかった。
バクンバクンと鳴る鼓動を聞きながら、コメントの確認。
【コメント】
・めっちゃびびってて草
・今までで一番早かったかもw
・超俊足の限界を超えた
・古典的なのに引っかかったな
・こら、よっちゃん可哀そうだろ。プークスクス
・振り向いて打撃でも良かったかも
ええええっ?
視聴者さんに騙されたっ。
「ち、ちょっと皆さん止めてくださぃよぉ。信じちゃったじゃないぇすか。私、幽霊とか、カエルの次の次に嫌いなんぇす。だからもう、絶対にやめてくださぃね。あー、本当にびっくりしたぁ」
【コメント】
・ごめんごめん
・驚かせたやつ、全裸で家の周り走ってこい
・幽霊がカエル以下かよ
・カエルより下なら怖くなくねw
・カエルの次が気になるんだが
・いたなら先に行ったんだろな
――先に行った。
そうとしか考えられない。
私が目を覚ます前にここから離れたのだろう。
でも大丈夫だろうか。
あの落下で怪我をした人もいたんじゃないだろうか。
しかもここは渋谷Bの未踏の領域。
ウルトラハードモードのクラスSダンジョンに比べれば楽なダンジョンだけど、さっきのアシュラボゥイやそれ以上のモンスターが出てくる可能性だってある。
実際、私は所沢Dの未踏の領域でケルベロスと遭遇したのだ。
私はその4人のパーティー構成を、目視した情報をから想像する。
1人は男性で剣と盾を持っていた。
よってジョブは剣士。
もう1人は女性で杖を握っていた。
こちらは私と同じで魔法師か。
そして残りの2人は一見してダンジョンシーカーに見えなかったけど、実はやっぱりダンジョンシーカーなのだろう。
変に邪推するよりかはシンプルにあり得る可能性だ。
ダンジョンシーカーであれば、なんらかのジョブにはついているはず。
そのジョブが何かは分からないけれど、おそらく剣士や魔法師とうまくバランスが取れているはずだ。
昔からRPGゲームは4人のパーティーが定石。
言い換えれば、4人いればなんとかなる。
私が心配することじゃないのかもしれない。
「では、私も先に進もうと思ぃますね。あのぉ、先に言っておきますけど、今回は渋谷Bからの脱出が目的なので、モンスターと戦うつもりはぁりません。気力も数値的にあと38.6パーセントくらぃな気もしますので。なのでもし遭遇したらダッシュで逃げよぅと思います。いいぇすかね?」
【コメント】
・それが最善だろ
・コマンド逃げる一択で
・こういうときエンシェントブーツはいいな
・38.6パーセントを導き出した計算式カモン
・ダンジョン罠にも気を付けて!
・魔法はいざというときの回復に
・星波様がいればなぁ
星波ちゃん。
彼女さえいれば、未踏の領域は一転して、余裕の領域になるはずだ。
でも星波ちゃんはいない。
遠くからでもいい。
だからどうか力を貸して。星波ちゃん。
私は右耳に付いている番のイヤリングにそっと触れた。
漠然とした嫌な予感を抱きつつ、私は未踏の領域の先へと進む。
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