6.エジプト/シリア

上エジプト

第37話 ギルガの神



 ボナパルトから搾り取れるだけ補給を搾り取り、ドゼがカイロから帰着した1週間後(1798.12.16)。(*1)

 師団は、ベニ・スエフを出た。上エジプトへの行軍の始まりだ。

 ナイルを、カイロから到着したル・イタリーはじめ船団フロティラが遡航する。船には補給物資の他、病人や怪我人も乗せられていた。


 途中、アシュートまでくると、川幅が急に狭くなる。豊かなナイルの恵みを受けるこの地を、ムラド・ベイは、立ち去ったばかりだった。


 「ギルガで待つ」

 彼は、伝言を残していた。


 ナイルを少し遡って、ギルガGirgaまで移動した。

 これだけで、1日30マイル(*2)の行軍だ。熱砂で足は焼けるように熱く、靴はすぐにボロボロになってしまう。そのくせ、夜は凍えるほど寒い。

 行軍は、25日間続いた。


 ギルガへ入った時は、ひどい天候だった。稲妻が空をかぎ裂き、どおんという雷鳴が地を揺るがす。

 この地方には珍しい現象だった。

 現地の人々は、ドゼを神と崇めた。


 過酷な行軍で、兵士たちは疲れ切っていた。すでに200名近くの病人を出している。

 その上、ナイルを遡ってついてくるはずの船団の到着が送れていた。ここしばらく北西の風が吹き、途中で立ち往生してしまったのだ。


 ムラド・ベイの姿は見えない。

 

 さしものドゼも、行軍を止め、しばらくこの地に滞在することにした。幸い、この辺りの大地は肥沃で、豊富な食べ物が手に入った。


 ギルガは、長い上エジプト遠征で、ドゼ師団が留まった唯一の場所だ。








 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

*1 

12.8 ベリアル到着

12.9 ドゼ帰着

12.10 ダグーと騎馬隊1000到着


*2 30マイル

 約48キロ。東京から横須賀辺りくらい






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