第24回 【オファーの瞬間】を読み解く② つばさ文庫編集部

 今回は児童文庫レーベルである、つばさ文庫編集部の記事です。(https://kakuyomu.jp/info/entry/offer_interview_vol.2)ここでもコンテストに応募し、最終選考候補作さいしゅうこうほさくとなり、金賞を取るという、編集サイドとしては強くしたが書かれています。

 オファーの瞬間の第一回と第二回を見ると、いわゆるウェブの拾い上げというわかりやすい書籍化ではなく、公募作品としてきちんと完成度を上げた作品が書籍化作品となっている傾向が見て取れますよね。


 近年では児童書の売り上げは伸びていると言われています。ですが、そのことに甘えていてはいずれ他の書籍と変わらずに売り上げは落ちていく可能性がありますし、読者を逃さないために徹底的てっていてきに調査していますね。ここではターゲットが読んでいる「ちゃお」や見ているYouTube、アンケート調査、モニター調査が挙がっています。


 つばさ文庫は10歳の読者にメインターゲットを絞っているので、10歳の感性に近いものを選んでいて、大人が10歳に読ませたいものを選んでいるわけではないという点も興味深いですね。今月のお小遣いで買いたいと思える本を目指しているようです。

 10歳、小学4年生を読者として対象とするとき、たとえば友達と電車に乗って遊園地に行くシチュエーションも中学生なら当たり前だけれど、非日常に映るというところも、読者の心を掴むコツなのでしょう。


 これはどんな年齢でも言えますが、非日常の体験というのは物語にしやすいですね。大学生向けの作品だったら、恋人と車でドライブして泊まりで温泉に行くとか、海に行くとかなのでしょう。もちろんいまは車に乗る人口も減っていますから、ほんとうの大学生の気持ちを聞き出したうえで物語を作る必要はありますよね。


 休日に電車に乗って、友達と水族館に行くだったり、風を受けて隣町までサイクリングするだったり、ボーイフレンドと手を繋ぐだったり、いろいろな体験があります。ここで重要なのはあくまで大人が子どもにそうしてもらいたい体験を書くのは、望まれていないということです。この点は「子どもはこういうのが好きでしょ」っていう大人の思惑おもわくが見え隠れしている作品は選ばれないことを示唆しさしています。

 さらにつばさ文庫は大人読者のつけたレビューや評価は一切考慮こうりょしないとも宣言しています。児童書はとくにそうですが、レビューの多さが評価に直接つながるわけではないようです。


 おそらく10歳という年齢にたいして大人が描く純粋さであるとか、そういう記号的なものはあまり必要がなくて、10歳の悪意だったり、未熟さであったり、そういう意味で、分けられていない、未整理なことを純粋として捉える感性が必要なのかなと思いました。

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