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 改めて財力の差を思い知らされつつも、それならそれでこの美味いパンを堪能し尽くしてやる! と、ボクは二つ目のサンドイッチを手に取った。

「客室を整えてくる。全部食ってもいいぞ」

 返事をする間もなく、獅童さんは立ち上がるとリビングから出て行った。

 ボクはもぐ、とサンドイッチを咀嚼しながら、リビングの中を改めて見渡した。ほんと趣味のいい部屋だ。アンティークが中心の家具がこの部屋に落ち着き感を醸し出していて、貧乏故合板かつ最小限の家具で済ませていたかつての我が家……燃えてしまったアパートの部屋を思い出した。あの部屋だって、ボクに取っては宝物の部屋だったのに。

 今にも泣きそうな気持ちになってぶんぶん、と頭を振る。今はとにかく、預かっていた石達が無事だったことを喜ぼう。

「用意ができたぞ。食ったら寝ろ、疲れただろう」

 獅童さんがドアからひょっこりと顔を出す。なんだか今日は、ずっと獅童さんと一緒にいたなとふと思う。

「ありがとうございます。何から何までお世話になってしまって」

「いや、気にするな」

 相変わらずの仏頂面だけれども、ボクはほんの少しだけ、獅童さんが怖くなくなっていた。

 一緒にいた間、彼からはボクに対する敵意や偏見をまったく感じなかった。それどころか、ボクが大切にしている石たちをわざわざ助けに行ってくれた。それが、ボクの、彼に対する気持ちを切り替える大きなきっかけになった。

「明日は授業あるのか」

「ないです」

「オレも明日は何も予定ない。寝たいだけ寝ろ」

「はい、ありがとうございます」

 客間に案内され、用意されたスエット(ぶかぶかだった)に着替えて布団に潜り込む。

 赤の他人の、アンティークに囲まれた歴史ある家。いつものボクだったらとても安眠などできなかっただろう。けど、この日はやはり火事だのなんだのとショックなことがありすぎたからだろうか。ボクは、ものの数秒で眠りについた。

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