第25回 【オファーの瞬間】を読み解く③ カドカワBOOKS編集部

 今回はカドカワBOOKS編集部です。(https://kakuyomu.jp/info/entry/offer_interview_vol.3)ざっと記事を読んでみて、いちばん馴染なじみがないと思いました。まずウェブという場所のポイントから見ていきましょう。

 編集者のYさんは感覚的にウェブは無限大のチャンスが猛スピードで走り過ぎていくと形容けいようしています。それだけ流行というものの速度感が重要な場所ですね。ここで面白いと思うものに常にチャレンジするという姿勢が大事だとも書いてあります。それは現状ウェブにないものを提案することであったりするわけですが、前々回の記事で述べた王道や定石じょうせき、それを外したりできる作家の力量がむしろ問われているとも言えますよね。さらにこの出版形態をカドカワでは新文芸しんぶんげいと位置づけています。

 

 最低限言えるポイントは「あらすじ」「キャッチコピー」「タイトル」でアピールポイントを明確にすることで読者に訴えかけられます。むしろどんな小説を書く上でも大切なのは変わりありません。そのように十全じゅうぜんな対策をったうえで連載を始めましょうということですが、それでも「規格外きかくがい」が出てくるところが面白いポイントだとも考えます。小説というものは面白い物で1万字を必死に書いた物がたった900文字の小説に負けることもある、厳しい世界です。「あらすじ」「キャッチコピー」「タイトル」で読者の心を掴んでも、内容で心を掴めなければ意味がありません。規格外というものはそういう小説です。


 カドカワBOOKS編集部の特徴も今回の連載で目を引きました。もともとカドカワBOOKS編集部とカクヨムはもともと同じ部署にあったという点ですね。これは壁がそこにあるかはわかりませんが、出版とウェブの部署が近しいわけですから、書籍化の流れもほかの文芸の部署より話が通りやすいと感じます。

 ウェブというものの速度感からカドカワBOOKS編集部の狙っている作品はカドカワBOOKS読者にマッチしそうな読者という点も興味深いです。カドカワBOOKS編集部がこれまで築いてきた文脈や歴史、読者との関係性がそのまま答えになっているのです。記事では男女で偏りがないという点も要チェックだろうと思います。さらに担当の目に電撃が走れば即出版もユニークな点でしょう。


 具体的に編集部ではどのように書籍化作品を探しているのでしょうか。主にランキングや小説投稿サイトの巡回で地道に検討されているようです。候補作は週一回以上で検討会が成されているというのも、回数にしては多いのではないでしょうか。

 さらに読者の定着数とレビューの熱さに折れるところもあるそうです。

 

 創刊から7年というまだ若い編集部であることを踏まえると、さまざまなチャレンジと実績を積み重ねることによってトライアンドエラーが生まれていると考えますし、じつは人気作以外でも書籍化すれば成功できそうな作品も選ばれています。さらに新文芸がどれくらい売れているかという知見、つまり書店からのデータですが、それも徐々に理解が進んでいます。


 私たち作者は書籍化というゴールを目指すわけではなく、スタートラインに立つということを考えると、じつは流行の最前線で活躍するこの編集部は強力な相棒になってくれるかもしれませんね。

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