近未来でスーパーに買い物行ったらブルーになった
ブロッコリー展
⭐️
「新生活応援グッズみたいな僕でいいかい?」と妻に聞いたら、
「は?生活なめないでよね」と叱られてしまった。
A Iが忠告してくれたとおりに言えばよかった。
男と女が分かり合えないという前提に基づいたAI同時通訳を今日はオフってしまっていた。
テクノロジーは日々進化していて、どんどん僕の僕としての役割みたいなものが奪われていく。
ベーシックインカムでいい感じにしてていいよと国が言ってくれたのに、pray for me 冠婚葬祭で男たちはますます役に立たなくなっていっているようだ。
いつも妻は仕事をみつけるのがうまいのでとても忙しそうだ。
今の僕の仕事といえば、飼っている猫が水を飲んでる様子をじっと観察して、舌が水を汲み上げるメカニズム(今現在未解明)をわかった気になるくらいのことが関の山だ。
そんな僕に妻が「買い物行ってきてくれる?」というお言葉をくれた。
二つ返事で出かける。
目的地はパーフェクト・タイミング社が運営するスーパーマーケット。3Dプリンティング建築で毎日あちこちで店舗をビルドアンドスクラップしまくるスタイル。
朝起きたら家の前に店ができてることもあるし、なくなってることもある。
今現在の最寄りの店舗を確認、わりと近くてよかった。
家を出てすぐに自動運転道路に(道路は乗り物です)乗り込んで向かう。
自分の好きな形に道路を持ち上げて乗り込む。みんな道路に乗っているので絶対にぶつからない。
到着。今日は自動運転酔いしなかった。
店内は買い物代行ロボで溢れている。
割合としては、人が3に対してロボが7といったところか。
今どき、自分で買い物に来る人は暇な人か、自分で買い物をしたい人くらいなもんだ。僕はヒマです。
店内を巡りながら、妻から渡されたメモにあるものをひとつひとつ買い物カゴ(買い物カゴに入れると商品は小さくなり取り出すと元のサイズに戻る)に入れていく。
サクサク順調。僕は仕事に飢えていたのだ。
でも、ふと目の前の買い物代行ロボを見入ってしまう。ある商品を買おうかどうかためらっているように見えたから。
そういうのは買い物代行ロボには珍しいことなので、つい見てしまった。
もしかしたら以前にその食材で作った料理で夫婦ゲンカがあったというデータに基づいて神算鬼謀を巡らしているのかもしれない。
買い物代行ロボも大変ですな。
おっと僕は僕の役割を果たさねば。先へ。
そうそう、ちなみに、買い物代行ロボ同士でコミュニケーションも代行してくれて、地域コミュニティの形成にも一役買っている(僕はロボ見知りなので誰も寄ってこない)。
でもこの前は、買い物代行ロボとお掃除ロボの衝突事故が起こってしまい、その処置を巡ってお掃除ロボ連が抗議のストをしたので、店内が汚い時期があった。
これはあるエンジニアの言葉。「A Iはすぐにコピーできるがロボティクスには技術や経験値が必要なのだ」
さあ買い物。んーどれもインフレで高い。
A Iを活用して合理化を図り、生産性が向上して一時期物価が下がったけど、ロボが増えすぎて資源高になり再びインフレが加速した。
安いのは理由があるものばかりだ。
ゲノム編集された砂漠野菜と海野菜は今日の奉仕品になってる。
宇宙から輸入した虫は虫の形をしていないので昆虫食として人気だ。
魚肉ソーセージが安売りしていた。メモにはないけど買う。very touching
魚肉ソーセージを開発した人は特許をとらなかったからずっと安く提供された。食糧難だった当時の子供達にお腹いっぱい食べて欲しくてそうしたんだそうだ。
ポリオワクチンを開発した博士も特許をとらなかった。
なぜそうしなかったか聞かれて博士は答えた。
「太陽に特許が?」
店内に流れていた音楽が“メタ・ショッピング”という曲から“タンス・ダンス・チャンス”という曲に切り替わった。
日本の箪笥が一気にDXされてタンス貯金が一斉に動き始めて、それもインフレの要因。
さらに買い物を進めます。
ベーシックインカムの影響でタイパは軽視されはじめた。やたらと迷路みたいな店舗が増えた。時間が潰せるように。I thank you anyway
前方から買い物デートな感じの若いカップル接近中。
何か探し物のご様子。で、見つけた。
「あーあった、これこれ」
「えーこれいる?」
「いるよ、今はラブラブだけど、もし気持ちが離れちゃったときのために買っとこうよ」
「オッケー、そうだね買っとこうよ」
これがほんとの大人買いだと言うかと思った。
彼らが手に取ったのは、『最新の出会った頃』をアップデートできるハート型のデバイス(貼るタイプの神経インプラント?)でした。
この場所は『心と恋愛の売り場』。
一応、値段を確認。
んー。
恋愛に 特許が?
一通り店内を周り終え、レジへ。けっこう余計なものを買ってしまった。
でも安心。
レジではビックデータを基にA Iが買い物内容を精査してくれて余計なものは省き、忘れているであろうものを足してくれる(メモいる?)。
会計。
お?なんか見慣れないものが入っている。
小型の旦那代行ロボ。なぜか子犬の形だ。
試しに作動させてみた。しゃべり出す。
「新生活応援グッズみたいなボクでいいかい?」
……。
こりゃダメだな。
僕はその商品をサービスカウンターのロボに返した。
近未来でスーパーに買い物行ったらブルーになった ブロッコリー展 @broccoli_boy
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