第35回 【オファーの瞬間】を読み解く⑥ 株式会社ドワンゴⅡⅤ編集部

 今回はゆずりは 一志いっし「レゾンデートルの祈り」です。(https://kakuyomu.jp/info/entry/offer_interview_vol.6)この作品をカクヨム上で一躍有名にしたのが蒼山皆水あおやまみなみさんのレビューだったというのです。そのレビューがきっかけでランキングに上がり編集者の目にも留まったという話らしいですね。さらにけんごさんのTikTokの投稿もバズりを生んで作品が広まったともいいます。話題にしたい作品というものは強いですね。

 いっぽう★の数でない熱いレビューはそれだけ見られているということです。熱量のあるレビューに関しては面白いと思ったら、自然にそう書けたという性質のものなので、ほんとうに熱いレビューは言葉にならないものかもしれません。この創作論の前身である創作論ではカクヨムに見られるレビューをいくつかの類型に分けたことがあります。

 

 では分けてみます。

 一つ目は賞賛しょうさん型です。とにかく褒めるレビュー。良かったところ、面白かったところ、期待しているところを書きます。レビューの基本形ですね。

 二つ目は分析型です。感情よりも論理で良かったところや面白かったところを説明します。長文になりがちですが作者によってはかなり喜ばれる傾向にあります。

 三つ目はあらすじ型です。内容を子細しさいに語ります。時にネタバレになりますがカクヨムの機能で隠すことができるようになりました。

 四つ目は文句型です。超人気作にたまに書かれるレビューで★1で書かれることがあります。作品がつまらなかったと言いたい読者がつけるレビューです。

 五つ目は激賞げきしょう型です。一つ目の賞賛型の進化形で言葉にならないくらいに感動した作品につけられます。語彙ごいをなくしています。Twitterで見ることがあります。もちろんカクヨム上ではほとんど見ることはないと思います。

 大別すると、この五つあたりが妥当だとうだと思います。


 推したい作品があれば、ある程度の内容としてテクニカルに書くことも可能なはずです。もちろんいいレビューを読むということも大事になってきますよね。前述した蒼山皆水さんのレビュー、内容も良いと思いますが、どのような構造こうぞうになっていたか考えてみたいと思います。


 まず簡単なあらすじです。これが先導リードになっています。

 そこから見出しになるようなログラインですね。あらすじを簡単に示したものです。

 次に賞賛すべきポイント、面白い・すごい・驚かされたポイントが続きます。小説の技術的に良いポイントも書かれていますね。

 キャラクターの良さ、テーマの選びと続きます。どのお話、ストーリーのどんなところが気に入ったかを書いています。

 さらにひとつひねります。ほかの読者が気づかなかったところを突く。

 そしてまとめます。このレビューを読むと面白いのが先に説明した五つのレビューの基本形の複合になっている、という点です。また文章を操るものの上手い表現が凝縮ぎょうしゅくされているレビューになっています。では実際に私も前に書いてみたレビューを添削てんさくしてみます。

 

 レビュー先は秋待諷月あきまちふうげつさんの「願望交換局」です。(https://kakuyomu.jp/works/16816927860480579557)これが最初に書いたレビューです。


「面白い、人の願望にこそ本性が宿る」


 人間にとって願望や欲望は切っても切り離せない関係にある。

 願望をテーマにした本作は鋭い視線で人間の本性を暴き出している。

 舞台は願望交換局という一軒の不思議な店。訪れた者の願いを叶える店であるのだが、この店には店主であるトータしか知らない秘密があるのだ。この秘密が物語にほどよい緊張感を与えている点も実に面白かった。

 この店に訪れる客もまた曲者揃いだ。その点は読者にそれぞれ楽しんで貰いたい。どのエピソードも珠玉のエピソードであることは保証する。

 個人的な感想であるが、店主であるトータに付き従うハナダというキャラクターも良かった。主にアクション担当でハードなアクションを担う強い女性キャラクターである。しかし感情の動きが平坦で、魅力に欠ける。ところが読み進めるにつれ、その印象がガラリと変わる瞬間がある。これはストーリーを語る作者の腕である。ここは本当に上手い。

 とても楽しい読書だった。

 

 自分では頑張ったつもりでしたが、これを先のレビューを元に、整理します。




「店の主人が見届ける願望を巡る数奇な運命たち」


 願望交換局という不思議な店。

そこへふらりと訪れる客、噂をどこかで聞きつけて訪れる客、何かを願う者はその代償として何かを「交換」する。


 これは願望交換局の若き主人であるトータと、願いを叶える者たちの物語。


 人間にとって願望は切っても切り離せない関係にある。たとえば少年時代に見たささやかな夢、恋人とふたりで見た夢、子どもたちとの約束。さまざまなシーンにおいて願望それ自体が人を生かし、そして殺しもする。

願望をテーマにした本作は鋭い視線で人間の本性を暴き出している。


 店主であるトータは願望交換局に来る人々を淡々とした態度で出迎える。店の地下室の扉が開くとき、それは願望を交換する契約の成立だ。


 しかしそこではトータしか知らない秘密があるのだ。この秘密が物語にほどよい緊張感を与えている点も実に面白かった。店に訪れる客もまた曲者揃いで彼らの人間模様が楽しくもあり、彼らの運命もまた鮮烈に刺さる。


 この点は読者にそれぞれ楽しんで貰いたい。どのエピソードも珠玉のエピソードであることは保証する。


 私は第二幕をとくにおすすめする。女性にとって美醜の問題は永遠のテーマだと思う。彼女の交換できた願望がどんな運命を辿るのかは夢中になって読んでしまった。


 店主であるトータに付き従うハナダという女性も良かった。主にアクション担当でハードなアクションを担う強い女性キャラクターである。しかし感情の動きが平坦で、魅力に欠ける。ところが読み進めるにつれ、その印象がガラリと変わる瞬間がある。これはストーリーを語る作者の腕である。ここは本当に上手い。


 物語は連作短編の形式を取り、トータとハナダの願望とは何か? という最終幕によって初めて物語は完成する。


 この願望交換局に関わった数奇な運命たちを、ぜひ最後まで見届けて頂きたい。(https://kakuyomu.jp/works/16816927860480579557/reviews/16817330660153981838


 作品を読みたくなるレビューになっていたら幸いです。

 書きたいことを整理して書けば熱い思いもレビューに載せて書けますよね。あなたの強い気持ちをレビューに書いて貰いたいと思います。


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