第84回「トゥモロー・ネヴァー・ノウズ」に見るSFの書き方

※この記事はロバート・L・フォワード「竜の卵」のネタバレを含みます。

 

 カクヨム発のSF作品、宮野優「トゥモロー・ネヴァー・ノウズ」( https://kakuyomu.jp/works/16817139557634186477 ) 

 今回はそこからSFの書き方を考えてみようと思います。皆さんはSFといったとき、本当は何を軸にして書いたら評価されるのだろう? とは思いませんか? これ実はSFファンのなかでも難しい問題です。

 ただ「SFの書き方 「ゲンロン大森望SF創作講座」全記録」のなかで最初に触れられている要素があります。


 それはセンス・オブ・ワンダー、驚きの要素です。


 まずは構えないで考えてみましょう。どうしたらセンス・オブ・ワンダーのある小説が書けるか、大人になると驚きが減って……とか思いますよね。

 驚かせようとしなくて構いません。まずトレーニングとして「変な世界を設定してみましょう」

 この変な世界、さきほど話題に出した「トゥモロー・ネヴァー・ノウズ」もそうですよね。全人類が「今日」をループするというキャッチコピー通り、変な世界です。しかも、SFで語られがちな科学的な要素はあまり語られていません。つまりこの世界に生きているひとは何か変だな? くらいにしか思っていない、というより変な世界の変なことはその世界で暮らす人にとって全くだという点です。


 ここで書き手であれば少し外部からの視線を入れて調節します。第一話の「インフェルノ」では復讐者がループすることを自明のことだと思っていません。この辺は実に巧みで上手です。

 

 こうした変な世界を設定すること、より科学的に考えたい人もいるかもしれません。たとえば舞台が中性子星のロバート・L・フォワード「竜の卵」や柞刈いすかり湯葉ゆば「横浜駅SF」を参考にするといいかもしれません。グレッグ・イーガンの著作も参考になるはずです。

 イーガンの短編集であれば「しあわせの理由」がよく読まれている短編集です。

 フォワードやイーガンがよく挙げられるのは、「変な世界」のなかで常識を覆す新しい発見があって、今までの世界の見え方がガラリと変わってくるヴィジョンの転換が上手だからです。

 さきほど挙げた「竜の卵」では中性子星が舞台なので人類と比べてそこに暮らす生き物の文明レベルと時間の推移は物語の最後になると人類を超えて遠い存在になってしまいます。これこそセンス・オブ・ワンダー、驚きの要素ですよね。


 驚きの要素と変な世界の設定の話題、SFをやさしく理解するためにイメージを広げてみましょう。

 

 参考文献:宮野優「トゥモロー・ネヴァー・ノウズ」 大森望編「SFの書き方 「ゲンロン大森望SF創作講座」全記録」

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