第56話 それはまさか…

「「それで秀人(センパイ)…?何で私以外に人がいるのかな(んですか)?」」


 あれからやばそうな雰囲気を感じた俺は急いで場所を移し、今現在目的地である駅前の喫茶店にて二人から詰められていた。


 ど、どうしてこうなったんだ…?


「い、いやその…お互いにもう一人来るって言うのを忘れてて…」


「「…はぁ」」


 俺がそう言うと二人揃って溜息をつく。因みに座っている場所としてはテーブル席の奥側に美涼、その横に俺、対面の通路側に瀧川という形で座っている。

 座る時にも実は位置関係で瀧川と美涼がバチバチしていた。


 結果的には勉強を見て貰いやすくすると言う事で俺の横に美涼が座る事になった。


 何故か悔しがっていた瀧川と勝ち誇った様な美涼のやり取りがあったんだが…俺の横の席を張り合う理由が分からん。どこでも良くないか?

 それを言ったら二人にジト目で睨まれつつ瀧川には足を踏まれ、美涼には脇腹をつねられたが………いてて。


「…コホン、えっと瀧川さん…だったよね?今日私たちは試験勉強のために集まっているの。一回生の瀧川さんには関係のない集まりだし、大人数でいると集中力も落ちちゃうと思うから…はお家で勉強したらどうかな?」


「ご親切にありがとうございます♪ですがの宮藤さんにとやかく言われる理由はないと思うんです〜。それに今日はセンパイが私を誘ってくれていたので、宮藤さんが日を改めたらいいんじゃないですか??」


「くっ…そ、そういうわけにもいかないじゃない?期末試験はもうすぐだし、話を聞いたら今日の予定の確約をしていたのは私の方が先じゃない!瀧川さんの奢って貰う用事はいつでも良いんだから、そっちの方が日を改めるべきじゃないかな」


「うぐっ…じ、じゃあ私にも勉強風景を見せて下さい!来年度は私も同じ様な試験を受けるかもしれませんし、知ってても損は無いですよね?」


「そ、それは…」


 俺の横でそんな会話が繰り広げられる中、俺は黙って聞いていた。この二人が言い争っているのは俺が二人に伝え忘れた事が発端だ。

 …正直言い争っている理由はわからないが、二人の了承なしに俺の独断で今日を迎えてしまったのだから、俺がこれを言わないのは間違ってるよな。


「美涼、瀧川…すまん!俺が勝手に二人の予定を合わせた俺が全部悪いんだ。この埋め合わせは絶対するし、今後は絶対に連絡する!」


 俺が頭を下げてそう言うと二人の会話が止まり、数秒静かな時間が流れる。


「はぁ……。秀人だって悪気があって予定のブッキングをしたわけじゃないんでしょ?昔からうっかりなところあったし…仕方ないかな。…埋め合わせしてくれるまで許してあげないけど」


「…もう!絶対ですからね!センパイ!今度は二人っきりでですからね!!そうじゃないと私も許してあげませんからね!!」


 呆れながらもそう言う美涼と、まだ少し膨れている瀧川がそう言って来る。


「あ、あぁ…約束d「なっ!?秀人!私も二人でだからね!?それが絶対条件だから!」お、おう…」


 俺はそうしてまたの機会に別々で出かけることで何とかその場を収める事ができた。


 よかった…だってさっきから周りのお客さんにめっちゃ見られてるんだもん!!『え…?何?二股でもバレたの…?』とか女性客の方からヒソヒソと聞こえて来るんだよ…勘弁してくれ。俺は付き合った事もねーんだから二股もクソもねーよ。


「じゃあそう言う事だから…改めて自己紹介ね。私は宮藤美涼、秀人の幼馴染みで二回生なの。よろしくね?瀧川さん。仲良くしましょう?(ニコッ)」


「…まぁ仕方ないですね、今回の件は全面的に永井センパイが悪いのであって、は悪くないですし「うぐっ…」改めまして瀧川奈緒です、センパイのバイト先と大学の後輩の一回生です。よろしくお願いします宮藤センパイ!是非仲良くしましょう(ニコッ)」


 お互いに笑顔で挨拶を改めてしている二人。よかったよかった…なんか二人の顔は笑ってるのに空気がひんやりしているのは何でだろう…?お店の空調の効き過ぎかな?


「す、すみません!注文いいですか?」


 俺はその空気に耐えられなくなったので店員さんを呼んで、勉強に取り掛かることにした。



「そうそう…そこはこの公式を使って…」


「ふむふむ…なるほどな!流石美涼だなぁ…俺だけだとこの問い絶対分かんなかったよ」


「そ、そんな事ないよ…?ノートを見たら秀人もすぐに分かると思うし…」


 それから少ししてから俺たちは本題に入った。

 勉強の方は美涼のサポートもあり順調そのもの。俺ではわからなかった部分を美涼が補足してくれるお陰で、俺はわからなかった部分をスルスルと吸収していく。


 教えるにしてもちょっと距離が近い様な気がしなくもないが、昔から美涼はこれくらいだった記憶があったので突っ込まずに勉強を続ける。

 でも俺だって二十代の男子だ。いくら幼馴染とはいえ、美涼みたいな綺麗な子にくっつかれて何も思わないわけじゃない。


 まぁそれだけ心を許してくれていると言う事なのだろう。…男としては少々複雑だが。


「(もぐもぐ…)…むぅ!」


 さっき軽食に頼んだ卵サンドを頬張りながら、何故かむくれてこちらを見ている瀧川。俺の金で飯を食っておいて尚不満があるのだろうか?

 ちなみにさっき俺はアイスコーヒー、美涼はチーズケーキとアイスティーのセットを頼んでいた。


「ちょ〜っと永井センパイと宮藤センパイ…距離近くないですかぁ?」


「え…?まぁ確かn「そんなことないわよ?秀人に勉強を教えるんだから、これくらいの距離感にはなるでしょう?」


「ず、ずるいです!センパイの横に座るだけにとどまらず、そんなに密着して…!!」


「うふふ…仕方ないわよ、だって私は秀人の幼馴染なんだから♪」


 被せられてしまった。俺が二人の方をみるとさっきの様に悔しそうな顔の瀧川と、「ふふん」と得意げな美涼が見つめ合っていた。


 …一体こいつらは何の勝負をしているんだろうか。確かにここの席は空調が良く当たるけど…女性にとって体が冷えるのは良くないと思ってここに座ったのもあるんだが、もしかして暑かったのか?


『お待たせしました。こちら【季節限定 フルーツとホイップメガ盛りDXパフェ】になります。ごゆっくりどうぞ』


 そんな空気を切り裂く様に店員さんが瀧川の頼んだパフェを持ってきてくれた。…デカいな、流石二千円…俺の二千円………。


「わぁ凄い!!いただきます♪はむっ………う〜ん♪おいひいおいしい♡」


 パフェが届いてすぐに瀧川は目を輝かせてパフェを一口食べる。

 やはり女子にとってスイーツというのは魅惑の塊なのだろう。現に俺の横でも美涼が食べたそうな顔をしている。


「(…そうだ)永井センパイっ!センパイも一口食べますか?」


「ん?いいのか?貰っても」


「もちろんです!元を辿ればセンパイの奢りですし♪それじゃあ…はいっセンパイ!あ〜ん…」

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