第16話 目が覚めると金髪アフロのお姉さん。誰!?
【コメント】
・倒したああああああああ
・うおおおおおおおおおおおおおお!!
・魔法やべええええええええ
・聖魔法さくれつうううううううう!!!
・よっちゃんマジすげええええええ
・初めて見たわホーリーヴァレスティ超鳥肌!
・あんなのケルベロスに同情するわwww
・え? アニメ???
・さすが特級武具の威力っ
・なんかもうかっこよすぎだろ
・俺も打ちてえホーリーヴぁれ
・よっちゃん容赦なくて草
コメントが驚きと歓喜の声で溢れかえる。
私自身が驚いていて未だ放心状態だ。
でもそのままではいけない。ダンチューバーの役割を果たさなければ。
「や、やりましたっ。ケルベロスを倒しちゃぃましたっ。最後の聖魔法がエンシェントロッドの属性だったみたぃですね。間違えて最強のホーリーヴァレスティ使っちゃぃましたけど、みなさんにすごぃものを見せることできたので結果ぉーらいですね」
倒れたケルベロスの横を通り、奥の鉄格子のところへ向かう。
その鉄格子がガラガラと上昇していく。
ケルベロスを倒したから先に進めるようになったのだろう。
さきにあるのは転移門か。
はたまた宝箱か。
あるいは更に強敵がいるなんてこともあったり……、
――え?
足が進まない。
突然、立っていられなくなる。
とてつもない倦怠感に襲われ、ついには地面にへたりこんでしまった。
ああ、そうか。これは……。
ダンジョンはファンタジーであっても、
どんなに低威力の魔法でも一定の気力は減少する。
しかし使い続けていけばいずれ耐性ができて、徐々に高威力の魔法でも大きく気力を削られることはなくなる。
そこで私のケース。
一切の耐性もないのに、いきなり超が付くほどの高威力魔法の使用。
床にへばりつくようなこのある種の惨状は、当たり前といえば当たり前だった。
いわゆる〝ガス欠〟状態。
魔法師が一番やってはいけない大失態だった。
特に私の場合はソロ。
助けてくれる仲間もいない。
今の私は最弱のモンスターであるドロリンにだって簡単にやられてしまうだろう。
幸いにも周辺にモンスターはいない。
でも時間が立てば、どこからかモンスターが近づいてくる可能性だって充分にある。
ど、どうしよぉ……。
立ち上がるのはおろか、這って前に進むことさえできない。
それどころか、意識が朦朧としてくる始末。
私の視界にスマホのコメントが入ってくる。
【コメント】
・よっちゃん? どうした??
・なぜに床とハグ??
・もしかして攻撃食らってた?
・ガス欠だろこれ。大魔法だったし
・やっちまったガス欠!
・よっちゃんソロだろ。やばくね?
・マジで危険だから誰か助けろ
・なんとか転移門まで行って!!
ごめんなさい……みんな。
最後まで……ちゃん、と、……配信できな、くて…………。
本当に、ごめん……なさ…………い――――。
◇
「ん、んん……」
私はゆっくりと目を開ける。
ぼんやりとした視界の中に入ってくる板張りの天井。
その天井にはシーリングライトが取り付けられていて、眩い光が周囲を照らしていた。
板張りの天井?
シーリングライト?
私は上半身をソファから起こすと、周囲に目を向ける。
どこかの部屋のようだ。
右には窓、奥には机に椅子と観葉植物があり、左には白い衝立がある。
衝立の向こうにも部屋は続いているようで、私のいる場所は部屋の隅っこだと思われた。
ここは一体、どこ??
まるで会社のオフィスのようなそんな感じだけど……
私は所沢Dダンジョンにいたはずだ。
その所沢Dで、ライブ配信中に壁の向こう側に行ってしまいケルベロスに遭遇したのだけど、私は聖魔法を使用して倒した。
それから私はガス欠状態になって、床にへばりついて意識を失った。
で、目を覚ますとここはどこかの部屋。
誰かが私を助けてくれて、この部屋まで連れてきた??
私は柔らかなソファから降りる。
そのタイミングで衝立の向こうから誰かがやってきた。
「あ、目覚めたんだ」
上下蛍光ピンクのジャージを着用し、どでかい丸眼鏡をかけた女性。
その恰好にぎょっとした私だけど、それ以上に彼女の髪形に驚いた。
金髪のアフロ。その大きさは顔の3倍ほどだった。
アフロの中で3匹くらい鳥を飼っているかもしれない。
そう思うのは私だけではないはずだ。
「あ、ぁの、ここは一体どこなんですか……?」
私は金髪アフロのお姉さんに聞いてみる。
「座って座って。ガス欠の倦怠感ってけっこう尾を引くから、まだ立たないほうがいいよ」
「はぁ。では……」
ソファに腰を下ろす私。
質問に答えないアフロお姉さんは奥にある椅子に座った。
すると彼女は「あ、そうだそうだ、ご要望の……」と言って髪の毛の中に手を突っ込むと、
「はい、生首」
モンスターであるゴブリンの生首を取り出した。
「いやああああああああああああああっ!」
私は絶叫する。
「あははははははっ、うそうそ、これ、精巧に作られたレプリカだから。ほら、よく見てみ。ははは」
心臓をバクバクさせながら私はゴブリンの生首を見る。
確かにそれは本物ではなく偽物の首だった。
「……ほんとだ。偽物……」
「あったり前じゃない。あたしだって嫌よ。本物の生首を頭に仕舞っておくの。それにしても……あはははは、いい反応だったわぁ」
どうやら私を驚かせるためにやったことらしい。
「な、なんでこんなこと……。要望なんてしてなぃんですけど」
「あたしの髪の毛見て鳥が入ってそう、いるなら見たいって思ったっしょ? だから見せてあげたの。で、そこはサプライズでゴブリンの生首。みんな驚くけど、キミのが優勝。はぁ、ウケた」
質の悪いドッキリだ。
ドッキリだと分かった瞬間、恥ずかしくなってきて顔が赤くなってきた。
驚かされたのはちょっと腹が立つけど、助けてもらったことへの感謝は伝えなければならない。
「あ、あの、助けてくれてぁりがとうございました。あのままだったら、モンスターに殺される可能性もぁったので本当に感謝してぃます」
「それな。うちのダンチューバーが急いで向かったから良かったものの、あのままだったらマジでやばかったかもね」
うちのダンチューバー?
「ここってもしかしてダンチューバーの事務所なんですか?」
「うん、そう。ここは〝
え?
え??
ええええええええええええええっ!!?
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