第17話 最初で最後~そして2人の想い~

ある日、私は義理の両親に正直に話す事にした。



「そうだったの…」

「それは申し訳ない事したな~」


「いいえ。私こそすみません…荷物は近々整理しに伺います。臨時教師も今月で終わりですし」


「そうなのね」




そして私は荷物を少しずつ纏めていく。




ある日の放課後─────



「先生」



振り返る視線の先には



「…斗…衣吹君…」

「俺達の親2人に話したんやな」

「…あ…うん…」

「…そうか…本当に出て行くんやな」

「うん。ごめんね…それからありがとう」


「何でなん?」

「…えっ?何でって……」



「………………」




「俺も辞めようかな~?学校」

「駄目だよ!高校は出なきゃ」

「定時にいけばええやろ?」

「…それは…」

「学校でも会えへんくなるし、家でも会えへんなんて…」


「…仕方ないでしょう?事情が事情なんだから。ほら!バイト遅れ…」




グイッと抱き寄せられ、抱きしめられた。



ドキッ



「ちょ、ちょっと…ここ学校…」


「担任に手を出しました!言うて停学でも退学でもなってええくらい本気やっちゅー事や!」



ドキン


抱きしめられた体を離され私の両頬を優しく包み込むようにしたかと思うとキスをされ、私の首の後ろに両手を回した。


何処かあどけない少年の姿の中に私を見つめる男の眼差しに、ドキドキと胸が加速する。



「…す、すまん…」



バッと離れ、顔を反らすと顔や耳が赤いように見え照れている様子も伺える。




《…可愛い…かも…》



「か、帰ろ…」



帰って行く斗弥君。


そして足を止め振り返る。



「俺、諦めへんからな!唯南さんの事」



ドキッ



「えっ!?ちょ、ちょっと…」



「俺が唯南さんを幸せにしたる!」



ドキッ



そう言うと帰って行った。




その後、私は臨時教師を終え学校を後に実家に戻る事にした。




そんなある日の事。



「唯南さん!」



背後から呼ばれ足を止め振り返る。




「斗弥君!?」




そして隣には、女の子の姿。




ズキン


何故か胸の奥がチクリと痛んだ。




「1人なん?」

「うん…斗弥君はデート?」

「いや、デートちゃう…」




スッと女の子が斗弥君に自分の腕を絡めた。



「えっ…?おいっ!ちょ…」



更に胸の奥がチクリと痛む。




「あー、お邪魔みたいだね。それじゃ私、急いでるから」




私は居ても立ってもいられず足早に去った。




「斗弥君の好きな人、可愛い人。やっぱり誤解させたかな?」

「当たり前やろっ!?全く!」

「ごめん、ごめん」



彼女はバイト先の妹で、お互い何とも思ってなく本当の兄妹みたいに、ただ仲良いだけで何の関係もない。



その日の夜、斗弥君から連絡入った。


しかし私はスルーしていた。


あんな光景を見て話す気力もない。




「………………」






✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕




「…アカン…完璧誤解されてるわ…どないしよ…」



しばらく連絡きていたものの音沙汰なく途絶えた。



その後、私は女子校の教師に行く事になった。




ある日の事─────




♪♪♪~……



【今日バイト先に来てほしい】



ドキン



斗弥君からメールが届いていた。



【最初で最後にするから必ず来てほしい】





「………………」




「最初で最後って……?」



私はその言葉が引っ掛かり行く事にした。



斗弥君から連絡が来なくなり気付いたら斗弥君の事を考える事が増えていた。


何度メールを送ろうと思っただろうか……





そして─────



「彼女は知ってるの?」

「…彼女いたら呼び出さへん!」

「…そっか…」

「信じてへんやろ?」

「信じるも何も…別に関係ないから。それで?何処か行く…」



グイッと引き寄せられ、キスされた。



ドキッ


「とりあえず車出してもらうとええから」



そう言うと斗弥君は車のドアに寄り掛かるようにすると窓の外をぼんやりと見つめる。


ドキドキと胸が加速するも平静を装う。



「…目的場所ないの?」

「ないで!ドライブや!唯南さんの好きな所に行ってええよ」

「…そう…」



「なあ唯南さん」

「何?」

「唯南さんの今の正直な気持ち話してくれへん?」

「えっ?正直な気持ち?」

「せや」

「…それは…」



正直分からない



だけど……




「正直…分からない…でも…連絡が途絶えた時、私は斗弥君の事…考えている事は増えてた…」


「そっか…」


「好きとか嫌いとか…そういうの抜きにして…違う意味で斗弥君の事は…気になる存在なのかもしれない」


「…唯南…さん…」


「…ごめん…えっと…ごめん…ちょっと車脇に停めるね」




私は車を道路脇に停めた。



「…ごめん…」

「いや…別にええねんけど…」



「………………」



「…ごめん…ちょっと…外の空気…」





グイッと引き止められた。


ドキッ



「…斗…ゃ…」



キスされた。




「…緊張してんのか知らんけど…」

「…それは…」



「…………………」




「今から道案内したるから向かうで!」

「えっ?」

「ほら!運転!それとも俺が運転したろか?」

「無免許なるから駄目っ!」

「だったら運転してや!」




私に意地悪を言いながら助手席から話をしてくる斗弥君。



そして向かった先は高台で街の景色を一望出来る所だった。






「こんな所良く知ってるね?」

「調べたからな!」

「そうなんだ!カップルの穴場なんじゃ?」

「どうやろな?」

「絶対そうだよ!実は計算?」



「なんで、そう思うん?そんなつもりはないっ!第一、そうとは限らへんやん」

「秘密の穴場スポット!」

「秘密…俺達みたいやな」




ドキン



「えっ…?」




振り向く私の唇に斗弥君の唇が重なる。



ドキン


そして、唇が離れ抱きしめると抱きしめた体を離し、すぐに唇が塞がれた。


唇が離れ─────



「…こんなつもりはなかったんやけど…キスだけじゃ止まらへんかも……」




ドキン



「…えっ…?」



再びキスをされ深いキスをされた。



「…アカン…」



私を押し離し、車を降りようとする斗弥君を私は引き止めた。




「…唯…」



私は斗弥君にキスをした。



「…抱く…?」


「…えっ…?いや…いやいや、アカン!アカン!ブレーキ掛けれんくなる!」



斗弥君の両頬を優しく包み込むように触れる。



「…私も…どうかしてる…のかな…?」

「…唯南…さん…」



視線がぶつかる。



私の両手に触れ自分の手を重ねたかと思うと、片手をグイッと引き寄せたと同時に。



ガタン

助手席のシートが倒れた。



「きゃあっ!」



そして、すぐに唇が奪われた。



「…本気に取るで!」




ドキン



高校生の男の子とは思えない程、斗弥君の男としての眼差しに胸が大きく跳ね、ざわついた。


再びキスをされ、何度も角度を変える中、時々、深いキスをし声が洩れた。


私達は体勢を変える。


そして、気付けば私達は一つになっていた。




その後、私は斗弥君を送り別れた。


それから私達は、会う事が増える。


友達以上恋人未満。


時々、体の関係になるものの、お互い話し合った結果だ。






「唯南さん…卒業して仕事見つけて落ち着いたら…同棲せーへん?」


「えっ?」


「ちゅーか…結婚前提で俺と向き合って欲しいねん!」



ドキン



「…斗弥…君…」

「アカンか?」

「いや…えっと…」


「えっ!?身体だけの関係とか嫌やで?まさか…唯南さん…そのつもりやったん?」


「えっ!?ち、違うから!」


「ゆっくりでええねんけど…唯南さんとは話し合った上で色々と今後の事は向き合っていきたいねん」


「…ありがとう…」




数年後、私達は半同棲で過ごす事となった。



まだまだ先は長いかもしれないけど


仲を育んでいけたらと思う。







~ THE END ~




ご愛読ありがとうございました。


お付き合い頂きありがとうございました♪


これからも宜しくお願い致します。

























































































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恋の選択肢(仮) ハル @haru4649

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