第27話 歓迎会も終わったので、台東Cにてライブ配信開始です♪


 荷台を引く一番合戦さん達が広場から出ていく。

 歓迎会が終わったこともあり、帰宅するとのことだ。

 

 また近いうちに会えるだろうか。

 個性的な鋳薔薇さんにももちんさんだったけど、とても楽しい時間を過ごさせてもらった。


 その2人がこっちに振り向いて手を振る。

 私はジャンプしながらぶんぶんと手を振り返した。


「また会ぃましょうねーっ」


「すぐに会えるよ。コラボだってすると思うし、イベントがある場合は全員集合するしね」


 武具を装着しているウロボロスマスターの星波ちゃん。

 さきほど私の武具のお披露目があったのだけど、そのときに星波ちゃんも着替えていたのだ。


 生で見るのは始めてなウロボロスシリーズ。

 そのほぼ黒一色のスタイリッシュさに見惚れてしまう私。


 星波ちゃんのばつぐんのスタイルに吸着するようなそれらは、武具というよりかはまるでスーツのよう。エンシェントシリーズとは系統が全く違うことに、今更ながら私は気づいたのだった。


 ところで――

 

 〝コラボにイベント〟。

 

 個人勢のど底辺ダンチューバーのままだったら多分、一生縁のないものだった。

 なのにそれが手の届くところにある。

 実際、私は今から星波ちゃんとコラボをするのだ。


 ライブ配信まであと5分。

 チャンネルアカウントは複数端末使用可能。

 なので配信機器はさっそくスマホからドローンに変えた。

 

 今そのドローンは私の斜め後ろで制止している。

 いざ配信が始まると私の前に来て、私を映す設定になっている。

 あとは状況に応じて撮るべきものを撮ってくれるので、本当に楽だ。


 視聴者のコメントはドローンから照射される光学モニターに映し出される。

 大きさも自分で設定できるけど、今日は初期設定のままにしておいた。

 それでもスマホの文字よりかは、はるかに大きくて見やすいのは間違いない。


 ライブ配信まであと2分。


 星波ちゃんが私から離れる。

 光学モニターの下に目をやる私。



【今日から潜姫ネクストの一員になりますっ。まずは台東Cをよっ散歩】

 7.629人が待機中 20XX/06/21 14時10分公開予定



 え? 予想以上に多いっ。


 けっこう急なお知らせだったのに、これは驚きだった。

 潜姫ネクストに所属してからの1回目ってこともあって、注目度が高いのかもしれない。


 ドローンが私の前に移動してくる。

 時間だということだろう。

 私は、ドローンのモニターの配信開始を押した。


「みなさん、こんぃちは。ダンチューバー四葉でーす。うぇいうぇいっ」



【コメント】

 ・うぇうぇいっ

 ・はじまったああああああああっ

 ・うぇいうぇいっ!!

 ・uuuuuuuueiiiiiiiiiiiiiiiiii!!!

 ・会いたかったよ、よっちゃん!

 ・サイドポニーテール♥

 ・よっちゃん、すこすこのすこ

 ・平常運転の舌足らずw



 うん、いい感じ。

 一瞬にして視聴者のみんなとリンクしたこの感じは、やっぱり最高だ。


 膨大なコメントが光学モニターを流れていく。

 やっぱり文字がスマホの5倍くらい大きくて、みんなのコメントがはっきり読めるのも嬉しかった。


「あ、ぁの、まず最初にみなさんに謝らなくちゃいけなぃことがあります。ライブ配信のお知らせが急すぎてごめんなさいっ。あ、あの、本当は今日、ライブ配信をする予定ではなかったんですけど、台東Cに行くならって思って……はい、ライブ配信の予約しちゃいました」



【コメント】

 ・いきなりで驚いたけど無問題

 ・よっちゃんに会えて幸せです!

 ・誰も気にしていないに500円

 ・今日は台東Cの散歩!楽しみ!(^^)!

 ・つーかなんか画像綺麗じゃね?

 ・高解像度のよっちゃんやばい

 ・自撮り棒持ってない?まさか



 私は安堵する。

 視聴者のみんなは、急なライブ配信の予約には怒っていないようだ。

 むしろやってくれることに感謝してくれているみたいで、うれしくて涙が出そう。

 

 ところで視聴者の皆さんが気になるのは、やはり映像のほうみたいだ。

 これももちろん、皆さんにご報告。


「気づいた方もいるみたぃですね。実は今、皆さんの元に流れてぃる映像はドローンによるものなんです。実は今日、この台東Cダンジョンを3時間貸切って、潜姫ネクストの社長さんが私の歓迎会をしてくれたんぇすね。それで歓迎会の最後にプレゼントとしてもらったんです」



【コメント】

 ・やっぱりドローンッ!!

 ・事務所の恩恵さっそくだな

 ・さらっと貸し切りとか。いくらすんの?

 ・金髪アフログッジョブ!

 ・つーか歓迎会端折りすぎで強制的に笑うw

 ・歓迎会詳細な説明求む

 ・センネクメンバー全員いたんっ!?



 やばい、やばいっ、

 文章の組み立て下手過ぎて、歓迎会の中身まるでしゃべってないっ。

 って、やっぱり視聴者のみんなに突っ込まれてる。


 ちらっと星波ちゃん見ると、苦笑してた。

 は、恥ずかしい。


「ご、ごめんなさいっ。歓迎会なんぇすけど、もちろん潜姫ネクストのみなさんいましたよー。一番合戦社長に愛染鋳薔薇さんに鉞もももさん、それに鳳条星波さんのみなさんが。台東Cにはいい感じの広場があるんですけど、そこでみなさんとバーベキューやっちゃいました」



【コメント】

・全員集合と見せかけてももももwww

・ももももとかワロタ

・ももちん欠席www

・バーベキューって何の肉??

・モンスターの肉食べ放題

・鋳薔薇姐さんがモンスター狩ったに500円

・ももちんの肉じゃないよね??



 ももちんさんごめんなさいっ!

 〝も〟が一つ多くなったばっかりに突っ込みの嵐ですっ。


 大至急、訂正っ!



「ももももじゃなくて、もももですっ。鉞・も・も・もさんですっ。そ、そのもももさんの肉食べたとか言った人ぃますけど、もちろん違ぃますよっ。お肉はボアウルフの肉で、狩ったのはみなさんの想像通り、鋳薔薇さんです。ここだけの話、質のいいぉ肉のために50体も狩ったみたぃですよ」



【コメント】

 ・言い訳乙

 ・全力の訂正が草

 ・ももちんの肉もおいしそう♥

 ・ボアウルフはマジでうまいらしい

 ・鋳薔薇姉さんはりきりすぎだろw

 ・50体!そりゃ貸切るわなw

 ・エロ撫子の本領発揮やな 



 歓迎会の話はもういいだろうか。

 ほぼほぼボアウルフの肉を食べながら、あとはみんなで会話をしていただけだし。

 

 その会話の中身は、話さないことにした。

 潜姫ネクストのみんなだけで楽しむ感じだったから。


 さてこのあとは……


 私はフレームアウトしている星波ちゃんに視線を送る。

 すると彼女は、こくっと頷いた。


 みんな驚くだろうなぁ。

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