■ 290 ■ 離脱
「シン、大丈夫? 酷いコトされなかった?」
内赦局から解放され、
「ごく普通の取り調べでしたよ。後味の悪い話ではありましたが」
【
内赦局の調査によって、本当の犯人は炙り出された。ラジィの前、シンの巡礼に同行し、グラナとの戦闘で死んだ神殿騎士の家族。その一人がシンに濡れ衣を着せようとして行なった、と内赦局が丹念に調査を重ねた結果として判明したのだ。
不死身に近い再生能力を誇る
その上でグラナには逃げられ仕留めることができなかったのだから、シンを恨む者が現れてもなんらおかしくはない。
家族を挽肉にされ、その報復すら成し得なかったとあれば、その怒りがのうのうと生きているシンに向かうのはある意味では仕方のないことだ。
何にせよ、真犯人が特定されたことで【
「ひとまず、新たな【
【
「世界の状況は未だ予断を許さない激動の最中にあります。皆さんも協力をお願いします」
続けて残る六人が頷き、しかし一人がそのまま無言で席を立つ。
「シンばーちゃんが戻ってきたならもう大丈夫だな。俺はジィと共に抜ける」
仲間の安全が確保されたのであれば、もう【
元より、ツァディが
その為の傘であり、理解者だったカイが死んだ今、ツァディにとって【
「動いてもいいのかね? 君が動けば後を付けられるだろうが」
ツァディが動かないことがラジィの安全に繋がる、という問題は依然として横たわっている、と【
「いや、連中はもう動いたよ。だってマルクが帰ってこない」
「マルク?」
誰それ? と【
「【
クリエルフィに
ツァディとて腐っても【
いくら頭が悪いとは言え、
「任務から戻ってきたマルクを見たって他の【
「……そのマルクとやらは一体何の任務に携わっていたのです?」
【
「クリエルフィ候補生を補佐しての、別大陸への布教活動だってさ。詳細はぼかされていたけど、多分グランベル大陸だ。リュカバースだよ」
その一言に、残る六人の【
「そうか、よく考えりゃジィのおかげで繁栄してたもんなあの街」
「栄えている街にはそりゃ、教会建てたいわよね、ウチとしては」
【
「マルクが戻ってきた。クリエルフィと一緒じゃなくて単独でだ。そして行き先はグランベル大陸で、このシヴェル大陸の外、【
誰もが、最悪の現実をついに理解した。
クリエルフィの父にして政治部第二位、アンブロジオ・テンフィオスがこの状況でどう動くか。鬼の総務局次長ならば、安い感情に流されず冷静でいられるか?
「シンばーちゃんを嵌めようとしたって奴の裏には絶対に内赦局がいる。もしかしたら真犯人とやらは内赦局にばーちゃんを嵌めるようそそのかされてすらもおらず、ばーちゃんを嵌めたって罪すら最初から内赦局がでっち上げた濡れ衣かもしれない」
「そこまで――いや、マルク・ノファトが本当に消されているのならば、そこまでやってもおかしくないのですね」
シンが恐々と頷いた。これまで【
「でも、今回の件で政治部も大きく動いているはずだ。多分ジィを手に入れたい連中は既に【
「糺すならばクズの親玉がいない今が一番、ということですね。今後の政治部の暗躍を阻止するための、今はチャンスでもあると」
「ああ」
【
以後のことを考えれば、少しでも風通しを良くしておくべきだろう。
「じゃあ、みんな元気で。もう会うこともないだろうとは思うけど」
「名残は惜しいが、時間も惜しいな。ジィを助けてやりたまえ、兄貴分」
「ありがとう。みんなの事をずっと愛してる。俺も、ジィも」
【
「神意に透明と讃えられた【
【
だが、しんみりしてもいられない。数多の魔術師が世界中から失われたこのご時世で、しかし未だ
ここで
「我々は我々の成すべき事を成しましょう。一先ずは驕り高ぶった振る舞いをする信者の掣肘からですね」
【
カイが欠けても、ツァディが欠けても、ラジィが欠けても――クリエルフィが、マルクが欠けても、他の数多の【
故に【
「
これまでと何も変わりはしない。
只人のために、その力を貸し与えることだけだ。
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