彼女が大親友にNTRれた僕は学園一のカリスマ美少女へ嫌われているけど毎日軽い気持ちで好きだよと言い続けた結果、暫く会ってなかったら有無を言わさずベロチューされた
第8話 学園一のカリスマ美少女と学園一の嫌われ者が出会う(スバルサイド)
第8話 学園一のカリスマ美少女と学園一の嫌われ者が出会う(スバルサイド)
◆
——暫く後、最悪の出会いがあった。
夕方、塾の開始時間がまだなので買い物客が多い駅前通り、来たことがない喫茶店へ無意識に入った。
時間帯が悪かったのか満席で座るとこがない。でもまた他の店を探すのは時間の無駄と判断した私はテーブル席の相席を試みる。丁度、窓際奥から二番目、私と同じ学園の生徒が勉強していた。
男子生徒。メガネを掛けた大人しい印象がある男の子。
これなら交渉しやすいと判断した私は、「ごめんなさい、相席いいですか?」シャーペンを指で回しながら問題を解いていた彼に聞く。
「どうぞ」
優しい笑みと共に流れるミントのような爽やかな声質、男の低音に砂糖をまぶしたような甘い声。
彼は突然声を掛けたのに微動だにもしなかった。鈍感なのか天然なのか。ポーカーフェイスタイプ。
ヘアスタイルに気を使ってないのか、ただ髪に寝癖防止なのかワックスで固めている男子。その証拠に抑えきれてない毛がかなり自己主張していた。ようはボサボサ。
でも顔は眼鏡で隠れているが割とイケメンで手入れをすれば化ける可能性があるが、どうみてもただの陰キャラ系ガリ勉君だから興味はなさそう。
うちの学園の制服カラーはネイビーではなくブルーなので目立つ。ブレザー、ネクタイ、ズボン全てブルーで統一。更にネクタイとズボンはチェックが入っているので派手。私は好きだけどね。
私はそんな彼の正面へと座った。
しかし何処かであったことがある気がする。一度あったことがある人は大抵忘れないのだけど、全然印象に残らないのでその程度のやつなんだけど気になる。
「ねえ君君、 何処かで見たことがあるんだけど?」
我慢できず思わず質問した。別に逆ナン目的じゃない。
「そうなんすか? わかんないな。同じ学園なんだし何処かですれ違うこともあるでしょう」
「それもそっか」
その声もどこかで聞いたことがある。でも脳中のライブラリに検索かけてもヒットはゼロだった。
そんな時窓を眺めていると、友人の福島北斗が窓越しに立っていた。こちらの様子をジーと凝視している。相変わらず表情のない子だ。ポーカーフェイスというかお人形さん。
高い身長、光の屈折で銀色を帯びた黒髪、猫のような切れ長の細い目、一般より高い綺麗な鼻筋、クソ羨ましい天然二重、ってかノーメイクで色白なんて反則だっつーの。もう! 演劇部だけあって役者になる為に生まれてきた女だよ北斗は。
「あれ北斗じゃない?」
私は北斗を手招く。この眼鏡君とペアで沈黙の中向き合う自信がなかった。
とことこと白河桜華の制服を着たクラスメイトがやって来る。
「お疲れ様統星」
「どうしたのこんなところでうろついて。今日部活じゃないの?」
「うん休み。統星は勉強?」
だからエコバックに食材一杯入っているのか。
「そう勉強しているのよ。 塾までちょっと時間があるからね。北斗は?」
「私もそんなところ。予習しようと思っていたんだけど座る席がなくて困っていたんだ」
ほほう、部活の他、家事手伝いもこなしながら勉強も頑張るとはなかなか頑張り屋さんだ。
「ねえ君、 相席もう一人増えていいかな?」
「どうぞ」
君はロボか? もっと感情込めろよ、草食の陰キャラめ。
無関心無干渉を決め込む気か? この女の子の経験なさそうな童貞君は。
「ねえ統星、二人は知り合いなの?」
「違うよ、たまたま。学校の生徒だから開いてる席なかったし相席をお願いしたまで。ねっ君?」
勉強中だから静かに頷く。
「そうなんだね。てっきり加藤さんの彼氏かと思っちゃった」
「それはないよ。私は初恋の人にまだ想いを寄せているから。それより北斗、例の彼氏はどうなったの? 許してもらったの?」
「……まだだよ」
おまたせしましたと共に、私と眼鏡君が注文した珈琲が届く。どうやら彼はブラック派、ならば砂糖とクリームは扶養の筈。没収して有効活用した。私は超甘党。でもマンゴーの甘さだけは苦手。
「それにしても酷い男だよね。許して欲しくて、こんなにお願いしているのに取り合ってくれないなんて。 北斗もそんなクズ忘れて早く新しい恋に進めばいいのに。それにしても気持ち悪い。いつまでも引きずっているから学園の女子全員から嫌われるんだよ」
「言わないで。全ては私が悪いんだよ」
「いい女だよ北斗は」
励ましを込めて北斗の頭を撫でた。
それにしても友人をここまで悲しませるとは元カレは酷い奴。
「あ、そうだ君の名前何て言うの? 私は加藤統星(カトウスバル)、こっちは福島北斗(フクシマホクト)」
「僕の名前は黒田」
特別興味ないけど折角だし名刺代わりに名前だけ聞く。
「あれ黒田? 黒田ねーどこかで聞いた事がある」
「そうかな、比較的どこにでもある名字だけど」
モブキャラだから所詮なんてそれだけの認識。今まで目立たないようにやって来たんだろうね。
眼鏡改めて黒田君は店の人にはバイトに出てくれと頼まれた。彼はここで働いていたのか。
出会いの春、青春のいちページを可愛い女の子達に囲まれているのに微動だにもしないなら、よっぽどバイトの方が有意義。行ってらっしゃい。
「で、北斗の元カレってどんなひとなの。私あったことがないからせっかく相談してくれても説得もできないよ」
「今の黒田勘九郎が私の彼氏。私の全て」
「嘘でしょ? あんな野暮ったいのが学園のマドンナたる福島北斗嬢のお相手?」
「うん。かっこいいでしょ?」
「噂と実物のギャップが凄いんですけど……」
噂ではヤリチンで女の子をとっかえひっかえした外道って聞いたけど、どうみてもただのモブキャラだよあれ。女を惹き付けるだけの武器がないだろ。
ってか、あのやろう、彼女いるのに無視とは反吐が出る。
段々怒りが込み上がってきた。
「本当にあの男に捨てられたの北斗?」
「別れてくれって。私が浮気したと思い込んでいて、誤解が重なってもう聞く気も持ってくれない……」
「一回ぐらい許して上げればいいのに」
「四回……。恋愛の演劇練習を偶然見てもう耐えられないって」
「そうなんだ……。北斗の演技二重人格かよと思うほど迫真だからね」
「私、勘九郎のいない日常が耐えられないよ」
北斗は涙を流した。
あんにゃろー!
「くろだぁぁぁ! あんたねぇ!」
「お客様いかがなさいましたか?」
丁度カウンターから来たので目掛けて飛ぶように黒田に掴み掛かる。そのまま背中は壁にドーン。染み付いたコーヒーにフレイバーな薫りが私の鼻孔をくすぐる。
「あんたほんと最低だよね……優しい北斗があれだけ精一杯謝ってるのに許してあげられないなんて男としてどうなのかな? あんたみたいなクズは別れて正解だよ」
「何のことを仰っているのでしょうかお客様?」
業務用スマイルで返す黒田。その余裕の態度が余計私の煮えたぎる感情を刺激した。
黒田に聴こえないように、金輪際あんたは無視、あんたとはなんとなく友達になれそうな気がしたのに……。
私は支払い後北斗の腕を引っ張って無理矢理店へ出た。
これが別々のルートを歩っていた本来なら交わることのない私と黒田が共に歩く始まりである。
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