第51回 営業行為の問題点

 第50回で説明した営業行為ですが、問題点がないといえば嘘になるかと思います。ひとつに、「読んだからには読んでね、評価してね」という暗黙の了解があり、そこには合意形成がないという点でしょう。もし合意を採れば、それは相互評価の打診と近しいのは明らかですし、禁止事項に抵触するのです。

 ですから多くの作者たちはそのへんのコスパは考えているわけです。いちばん多い典型例はランキングに載っている人間同士の談合でしょう。ランキングという明らかな指標のうえで、そこにはユーザー名も作品も載っているのです。アクセスして二、三話流し読みして、応援をつけていく営業行為をしておく。そうして応援の足跡を追って行くと、作者ページの代表作への導線どうせんとなっているという話ですね。


 これはウェブではよくあるのでしょうね。誰の迷惑にもなっていないからそういう行為が横行するわけですが、本当にそうでしょうか? 通知欄は基本的に通知しない要素を入れても通知欄の限界量は決まっているわけで、励みになるような応援とそうでない営業行為における応援とがまったく区別なく載ることになります。私は読者の応援が見たい人なので作品フォローもない、応援だけの応援は広告行為だと思いますし、気分がいいものではないです。

 もちろん、そうした応援が消せる機能がないかと運営の相談窓口にも行きました。まだ回答はありません。


 営業する側も問題を抱えていると思います。多くのユーザーが自分の時間を捻出ねんしゅつして小説を書いていることを考えると、ユーザー同士のそうした営業行為で使う時間はむしろ少ないという点ですね。少ない時間で多くの作品を読むのも大変な労力だと思いますし、どの作家を読むかという優先順位トリアージを決めるのも私の性に合わないです。流れてくるものを読むだけでいいのでしたら、それは読者の方々にお任せしたいです。


 営業行為をすることによって作家の世界の広さは分かるのですが、カクヨムのユーザー数100万人に対して、作者はその6パーセントという数字を見ても分かるとおり、営業行為を続けるよりか、素直に小説を書くことを続けた方がいいと思います。(https://kakuyomu.jp/info/entry/reading_data

 営業行為による疲れから創作がとどこおっては本末転倒ほんまつてんとうでしょう。6万人のを伴うコミュニケーションを図るより、94万人の声なき読者に耳を傾ける方が良い気がします。

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