第16話 過労の原因 side:瀧川奈緒
「ただいま…」
「あぁ…おかえり奈緒」
私が先輩に送られて家に帰ると、疲れた表情をしたパパとママがリビングで座っていた。
「…今日も来てたの?あの人達」
「あぁ…ごめんな奈緒…パパがあいつの保証人になったからこんな時間まで…しっかり休みは取ってるか?」
「………うん。大丈夫…でも今日は疲れたから早く寝るね?」
「あぁ…ご飯は?」
「バイト先でまかない貰ったから平気。じゃあお休み」
私はパパに嘘をついて自分の部屋に入り、着替えもせずにベッドの上に寝転がる。
「なんでこんな事になっちゃったの…」
私たちの家庭がこうなってしまったのは数ヶ月前のこと………
◇
「…と言う事で俺たちに金借りてた奴がトンズラこいちまってな。今日は連帯保証人になってたアンタらに借金の返済を要求しに来たって訳だ」
「ちょっ!ちょっと待ってください!どういう事ですか!?」
「テメェ!兄貴に近寄んじゃねぇよ!今説明されただろうが!」
突如私たちの家にガラの悪そうな男の人が二人訪ねて来た。まとめるとパパの昔の友人が闇金融にお金を借り、その時の連帯保証人としてパパがサインしてしまっていたそうだ。
その友人とパパは昔とても仲が良かったらしく、パパは疑う事なくサインをしてしまい…その友人が音信不通になってしまった為パパに請求が来たそうだ。
「金額にして一千万だ、あんたらに全額キッチリ払ってもらう。恨むならトンズラこいたお友達と昔の自分を恨むんだなぁ?」
「そ、そんな…一千万なんてとても………」
「あぁだろうな?しかしこれでもアンタには同情してんだぜ?信じてた友人に裏切られたんだ…さぞ大変だろう?…俺たちだって鬼じゃねぇ、半年待ってやる。それまでにどんな手を使ってでも一千万用意しろ」
「半年!?そんなの無理です!」
「うるせぇ!俺たちは今すぐ請求したっていいんだぜ!?…まぁ?用意出来なかったら……そこの奥さんと娘にいい働き口用意してやるからよぉ…へへへ」
そうガラの悪い片方の男の人が、私とママの身体を舐め回すようにして見てくる。…怖い……気持ち悪い………そう強く思ったことを覚えている。
「ま、待ってくれ!わかった!金はなんとかする!だから妻と娘には手を出さないでくれ!!!」
パパのその返事を聞くとその二人組は大人しく帰っていった。
それから毎週まるで私たちを監視するかの様に家へとやって来る。…正直向けられる視線は気持ち悪いの一言だけど……お金……お金さえ返せば……!
◇
そんなことを考えているといつの間にか眠ってしまっていたのか、窓の外が明るくなっていた。
私が自分の部屋から出てリビングに行くと、昨日も来ていたであろう二人組の片方が我が物顔で我が家に居座っていた。
「おっ♪奈緒ちゃ〜ん♡おはよう。スッピンでそれって今日もめちゃくちゃ可愛いねぇ♡」
「…やめてください。私に触らないでください」
「やだなぁ固いこと言っちゃってさぁ?仲良くしようぜぇ?奈緒ちゃ〜ん♡」
「…っ!?い、嫌っ!!」
そう言って私の肩を抱きかかえる様に組んで肩を撫でて来るガラの悪いおじさん。
生理的に受け付けられない私は即座に逃げ出し、パパの近くに逃げ込んだ。
「傷つくなあ…ま、そんな態度取れるのもそろそろ終わりだけどな。明後日には嫌でも俺たちの相手をして貰って借金返済して貰うからなぁ…」
「ど、どういうことですか?期限にはまだ時間があるでしょう!?」
お父さんがそう言うと、おじさんは耳をかきながら気怠そうに言い放つ。
「そんなこと言った覚えはねぇなぁ?」
「なっ!?そ、そんなことは!!!」
「じゃあ何か?書面で残ってんのか?あ?…ねぇだろ?そうなりゃこっちもいつ回収しても問題ねぇんだよ」
「…っ!」
「だから明後日までに一千万!準備出来てなきゃ母娘は風俗!だがこんな滅多にいない上玉だ…♡働かせる前に俺たちでたっぷり仕込んでから風俗に紹介してやるからなぁ…感謝しろよ?へへへ…明後日が楽しみだなぁ!」
そう私たちに突きつけるとおじさんはニヤニヤしながら立ち上がり、家を出るときにそう言って出ていった。
「……あなた…今の金額は?」
「…ありとあらゆる所からかき集めて六百万ちょっと……手元にあるわけじゃないが…」
「私の方も貯金をおろしても百万円くらい……どうしましょう…あなた…このままじゃ私はともかく奈緒まで…」
「…こうなったら家を手放すしか…ないのか…?いやでもその後の生活が…」
爽やかな昼とは裏腹に家の中の雰囲気は最悪だった。私がここ数ヶ月大学にもあまり行かずに稼いだお金も、一千万円と言う大金の前では雀の涙もいい所だ………。
「…二人ともいざという時の為に荷物をまとめておきなさい。最悪二人だけは父さんが助ける。二人は俺の宝物だ…」
「そ、そんなのダメだよパパ!奈緒今から出かけて働いて来る!」
「お、おい!奈緒!!!」
私は服を着替え、身嗜みを整えてから家を飛び出した。センパイがいる居酒屋以外全てのバイト先に訪れたが、やはり私は休み扱いなので何処でも働けなかった。
そうこうしているうちに日が傾き、私は駅の繁華街近くで呆然としていた。
「ね、ねぇ君ぃ…可愛いねぇ?この後おじさんと五万でどうかな?」
私が呆然としていると、中年のおじさんが私に声をかけて来た。
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