第34話 私、アルマジンの倒し方、気づいちゃいました!

 

 もしかして――

 

 


 私は星波ちゃんを見る。


「ほ、星波ちゃん。アルマル、アルマジンってもしかして魔法が効かなぃのでしょうか??」


「それはどうだろうね。だとしたらよっつには倒せないってことになっちゃうんだけど」


「そうぇすよね。私、魔法師ですし、いくらエンシェントロッドが特級武具でも魔法が効かなぃんじゃ、どうしようもないぇすよね」


「でも、どうしようもないことをわたしがさせると思う?」


「そんなことは絶対にぁりませんっ!」


 私は即座に断言する。

 

 星波ちゃんが、そんな意地悪なことをするはずがない。

 私の気力減退への耐性を上げるために、バトルに付き合ってくれているのだから。



【コメント】

 ・即答w

 ・超反応www

 ・星波様の全てを理解しているかのような断言で草

 ・絶対の信頼を寄せているご様子

 ・これが推しを信じる力

 ・まあ、杖である以上ね

 


「う、うん。そんないじわるなことしないから、もうちょっとがんばってみて。絶対、エンシェントロッドで倒せるから」


「は、はいっ、がんばりますっ」


「グオオオオオオッ」


 私は難なくアルマジンの攻撃を回避すると、詠唱を始める。


「我ぁアストライアと契約せし聖なる汝を崇める者、血の盟約ぃ従い魔力マグナの付与を授からん――フラッシュフォース!」


 光の玉を今度はアルマジンのお腹に当ててみる。

 頭同様にまるで効いていないようだ。

 

 魔法に耐性のあるモンスターがいることは知っている。

 ということはアルマジンは、聖属性魔法に耐性のあるモンスター?


 だとしたら、いじわるなことをしないといった星波ちゃんがウソをついたことになる。


 それはない絶対にないあるわけがない!!


 そうだ、頭やお腹がダメなら――、


「我ぁアストライアと契約せし聖なる汝を崇める者、血の盟約ぃ従い魔力マグナの付与を授からん――フラッシュフォース!」


 左手は――ダメ。


「我ぁアストライアと契約せし聖なる汝を崇める者、血の盟約ぃ従い魔力マグナの付与を授からん――フラッシュフォース!」


 右手は――ダメ。


「我ぁアストライアと契約せし聖なる汝を崇める者、血の盟約ぃ従い魔力マグナの付与を授からん――フラッシュフォース!」


 左足も――ダメ。


「我ぁアストライアと契約せし聖なる汝を崇める者、血の盟約ぃ従い魔力マグナの付与を授からん――フラッシュフォース!」


 右足も――ダメ。


「我ぁアストライアと契約せし聖なる汝を崇める者、血の盟約ぃ従い魔力マグナの付与を授からん――フラッシュフォース!」


 下腹部も――ダメ。

 

 !??


 焦る私は星波ちゃんを見る。

 彼女の口ががんばれーと動く。

 それって、この方向性で間違っていないってこと??


 次に私はコメントをチラッ



【コメント】

 ・的当てゲームwwwwwww

 ・何気に命中率高くて草

 ・でもその調子その調子

 ・アストライアのもうええっての声が聞こえるw

 ・しつこくて付与してくれなくなるかもw

 ・詠唱の文言って省略できたと思うんだが


 

 な、なんか笑われている。

 というか、魔法の文言って省略できるんだ。

 確かに同じ魔法使うのに、毎回詠唱するのってどうなんだろうって思っていたけれど。


 って、そんなことは今はいい。

 早くアルマジンを倒さなくては。

 

 魔法が効かない現実と、星波ちゃんの言った〝エンシェントロッドで倒せる〟という言葉が角突き合いを始める。


 結果、勝ったのは〝エンシェントロッドで倒せる〟という言葉だった。


 で、でも実際に魔法は効かないわけだし、一体、どうしたらどうしたら…………。

 

 はっ!!


 ――――

 

 頭上でピカッとライトが光った。

 

 魔法は効かない。でもエンシェントロッドで倒せる。


 まるで、とんちのようなそれに私は答えを見つけた。


「み、みなさん、ぉ待たせしましたっ。さきまで、え? あのアルマル、アルマジン、魔法で倒せるのって感じだったんぇすけど、ようやくそのときがやってきましたっ。このエンシェントロッドでアルマル、ァルマジンを今からぶっ倒そうと思ぃますっ」



【コメント】

 ・言い間違いが気になり過ぎてw

 ・名前アルマルアルマジンちゃうで

 ・いやまあ、流れ的には次で倒すわな

 ・待ったが笑えたのでおk

 ・なぜかぶっ倒すとか言葉の汚いよっちゃん

 ・よっちゃんの口からぶっ倒す。はぁはぁ



 私はエンシェントロッドをしっかりと握りなおす。

 向かってくるアルマジン。


 なんとなくその顔が笑ったような気がした。

 

 どうせ、また魔法だろ? 効かねーよ、バーカ、うひゃひゃひゃひゃ。


 と思っているのかもしれない。


 と想像したら、いままでの徒労もあってか、むかっ腹が立ってきた。


「アルマル、アルマジンっ。あなたに特大のお灸を据ぇますっ。てやあああああああっ!」


 私はアルマジンに向かって走り出す。

 エンシェントブーツのおかげで、その距離はすぐに縮まり――


 私はすれ違いざまに、エンシェントロッドで思い切りアルマジンの頭を殴った。


「はっ!?」


 ん? 星波ちゃん?



【コメント】

 ・!?

 ・ふぁっ!?

 ・!??????ッ

 ・杖でなぐりよったああああああ

 ・その発想はマジでなかった!!

 ・面白すぎるだろwwwwwwww

 ・どうしてそうなる?????

 ・打撃系武器じゃないからあああああ



 あ、あれ?

 もしかして私、間違えた?

 魔法が効かないから叩くことにしたのだけど……。


 もし間違えたなら、今の攻撃も全然効いていないの??


 私はアルマジンを見る。


「ガ、ガフゥ?」


 ぴたりと動きを止めたアルマジンの顔がピキキ……とひび割れる。

 刹那、そのひび割れた部分から盛大に血しぶきを上げて地面に倒れ伏した。


 私はアルマジンを倒した。


 なんだ、効いてるじゃん。


「視聴者のみなさん。約束通り、アルマル、アルマジンをぶっ倒しましたー。魔法師だから魔法で倒さないとって思い込んでぃた私がバカでした。杖ってこういぅ戦い方もできるんぇすね。大発見ですっ」



【コメント】

 ・!?

 ・嘘やろ……?

 ・え? 杖、だよね?

 ・打撃系の武器に持ち替えた?

 ・俺達は一体、何を見せられたんだ?

 ・杖ってそういう戦い方しないよね?

 ・いや、魔法で倒して良かったんだけども!?



 あれ?

 おめでとう、がんばったねの声があるかと思いきや、そうじゃなかった。


 コメントを見る限り、〝杖で叩いて倒すとかあり得ない〟というのがほとんどを占めていた。


 でも倒したんですけど。


 首を傾げながら星波ちゃんに視線をやる。


 彼女は口をあんぐりとさせていた。

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